表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
26/259

魔王城に帰還! ただいま、と言える厨房がある幸せ

クロス・ディッシュ杯の熱狂と歓声を背に、

 まかない部はようやく魔王城に帰ってきた。


 


「……は~~~~、落ち着く……!」


「椅子がちょっと硬いのも、レンジ魔導炉の温度ムラも……全部懐かしいわ」


「鍋が勝手に動いてこけるのも“仕様”やしな」


 


 大会中は、最新鋭の魔導厨房だった。

 だが、この魔王城のちょっとクセのある厨房こそが、みんなの居場所だった。


 


 ソラは、いつもの調理台の前に立って、深呼吸する。


「よし、今日は“優勝祝いまかない”だ!」


「メニューは?」


「あるもので作る。それがまかないだからな!」


 


 ミナが火力を準備し、

 ルナは魔力濾過器をメンテナンス。

 リドとバスは食材庫を開き、次々と食材を並べていく。


 


 そんな中、魔王様は――なぜか厨房の隅で、こそこそと何かしていた。


 


「……あれ、魔王様、何してるの?」


「……べ、べつに……ちょっと甘味の試作をしてるだけよ」


「甘味!? 魔王様が!?」


「え、なに、毒味要員いる!?」


「いないわよ!? これは純粋に“慰労スイーツ”! 甘くて安心する系!」


 


 魔王様が作っていたのは、

 《黒花樹蜜の焦がしプリン・黒塩仕立て》。


 焦げの苦味と塩味で、甘さを引き立てた大人向けスイーツ。


 


 だが――


「な、なんかプリンが……跳ねた!?」


「魔力が不安定で固まってないーっ!?」


「どろどろの液体が厨房を襲ってるーっ!」


 


 厨房は騒然となるが、

 最後には魔王様の顔にも、久々に本気の笑顔が浮かんでいた。


 


「……ふふ。やっぱり、うちの厨房は、こうじゃなくちゃね」


 


 その夜、まかない部は城の大広間で優勝祝賀会を開いた。


 料理はすべて“まかない形式”。

 豪華ではないが、どれもが**「心が満たされる味」**だった。


 


 ソラが皿を片付けながらつぶやく。


 


「……大会もすごかったけど……

 やっぱ、この飯が一番うまいな」


 


 魔王様も隣で同じように呟いた。


「そうね。私たちが作った、“私たちの味”だもの」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ