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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
24/259

準決勝突入! 強敵“砂漠の流浪料理団”との極限食材バトル!

クロス・ディッシュ杯、準決勝。


 次なる対戦相手は、

 “流浪の料理団アスラ・カラン”。


 


「彼らは、砂漠の死地で暮らす民の出身。

 水も魔力も極端に制限された中で、独自の調理技術を磨いてきた集団や」


「現地調達、即調理、保存なし、器具最小。

 彼らの料理は、“命そのもの”なんだ」


 


 試合テーマは──


【テーマ:命をつなぐ料理】

※会場で提供されるのは“空の鍋”のみ

※調理具・食材は現地調達、制限時間3時間


 


「つまり……この会場にあるものだけで勝負ってこと!?」


 


 開催地・カラントア郊外の“試練砂漠”にて、

 両チームは完全自力で食材を探し出す。


 


 アスラ・カランは即座に散開し、

 砂トカゲ・岩卵・酸性果実・土壌菌糸などを入手。

 水分は地下水蒸気を凝縮して確保。


 


 対する魔王城陣営。


「魔王様、何か持って……」


「持ってないわ」


「ルナ、魔法で──」


「ここの結界、魔力の転用禁止みたい」


「じゃあどうするのさ!?」


 


 ソラは黙って、小さなスコップを取り出す。


「……掘る」


「えっ」


「まずは**“食える根っこ”**を探そう」


 


 こうして、魔王城チームの“穴掘り調査”が始まる。


 


 数時間後、ミナが叫ぶ。


「出た! 地下果根“ダラナ芋”発見!!」


「乾燥してるけど、皮を剥けば甘みが出るやつ!」


「あとこっちは小型虫の巣。脱皮直後の個体は軟らかくて炒め向き!」


 


 調達が完了すると、ソラが即席で調理方針を出す。


 


「メインは“ダラナ芋の香ばし焼き”

 副菜に“蒸し虫の甘酸炒め”

 仕上げに、“砂果ジュレ”を添えた温根スープ」


 


 火力は太陽熱、調理器具は石板・葉包み・砂鉄鍋。

 香りづけには、土中にあった乾燥藻を炙って香気を加える。


 


 どれも、貧しくも**“確かに命をつなぐ味”**だった。


 


 一方のアスラ・カランは、岩卵を使ったふわりとした蒸し焼きに

 トカゲ肉の燻製、果実の苦味を活かしたソース。


 


 味覚だけで言えば互角。

 だが、審査員と観客の心に響いたのは──


 


「……このスープ、冷えてるのに、胃が温かくなる」


「苦いのに、どこか優しい……」


「“食って生きる”ってこういうことだって、思い出す味だ……」


 


 観客の共鳴スコアが上昇。


 


アスラ・カラン:96点

魔王城まかない部:98点


 


 勝者:魔王城まかない部!


 


 対戦後、アスラ・カランの団長がソラに語る。


 


「……かつて我々も、貧しい中で料理を続けた。

 でも、お前たちの味には“喜び”がある。

 生き延びるためだけじゃない、“もう一歩、前へ進むための味”だ」


 


 魔王様が答える。


「それが、まかないの役目よ。

 “今あるもの”で、少しでも明日を変えるために作るの」


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