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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
23/259

魔王 vs 国王!? 料理人として、王国代表と正面対決!

大会五日目。

 観客の熱気も高まりつつあるクロス・ディッシュ杯。


 


 ついに発表された、次の対戦カードは──


【準準決勝・特別枠】

魔王城まかない部 vs 王国料理団《五指の一皿》


 


「“五指の一皿”って……王国最高位の料理人五人のことだよね?」


「聞いたことある。

 味・構成・魔法・歴史・演出……それぞれの達人で構成された“最強の献立”」


「完全に格上ってこと……!」


 


 対する魔王城サイドも、ついに本気を出す。


「──今回は、私も出るわ」


「えっ、魔王様が!? 出場メンバーに!?」


「ええ。これは、“皿洗いだった頃の私”への、最後の区切りよ」


 


 ソラ、魔王様、ルナ、バス、リド──

 いわば“魔王城の核”がそろった陣容で、試合に臨む。


 


 一方、王国サイドの代表たちが登場。

 かつて魔王様が働いていた厨房の料理長、カルヴァン・シェイドもその中にいた。


 


「ようやく顔を出す気になったか……“下働きの少女”よ。

 だが、料理人は肩書きじゃなく、皿で語れ」


「そのつもりよ、“元雇い主”さん」


 


 会場がざわめく。

 王国側も観客も、“彼女がかつて自国で働いていた”ことを知り、色めき立つ。


 


 テーマが発表される。


【テーマ:国境のない献立】


 


「……なんて、魔王城のためにあるようなテーマ……」


「でも、“味の融合”って一番難しい。下手すれば“どっちつかず”になる」


 


 料理開始。


 王国側は“伝統の五皿構成”で構える。

 それぞれが専門を持ち、強みを前面に出す、まさに組織の料理。


 


 一方の魔王城まかない部は、

 ひと皿の中にすべてを込める“混在一品式”。


 


 焦点は──**「違う文化と素材を、どう繋ぐか」**。


 


 メイン素材は、“高地の魔獣肉”と“海底藻の燻しエキス”。

 焼きと蒸しの二重工程で火入れを調整し、

 香魔草と塩精霊の泡で味の境界をぼかす。


 


 それは、国でも種族でもない、“居場所のない者”の料理だった。


 


 魔王様が最後に一匙、自らのレシピを乗せる。


「これで、過去に“私が出せなかった皿”が、今ここに完成する」


 


 審査。


 王国側の献立は、正統・安定・格式。

 圧倒的な完成度と伝統の味。

 観客は拍手喝采。


 


 そして魔王城のひと皿。


 最初は、静かだった。


 けれど、ひと口食べた観客が、目を閉じて涙をこぼす。


 


「……この味、なんだ……」


「知らないのに、懐かしい……」


「“国”じゃなくて、“誰かがいた場所”を思い出す……」


 


 魔力装置が反応。

 共鳴数値がじわじわと上昇し──


王国代表:95点

魔王城:99点


 


 勝敗が決したとき、

 王国料理長・カルヴァンは、魔王様の前に歩み寄り、

 静かに頭を下げた。


 


「……あの頃、お前の料理を、

 “ただの余り物で遊んでる”としか思ってなかった。

 ……だが、あれは芽だった。

 今、ようやくわかる。──あの厨房で、俺は“未来”を見逃したんだな」


 


 魔王様は笑った。


 


「私の過去を、見つけてくれてありがとう。

 でも今は、仲間と共に“いまの味”を作ってるの」


 


 勝利と共に、魔王様の過去に一つの終止符が打たれた。


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