新魔物加入!? 食材にされかけた“幻獣”の逆襲
その日、厨房に届いたのは、
厳重な木箱に収められた“特級食材”──
【配送票】
名称:ミーレン獣(上物)
状態:冷却睡眠中
使用用途:宴用・丸焼き推薦
ふわふわとした白い毛皮に、長い耳。
四足で丸まって眠る姿はまるで、神獣のぬいぐるみだった。
「……こ、これが“ミーレン獣”? 食材っていうか……ぬいぐるみ……?」
「でも肉質は極上だって聞くよ。香りも独特で、“記憶に残る味”なんだとか」
「ちょっと待って、それってつまり──」
目を覚ましたミーレン獣が、こう叫んだ。
「やめろぉぉおおお!! 食べられるつもりなんてないんだぁぁ!!」
「「しゃべった!?」」
まさかの知性持ち幻獣だった。
「わたしは食材じゃなくて、交渉に来たんだ!!
“種族の代表として、魔王城のまかないを食わせてほしい”って!」
「……どういうこと?」
「我々、ミーレン族は“味覚進化型幻獣”と呼ばれてて……
おいしいものを食べると、知能と魔力が一気に伸びるんだ!」
「チートすぎない!?」
魔王様がやってきて、冷静に状況を見たあと、
にっこりと笑った。
「面白いわね。じゃあ、試食させてみましょうか。
でも条件があるわ──“美味しいと思った理由を、きちんと語ること”」
試されたのは、ルナ特製の“温菜フリカッセ”。
野菜と鳥肉の軽い煮込みに、香魔草と干し果実のソースを添えたもの。
ミーレン獣はひと口食べて、くるっと目を回したかと思うと──
「な、なんだこの余韻は……
初めは“甘み”だけだったのに、途中から“焦げた記憶”と“母の足音”が……!?」
「……味覚に“情景”が混ざってる!? 幻獣舌、すごいな……」
その後もソラやリドの料理を食べながら、
ミーレン獣は目に見えて成長していった。
「ぼく、もっと色んな味を知りたい! 魔王様の料理、もっと食べて、ぼくたちの未来を考えたい!」
「じゃあ、うちのまかない部に入りなさい。給食係、いける?」
「やるやるやる!!」
かくして、**初の“食べられかけた新入部員”**が誕生した。