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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
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青の大地

嵐を抜けた先――そこにあったのは、眩いほどの“青”だった。

 空は深く、雲は柔らかく、地平の果てまで光が続いていた。

 雨に洗われた大地は、まるで息を吹き返したように輝いている。


 まかない部の四人は、風に髪をなびかせながら足を止めた。



新しい風


 風は穏やかで、どこまでも澄んでいた。

 草がそよぎ、露が光を返す。

 ミナが目を見開き、息を呑んだ。

「……生き返ったみたいや。あんな嵐のあととは思えへん」


 ソラが頷く。

「地が“呼吸”を取り戻したんや。あの精霊たちの力やな」


 ルナが地に膝をつき、手のひらで土をすくう。

「……あったかい。この大地、脈を打ってる」


 ダグは周囲を見渡し、目を細めた。

「見ろよ、丘の向こう。芽が出てる」



芽吹く命


 丘の斜面には、無数の小さな芽が顔を出していた。

 まだ名もない草、知らない花。

 だが、その色はどれも鮮やかで、強い生命力を感じさせた。


 ルナが微笑む。

「嵐は、奪うだけじゃなかったのね。

 壊した分だけ、次の命を咲かせてた」


 ミナが笑って頷く。

「せやな。嵐も結局、料理みたいなもんや。

 混ぜて、壊して、また一つにする。そんで“旨み”が生まれる」


 ソラが吹き出した。

「相変わらず例えがうまいな」



空と風と声


 青空の下で、鳥たちが舞い始めた。

 その羽音に合わせるように、風が草原を渡る。

 旗の切れ端が再びはためき、陽光を受けて白く光った。


 そのとき、風の中から声が響いた。

 ――進め。風の子らよ。


 彼らは互いに目を見合わせ、頷いた。

 ルナが微笑みながら呟く。

「……風も地も、まだ見せたい景色があるみたいね」



新たな一歩


 ソラは荷車の取っ手を握り、前を見た。

 道はまっすぐに伸び、光が先を照らしていた。

「よし、次は“青の向こう”まで行ってみよう」


 ミナが肩をすくめる。

「まーた遠くまで行く気やな。でもええよ、腹減ったら風が飯の匂い運んでくるやろ」


 ダグが笑い、旗を軽く揺らした。

「行こうぜ。風が呼んでる」


 まかない部は再び歩き出した。

 その背を、風が優しく押していた。



結び


 空は青く、大地は息づいていた。

 草が芽吹き、光が揺れる。

 彼らの旅はまだ続く。


 


 ――嵐を越えてなお、世界は生きていた。

 それは、命そのものが奏でる“再生の歌”だった。


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