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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
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旗の下の誓い

夕暮れの光が町を淡く染めていた。

 新しく立てられた家々の影が長く伸び、広場の中央では、再び修復された旗が風に揺れていた。


 戦いの焦げ跡も、まだ町のあちこちに残っている。

 それでも、誰もが立ち止まっていた。旗のもとに――。



集う人々


 老いた者も、若い者も、母も、子も。

 仕事の手を止め、荷を下ろし、静かに旗のもとへ歩み寄る。


 誰も声を張らなかった。

 ただ、風の音と靴の擦れる音だけが広場に響いていた。



まかない部の姿


 ソラが旗の前で立ち止まり、胸に手を当てた。

「この旗が……みんなの手で繕われたこと、忘れないでおこう。

 破れたままじゃない。生き直した旗だ」


 ミナが頷きながら、笑顔を見せる。

「もう一度、いっしょに鍋囲める町にしたいな」


 ルナは目を閉じ、風に揺れる布を見上げた。

「旗が風を受けるたび、私たちの想いも動いてるわ」


 ダグは短く息を吐き、剣を地に立てた。

「もう二度と、誰にも踏ませない。……この土も、旗も」



刺客の一隅


 刺客は群衆の外れに立ち、静かに頭を下げた。

 彼の短剣は鞘に収められ、代わりに右手が胸に添えられていた。

「……俺も、この町の一人として、生きていこう」


 その声は小さかったが、旗の揺れと共に確かに届いた。



小さな声たち


「明日も畑に出るで」

「市場も、もう少し広げようや」

「風がええな……」


 町のあちこちから、そんな何気ない言葉がぽつぽつと溢れ出す。

 それは誓いというより、日々を重ねていく決意の形だった。



結び


 夕暮れの風が旗を揺らし、その影が人々の顔を撫でていった。

 誰も声を荒げず、誰も先を急がず、ただその場に立ち尽くしていた。


 


 ――旗の下の誓いは、静けさの中で確かに刻まれていた。


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