再び動き出す町
戦いの余韻が薄らいだ朝、広場の一角で木の台が並べられた。
それはかつての市場の跡地。焼けた柱の匂いが残る中、布を広げて野菜や果物が置かれていった。
「今日から……また始めるで」
年配の商人が、籠いっぱいの麦を並べながら呟いた。
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市場の再開
まだ品は少なかった。
畑から急ぎ収穫された野菜、倉庫から持ち出された干し肉、そして小さな手作りの菓子。
それでも、通りに立ち込める匂いや、売り声の響きが戻ると、町の空気は一気に変わった。
「ほら、安いで! 残り少ないから早い者勝ちや!」
「こっちは塩漬けや! 長持ちするで!」
声が重なり、人々が足を止めて品を手に取る。
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人々のやり取り
「焦げ臭いのも混ざってるけど……それも今だけやな」
「せやけど、この匂いが戻ってきただけで安心するわ」
母親が子の手を引きながら笑い、老人が小銭を数えながら麦を選んだ。
若者は荷を担ぎ、子どもたちは菓子を握りしめてはしゃいだ。
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まかない部の姿
ソラは果物を買い込み、
「これでまた甘い鍋が作れるな」と笑った。
ミナは菓子を両手に抱えて子どもたちと分け合い、
「食べる顔が一番のごちそうや!」と声を弾ませた。
ルナは塩漬けの保存状態を確認し、
「まだ足りないわ。供給を工夫しないと」と冷静に助言した。
ダグは大きな干し肉を肩に担ぎ、
「市場が動きゃ、町も生き返るってことだな」と満足げに頷いた。
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刺客の一隅
刺客は市場の端で静かに果実を一つ買った。
売り手が一瞬ためらったが、やがて「また来いよ」と笑みを見せた。
刺客は果実を握りしめ、短く「ありがとう」と返した。
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結び
まだ不完全な市場だった。
だが、声があり、やり取りがあり、笑顔があった。
――市場が再び動き出すことで、町もまた確かに前へと歩み始めていた。




