表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
139/259

再び動き出す町

戦いの余韻が薄らいだ朝、広場の一角で木の台が並べられた。

 それはかつての市場の跡地。焼けた柱の匂いが残る中、布を広げて野菜や果物が置かれていった。


「今日から……また始めるで」

 年配の商人が、籠いっぱいの麦を並べながら呟いた。



市場の再開


 まだ品は少なかった。

 畑から急ぎ収穫された野菜、倉庫から持ち出された干し肉、そして小さな手作りの菓子。


 それでも、通りに立ち込める匂いや、売り声の響きが戻ると、町の空気は一気に変わった。


「ほら、安いで! 残り少ないから早い者勝ちや!」

「こっちは塩漬けや! 長持ちするで!」


 声が重なり、人々が足を止めて品を手に取る。



人々のやり取り


「焦げ臭いのも混ざってるけど……それも今だけやな」

「せやけど、この匂いが戻ってきただけで安心するわ」


 母親が子の手を引きながら笑い、老人が小銭を数えながら麦を選んだ。

 若者は荷を担ぎ、子どもたちは菓子を握りしめてはしゃいだ。



まかない部の姿


 ソラは果物を買い込み、

「これでまた甘い鍋が作れるな」と笑った。


 ミナは菓子を両手に抱えて子どもたちと分け合い、

「食べる顔が一番のごちそうや!」と声を弾ませた。


 ルナは塩漬けの保存状態を確認し、

「まだ足りないわ。供給を工夫しないと」と冷静に助言した。


 ダグは大きな干し肉を肩に担ぎ、

「市場が動きゃ、町も生き返るってことだな」と満足げに頷いた。



刺客の一隅


 刺客は市場の端で静かに果実を一つ買った。

 売り手が一瞬ためらったが、やがて「また来いよ」と笑みを見せた。

 刺客は果実を握りしめ、短く「ありがとう」と返した。



結び


 まだ不完全な市場だった。

 だが、声があり、やり取りがあり、笑顔があった。


 


 ――市場が再び動き出すことで、町もまた確かに前へと歩み始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ