語られる夜
焚き火の炎が小さく揺れ、広場に座る人々の顔を赤く照らしていた。
宴はひと段落し、腹を満たした者たちが穏やかな声で言葉を交わしていた。
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未来を語る老人
「わしは……孫が安心して育つ町にしたいのう」
老人は杖を撫でながら笑った。
「戦いや飢えに怯えんで済む町じゃ……それが、何よりの願いや」
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未来を語る母
母親は眠る子を抱き寄せ、炎を見つめながら囁く。
「この子が大きくなったとき、旗を見るたびに笑えるように……。
あの夜を思い出すんやなく、みんなで歌を歌えるように」
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未来を語る若者
傷だらけの若者が拳を握った。
「俺は……もっと強くなる。
町を守れる力があれば、誰もこんな思いをせんで済む。
次は、守るだけじゃなく育てていける町にしたいんだ」
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まかない部の言葉
ソラは微笑みながら言った。
「みんなで食卓を囲める町にしたい。
その鍋が大きければ大きいほど、きっと旗も強くなる」
ダグは焚き火を見つめ、静かに頷いた。
「争うための力じゃなく、守るための力を持ちたい」
ルナは小さく笑みを浮かべて続けた。
「未来を思い描ける時点で、この町はもう前に進んでるわ」
ミナは声を弾ませた。
「子どもが大人になっても『お腹いっぱいや』って笑える町にしたいわ!」
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刺客のひと言
少し離れた場所で、刺客がぽつりと口を開いた。
「……俺は、もう旗を壊すためじゃなく……支えるために生きたい。
それが許されるなら、俺も……この町の未来を見てみたい」
その言葉に、広場の空気が柔らかく揺れた。
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結び
未来の願いは人それぞれ違っていた。
だが、その違いが重なり合い、一つの灯りとなって町を照らしていた。
――語られる夜は、希望の種を蒔く時間となった。




