旗の再生
戦いを耐え抜いた旗は、裂け目や焦げ跡にまみれていた。
それでも風にはためく姿は誇らしく、町の人々は自然とその周りに集まっていた。
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一針の始まり
「この裂け目……繕えば、まだ使える」
老いた仕立屋が指先を震わせながら針を通した。
小さな一針が布をつなぎ、その周囲で人々が静かに見守った。
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皆の手
「針仕事はできんけど……糸を持つくらいはできる」
若者が糸巻きを差し出す。
「布を押さえるのは任せて」
母親が裂けた端をそっと支えた。
「俺も……」
不器用な手をした子どもが、針を運ぶ仕立屋の横で糸を引いた。
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まかない部の加わり
ソラは破れた端を押さえ、ミナは針の位置を照らすために蓋を反射させた。
ダグは太い糸をほぐして渡し、ルナは焦げ跡を氷で薄く削り落とした。
「みんなで直したら……この旗、もっと強なるな」
ミナの言葉に周囲が頷いた。
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刺客の手
かつての刺客も、一歩前に出て糸を差し出した。
町人たちは一瞬戸惑ったが、仕立屋が黙って受け取り、針に通した。
その瞬間、わずかな距離が縮まった。
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結び
一針、一針。
誰かが針を通し、誰かが糸を引き、誰かが布を押さえる。
その積み重ねが、裂け目を確かに埋めていった。
――旗の再生は、町そのものの再生だった。