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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
135/141

旗の再生

戦いを耐え抜いた旗は、裂け目や焦げ跡にまみれていた。

 それでも風にはためく姿は誇らしく、町の人々は自然とその周りに集まっていた。



一針の始まり


「この裂け目……繕えば、まだ使える」

 老いた仕立屋が指先を震わせながら針を通した。

 小さな一針が布をつなぎ、その周囲で人々が静かに見守った。



皆の手


「針仕事はできんけど……糸を持つくらいはできる」

 若者が糸巻きを差し出す。


「布を押さえるのは任せて」

 母親が裂けた端をそっと支えた。


「俺も……」

 不器用な手をした子どもが、針を運ぶ仕立屋の横で糸を引いた。



まかない部の加わり


 ソラは破れた端を押さえ、ミナは針の位置を照らすために蓋を反射させた。

 ダグは太い糸をほぐして渡し、ルナは焦げ跡を氷で薄く削り落とした。


「みんなで直したら……この旗、もっと強なるな」

 ミナの言葉に周囲が頷いた。



刺客の手


 かつての刺客も、一歩前に出て糸を差し出した。

 町人たちは一瞬戸惑ったが、仕立屋が黙って受け取り、針に通した。

 その瞬間、わずかな距離が縮まった。



結び


 一針、一針。

 誰かが針を通し、誰かが糸を引き、誰かが布を押さえる。

 その積み重ねが、裂け目を確かに埋めていった。


 


 ――旗の再生は、町そのものの再生だった。


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