静かな祈り
復興の声が一段落すると、町にはしんとした静けさが広がった。
焼け落ちた家の前に立ち尽くす者、広場の旗を見上げる者、瓦礫の上に腰を下ろす者。
人々はそれぞれの心で、戦いの夜を振り返っていた。
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老人の祈り
杖を突いた老人が、崩れた石壁に手を当てた。
「……先に逝った仲間よ。わしらはまだ立っとるぞ……」
その言葉は誰にも聞かれず、風に溶けていった。
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母の祈り
母親は眠る子の髪を撫で、そっと囁いた。
「もう二度と……こんな夜が来ませんように」
涙は流れなかった。ただその声には、揺るぎない願いが込められていた。
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若者の祈り
若者は拳を握り、倒れた槍の残骸に黙礼した。
「俺の仲間を奪った剣……もう二度と町を壊させはしない」
短い言葉に、未来への誓いが込められていた。
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子どもの祈り
小さな子どもが旗の下で手を合わせた。
「旗さん……ありがとう」
意味は分からずとも、その純粋さが広場をやわらかく包んだ。
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まかない部と刺客
ソラたちは互いに言葉を交わさず、ただ空を見上げていた。
ルナは瞳を閉じ、ミナは胸に蓋を抱き、ダグは剣を横たえた。
刺客もまた、短剣を地に突き、目を伏せていた。
誰の祈りも大きな声ではなかった。
しかし、その静けさが町を結びつけていた。
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結び
祈りは一人ひとりの胸にあった。
声に出さずとも、涙にせずとも、その積み重ねが町を包む灯りとなった。
――静かな祈りは、確かに未来への力へと繋がっていた。