表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
134/143

静かな祈り

復興の声が一段落すると、町にはしんとした静けさが広がった。

 焼け落ちた家の前に立ち尽くす者、広場の旗を見上げる者、瓦礫の上に腰を下ろす者。

 人々はそれぞれの心で、戦いの夜を振り返っていた。



老人の祈り


 杖を突いた老人が、崩れた石壁に手を当てた。

「……先に逝った仲間よ。わしらはまだ立っとるぞ……」

 その言葉は誰にも聞かれず、風に溶けていった。



母の祈り


 母親は眠る子の髪を撫で、そっと囁いた。

「もう二度と……こんな夜が来ませんように」

 涙は流れなかった。ただその声には、揺るぎない願いが込められていた。



若者の祈り


 若者は拳を握り、倒れた槍の残骸に黙礼した。

「俺の仲間を奪った剣……もう二度と町を壊させはしない」

 短い言葉に、未来への誓いが込められていた。



子どもの祈り


 小さな子どもが旗の下で手を合わせた。

「旗さん……ありがとう」

 意味は分からずとも、その純粋さが広場をやわらかく包んだ。



まかない部と刺客


 ソラたちは互いに言葉を交わさず、ただ空を見上げていた。

 ルナは瞳を閉じ、ミナは胸に蓋を抱き、ダグは剣を横たえた。

 刺客もまた、短剣を地に突き、目を伏せていた。


 誰の祈りも大きな声ではなかった。

 しかし、その静けさが町を結びつけていた。



結び


 祈りは一人ひとりの胸にあった。

 声に出さずとも、涙にせずとも、その積み重ねが町を包む灯りとなった。


 


 ――静かな祈りは、確かに未来への力へと繋がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ