傷跡と絆
夜が明けきった広場には、戦いの爪痕が生々しく残っていた。
焼け焦げた壁、折れた槍、瓦礫の山。
だが、その中に人々の声が響き始めていた。
「瓦礫をどけろ!」
「水を回せ! まだ燻ってる火がある!」
「怪我人をこっちへ!」
⸻
共に動く町人たち
若者は瓦礫を肩に担ぎ、老人は杖を突きながらも道を指示する。
母親たちは子どもを背負いながら、裂いた布で手当を続けていた。
子どもたちでさえ、小さな手で石を拾い集めていた。
戦いを経た町は、恐怖に沈黙するのではなく、互いを支え合って動いていた。
⸻
まかない部の手
ソラは風で煙を散らしながら、焼けた梁を持ち上げる。
「重いぞ、下から支えろ!」
ダグは剣を脇に置き、力任せに瓦礫をどかす。
「剣より役立つ仕事もあるもんだな!」
ルナは氷で水を作り、傷口を冷やして人々に渡す。
ミナは鍋蓋を叩いて合図を送り、作業のリズムを整えていった。
⸻
刺客の姿
かつての刺客は黙々と木材を担ぎ、倒れた柱を支えていた。
町人が彼を訝しげに見たが、やがて「ありがとう」と声をかける。
刺客は一瞬驚いたが、短く頷き、また作業に戻った。
⸻
繋がる声
「おい、こっち手が足りん!」
「任せろ!」
「こっちは終わった、次に行くぞ!」
声が重なり、広場は再び活気で満ちていく。
戦いの傷跡は深い。だがその傷の上に、人々の絆が刻まれていった。
⸻
結び
旗は風に揺れ、朝日を浴びて輝いていた。
それを見上げる町の人々の表情は、疲れていても晴れやかだった。
――傷跡は確かに残った。
だが、その上に築かれるのは新たな絆だった。