崩れる陣形
敵兵の列はまだ広場を覆っていた。
鋼の槍が揃って構えられ、見た目にはなお威圧的だった。
だが、その内側に走るざわめきと動揺は隠し切れなかった。
⸻
決死の突撃
その時――。
一人の若者が前に飛び出した。
肩には包帯が巻かれ、片腕は血で濡れていた。
それでも彼は声を張り上げ、槍を奪った手で敵陣へ突っ込んでいく。
「町を……返さねえぞォッ!」
彼の叫びは戦場を震わせ、町人たちの胸を突き動かした。
⸻
広がる勇気
「俺も行く!」
「旗を守れ!」
「この町を踏ませるな!」
老人が杖を振り上げ、子を抱いた母親さえも石を握って声を張った。
次々と町人が若者に続き、敵陣へ雪崩れ込んだ。
恐怖に縛られていた群衆は、いまや決死の突撃へと変わっていた。
⸻
敵陣の崩壊
「止めろ! 止めろぉ!」
「なぜ民草がここまで……!」
敵兵の叫びが空しく響く。
槍の列は押し潰され、混乱の中で統率は完全に崩れた。
動揺していた兵士たちは次々に後退し、盾を放り投げて逃げ出す者も現れた。
⸻
まかない部の一撃
ソラが風刃で広場を駆け抜け、ダグが剣で残った槍を弾き飛ばす。
ルナの氷が敵の退路を塞ぎ、ミナの蓋が仲間を守る。
「押し返せ! 今が潮目だ!」
ソラの声が広がり、町人たちの決意はさらに強く燃え上がった。
⸻
結び
決死の突撃は、ただの無謀ではなかった。
一人の勇気が群衆を動かし、揺れていた敵陣を決定的に崩壊させたのだ。
――広場を覆っていた鋼の列は、ついに瓦解し始めていた。