揺らぐ敵陣
広場を覆う剣戟の音の中に、異質なざわめきが混じり始めた。
敵兵の列、その中から低い声が漏れる。
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動揺のささやき
「おい……あの刺客、こっちを斬ったぞ……!」
「まさか裏切ったのか?」
「嘘だろ、あいつは俺たちより忠実に仕えていたはずだ……!」
兵士たちの槍は震え、足はわずかに後ずさる。
仲間だったはずの刃が、自分たちを狙う恐怖が心を蝕んでいた。
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広がる疑念
「旗を狙えって命じられたけど……本当に正しいのか?」
「俺たちはこの町を征服するために来た……だが、この声を聞けよ。
女も子どもも、必死に立ってるじゃないか……」
兵士の一人が槍を下げる。
それを見た隣の兵は怒鳴るが、その声にも迷いが混じっていた。
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戦場の揺らぎ
兵士同士が視線を交わし、動きが鈍る。
そこにまかない部と刺客が繰り出す攻撃が重なり、前線は崩れ始めた。
ソラが叫ぶ。
「見ろ! 敵も揺らいでる! 押し返せ!」
町人たちの声も強さを増し、瓦礫の投石や桶の水が一斉に飛んだ。
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ざわめきの広がり
「俺は……もう斬りたくない……」
「黙れ! 命令だ!」
「だが、あの刺客でさえ……!」
敵陣のざわめきは波紋のように広がり、統率が崩れつつあった。
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結び
鋼の列はなお強大に見えた。
だが、その内側では動揺と疑念が確実に芽吹き始めていた。
――揺らぐ敵陣のざわめきは、町にとっての新たな希望となりつつあった。