決断の刃
広場に刺客の呼吸だけが響いていた。
短剣を握る手は震え、布切れのように揺れる旗が視界に焼きつく。
「……俺は、何をしている……?」
声は自分に向けられたものだった。
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選ぶ瞬間
外部勢力の兵の声が飛ぶ。
「何をもたついている! 旗を切れ!」
その号令に、刺客の背筋が震えた。
しかし次の瞬間、彼の視線は旗を囲む群衆へと戻っていた。
老いた者も、母も、子も――小さな声で旗を守ろうと立つ姿。
その光景が、心の奥で何かを決壊させた。
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裏切りの一撃
刺客は短剣を振り上げた。
兵も町人も息を呑み、旗が裂かれると誰もが思った。
だが刃は――振り返り、外部勢力の兵の喉元へ突き立った。
「なっ……!」
鮮血が飛び散り、兵が崩れ落ちる。
広場が一瞬静まり、次の瞬間ざわめきに包まれた。
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新たな立場
刺客は群衆に背を向け、外の兵を睨み据える。
「旗は……この町のものだ。
俺はもう……お前たちの犬じゃない!」
短剣を構え直し、背筋を伸ばすその姿に、群衆が息を呑む。
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まかない部の応答
ソラが目を見開き、叫んだ。
「……決めたんだな!」
ルナは冷静に頷き、ミナは涙をにじませ、ダグは剣を掲げた。
「なら共に戦え。もうお前は敵じゃない!」
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結び
刺客の刃はついに決まった。
それは旗を裂く刃ではなく、町を守る刃。
――決断の刃が、戦局を大きく揺り動かした。