旗を守る刃
刺客の短剣が振り下ろされようとしていた。
夜明けの光を浴びた刃が、旗の布を裂こうと煌めく。
群衆は息を呑み、まかない部も距離の遠さに間に合わない――。
その瞬間だった。
⸻
名もなき声
「させるかぁッ!」
叫びとともに飛び込んだのは、広場の片隅で荷を守っていた一人の町人だった。
粗末な木槌を振りかざし、刺客の腕に叩きつける。
刃は逸れ、短剣は旗を裂くことなく地面に突き刺さった。
⸻
小さな勇気の一撃
「……誰だ……?」
刺客が低く呻いた。
町人は肩で息をしながら、震える声で答えた。
「名なんて……どうでもいい……。
この旗は……この町のもんだ……!」
刺客が反撃に動こうとした瞬間、別の若者が後ろから石を投げつけた。
さらに老人が杖で背を叩き、母親が子を背負ったまま布を投げて目を覆った。
⸻
勇気の連鎖
たった一人の勇気が、次々と人を動かす。
刺客は一瞬で群衆に囲まれ、短剣を構えながらも動きを封じられた。
「……っ、この町……!」
刺客の焦りが滲む。
⸻
まかない部の到着
ようやくソラたちが駆けつけ、ダグが剣で刺客を押し下げた。
ルナの氷が地を固め、ミナが蓋を叩いて群衆を守る。
「よく……よく繋いでくれた!」
ソラの声が広場に響いた。
⸻
結び
旗は裂かれず、町の風にたなびいていた。
それを守ったのは、名もなき町人の小さな勇気。
――その一撃が、町全体を支える力に変わっていた。