忍び寄る策謀
旅籠町の広場では、まだ人々の議論が続いていた。
旗を掲げるべきか、あるいは炎を思い出して封じるべきか。
声は交錯し、まとまりは見えなかった。
そのとき、街道から重い足音が近づいてきた。
鋼で覆われた馬車と、鎧をまとった兵の列。
町の人々が振り返った瞬間、広場に緊張が走った。
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外部勢力の圧力
馬車の前に立ったのは、赤い紋章を掲げた武将風の男だった。
鋭い眼差しが群衆を一瞥し、冷たく言い放つ。
「この町は乱れていると聞いた。
旗を求める声もあれば、旗を拒む声もある。
――ならば、我らが旗を与えてやろう」
彼の背後で、兵が旗を広げた。
それは旅籠町のものではなく、外の勢力の紋章を染め抜いた異質な旗だった。
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群衆のざわめき
「よそ者が……!」
「町を奪う気か……!」
人々の声がざわめきに変わる。
だが兵の数は多く、露骨な威圧に広場は沈黙していった。
母親が子を抱き寄せ、老人が震える手で杖を握りしめる。
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まかない部の決意
ソラは前に出て、声を張り上げた。
「旗を押しつけるな! この町の旗は、この町で決める!」
男は鼻で笑った。
「炎に呑まれかけた町が、何を言う。
弱き旗など、踏み潰されるだけだ」
ルナが険しい目で言い返した。
「ならば――試してみるといいわ。
私たちが弱き旗かどうかを」
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結び
広場の空気は一変していた。
議論の声はかき消され、外部勢力の旗と兵の影が町を覆う。
――忍び寄る策謀は、もはや露骨な圧力として町を呑み込もうとしていた。