旗の影
夜明けの議論はまだ続いていた。
人々の声は恐怖から解放され、旗の意味を真剣に問う響きに変わっていた。
だが、広場に集う誰も気づいてはいなかった。
その外側から、別の視線が注がれていることに――。
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港町の外れ
旅籠町から離れた街道沿い、小高い丘の上。
そこに数人の男たちが馬を止め、町の広場を遠くから眺めていた。
「炎が収まったか……」
「だが、町はまだ揺れている。旗を巡って割れた心は癒えておらん」
その声は冷ややかで、よそ者の匂いを濃く漂わせていた。
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外部の策謀
「今こそ介入の好機だ。
町が旗を求めるなら、我らが与えてやればよい。
“導く旗”をな」
男たちの馬車には、折り畳まれた布が積まれていた。
それは旅籠町のものではない、外部の勢力が用意した旗だった。
「町が疲弊している今なら、反対の声を押しつぶせる」
「炎の担い手は潰えたが……影として利用できる」
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不穏な動き
男たちは馬を返し、街道を静かに引き返していった。
町の広場ではまだ議論の声が響いている。
だが、その議論の行方を決めるのは町だけではなく――
外から忍び寄る旗の影かもしれなかった。
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結び
旗をめぐる争いは、もはや町ひとつの問題ではなかった。
外部の勢力が静かに介入を始めたことで、物語は新たな段階へ進もうとしていた。
――旗の影が、町を覆い始めていた。