揺らぐ旗の意味
炎は崩れ去り、広場には黒煙と焦げた匂いだけが残っていた。
群衆はまだざわめいていたが、その声は遠く、まかない部の耳には届かない。
彼らの心を占めていたのは――旗の意味、その一点だった。
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ソラの胸中
ソラは杓文字を握りしめ、拳を震わせた。
「……旗って、なんなんだろうな。
笑顔を守るためにあると思ってたけど……あいつの言葉にも、一理ある気がして……」
彼の声は揺れていた。
痛みを知った者だけが旗を掲げる――その執念を、否定しきれなかった。
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ルナの胸中
ルナは静かに目を閉じた。
「……旗は象徴。人が何を望むか、その形。
でも象徴は、時に人を縛る。
守るための旗と、縛るための旗……どちらも同じ布切れ」
彼女の声には、冷静さと同時に苦味があった。
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ダグの胸中
ダグは剣を地に突き立て、炎の残滓を見下ろしていた。
「……俺にとって旗は、仲間を守るための約束だった。
けど、あいつにとって旗は、裏切りと敗北の証だったんだろう。
同じ旗でも……見え方は違う」
低い声が広場に沈んでいった。
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ミナの胸中
ミナは焦げた鍋の蓋を抱きしめ、涙ぐんだ顔で呟いた。
「旗がなんやろうと……うちは一緒に食べる鍋があれば、それでええ。
……せやけど、それやない人もおるんやな……」
彼女の素朴な言葉は、三人の心に重く響いた。
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結び
四人の胸に去来したのは、旗の意味が揺らぎ続ける現実。
炎の担い手の執念も、笑顔を守ろうとする自分たちの思いも――同じ旗の影にあるのだ。
――揺らぐ旗の意味は、彼らに新たな問いを突きつけていた。