炎の残滓
広場を覆っていた炎は、次々と崩れ散っていた。
火柱は弾け、火蛇は跡形もなく消え、赤黒い光に覆われていた夜は闇を取り戻しつつあった。
「……やった……ほんまに、炎が消えていくんや!」
ミナの声に、群衆からも安堵の息が漏れる。
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炎の担い手の姿
その中心で、炎の担い手は片膝をつき、肩で荒く息をしていた。
掌の炎はすでに燐光ほどの揺らめきしか残っていない。
だが、その瞳だけは消えていなかった。
冷徹さに迷いを含みながらも、なお深く燃え続けるものがあった。
「……炎は……消えぬ」
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執念の言葉
彼は立ち上がり、震える声で呟いた。
「旗は……人が選ぶものではない。
炎に焼かれ……痛みに晒され……なお立ち上がる者だけが掲げる。
俺は、その証を……必ず示す……」
炎はすでに彼を支えきれない。
それでも言葉だけが、炎の残滓のように燃え残っていた。
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まかない部の反応
ソラは杓文字を握りしめ、歯を食いしばった。
「……まだ、燃えてる……! こいつ、心の炎を手放してない!」
ルナが険しい目で見据える。
「迷っている。けれど、執念がその迷いを覆い隠そうとしてる」
ダグは剣を構え、低く唸った。
「……倒れたままでは終わらん。立ち上がる気だ」
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結び
炎の光景は崩れ去った。
だがその中に残るのは、なお消えぬ執念の炎だった。
――それは物理の炎よりも恐ろしく、戦いを終わらせぬ火種となっていた。