炎の担い手の動揺
広場を覆う炎はなお轟々と燃えていた。
だが、その赤黒い光の中で、人々の声が高まり始めていた。
「負けるな!」
「立ち向かえ!」
「この町を守れ!」
叫びが波紋のように広がり、炎に呑まれそうな心を支えていた。
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炎の担い手の視線
炎の担い手は霧の中に立ち尽くし、人々の声をただ聞いていた。
その冷たい瞳に、ふと影が差す。
「……何故だ。恐怖に震えていたはずの者たちが、なぜ……」
彼の掌に集まった炎が、ほんの一瞬揺らいだ。
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過去の影
脳裏に浮かぶのは、かつて彼が信じた仲間たちの姿。
旗を掲げたはずの人々が、恐怖に飲まれて散り散りになった日の記憶。
「……結局、人は炎に抗えぬ……はずだった」
彼の言葉は、かすかに揺れていた。
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迷いの揺らぎ
炎の蛇が町を呑み込もうとした瞬間、炎の担い手は手を止めた。
人々の声が霧を震わせ、心の奥に亀裂を刻んでいく。
「……本当に……旗は、炎でしか立たぬのか……?」
低く漏れたその声を、ソラは確かに聞いた。
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まかない部の一歩
ソラが杓文字を握りしめ、炎の彼へ叫んだ。
「まだ遅くない! 旗は争いじゃなく、みんなで囲む鍋みたいなもんだ!」
ルナも続ける。
「炎に焼かれるのじゃなく、灯りとして使うことだってできる!」
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結び
炎の担い手の瞳が揺れた。
冷徹さに曇りが差し込み、迷いが心を縛っていた。
――その迷いが、炎の均衡を崩すきっかけとなりつつあった。