炎の均衡
炎の担い手が両腕を広げると、広場の中央に再び火柱が立ち昇った。
赤黒い光が町を照らし、逃げ遅れた人々の顔を不安に染める。
「……抗ってみせろ。炎に呑まれながらな」
冷徹な声が広がり、炎が大蛇のように這い出した。
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群衆の奮闘
その炎を前に、群衆はもはや逃げなかった。
桶の水が飛び、濡れた布が火に叩きつけられる。
若者が瓦礫を盾代わりに構え、老人が声を張り上げた。
「怯むな! 火は消せる!」
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まかない部の応戦
ソラの杓文字から放たれた風刃が炎を裂き、ルナの氷がその隙を冷やし固める。
ミナは鍋の蓋で飛び散る火の粉を受け止め、ダグは剣で火蛇を斬り払った。
「まだ……押し返せる!」
ソラの声が響く。
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炎と水の拮抗
広場の片側では炎が建物を呑み、もう片側では水と氷がそれを抑えていた。
火と水、赤と青の光がせめぎ合い、広場の中央でぶつかり合って爆ぜた。
轟音と蒸気の白い霧が広場を覆い、視界はほとんど奪われる。
人々の息遣いと炎の唸りが混ざり合い、均衡は崩れなかった。
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炎の担い手の独白
炎の担い手は霧の中で静かに呟いた。
「……ここまで抗うか。
だが、抗い続ける力がいつまで持つか……」
その声に、広場の人々は歯を食いしばり、さらに踏みとどまった。
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結び
炎は消えず、水も尽きなかった。
力は拮抗し、どちらも譲らぬまま夜は更けていく。
――均衡は続いていた。
勝敗は、まだ見えない。