揺れる人々の心
広場はまだ炎に包まれていた。
屋台は半ば燃え落ち、建物の壁は赤く照らされている。
しかし、その炎の前で倒れぬまかない部の姿が、人々の目に強く焼きついていた。
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群衆の声 ― 恐怖
「もう逃げよう……! こんな炎に抗えるはずがない!」
「いや、逃げ場なんて残ってないんだ……!」
腰を抜かした老人が震え、子を抱いた母親が泣きながら周囲を見回す。
彼らの声は、炎の熱よりも冷たく胸に迫った。
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群衆の声 ― 希望
一方で、別の声が上がる。
「見ろ……立ち上がってる! 何度でも!」
「あの子らは諦めてないんだ!」
若者が拳を握り、負傷した男が歯を食いしばる。
まかない部の姿が、弱々しいながらも希望の火を灯していた。
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交錯する心
「けど……あんな炎に勝てるわけが……」
「いや、信じるしかないだろ! 俺たちにはもうあの子らしかいないんだ!」
賛否の声が交錯し、群衆の間に渦が広がっていく。
恐怖と希望がぶつかり合い、広場の空気を揺らしていた。
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子どもの声
そのとき、小さな声が響いた。
「……がんばれ……!」
泣きはらした子どもが、母親の腕の中からか細く叫んだ。
「がんばれ! まけないで!」
その声が広場を突き抜け、沈黙を破った。
人々が顔を上げ、次々と声を重ねる。
「立ち向かえ!」
「負けるな!」
「旗は……あの子たちの側にある!」
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結び
群衆の心はまだ揺れていた。
だが恐怖の波に、確かに希望の声が混ざり始めていた。
――まかない部の粘り強さは、人々の心を少しずつ動かしつつあった。