炎の担い手の反撃
旅籠町を覆っていた炎の渦は、まかない部の連携技によって打ち砕かれた。
火柱は消え、赤黒い煙だけが夜空に漂う。
人々は息を呑み、ほんの一瞬だけ歓声が広がった。
「やった……止まったんや!」
ミナが涙交じりに叫ぶ。
だが――その静寂の中で、男の低い声が響いた。
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冷徹な立ち上がり
炎の担い手は崩れ落ちた瓦礫の中から姿を現した。
衣は焦げ、片膝をついていたが、その瞳は氷のように冷たく光っていた。
「……見事だ。だが、炎は止まらない」
その声には怒りも焦りもなく、ただ事実を告げる冷徹さだけがあった。
広場を包んでいた安堵の空気が一瞬にして凍りついた。
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計算された反撃
男は指先をわずかに動かす。
残っていた炎が呼応するように集まり、彼の背後で三つの火球となった。
「旗を守る力を示した。ならば、次は――旗を壊す力を見せる番だ」
三つの火球が音もなく浮かび上がり、周囲の建物を狙う。
人々の悲鳴が再び広がる。
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まかない部の危機
ソラが叫ぶ。
「やめろ! 町を巻き込む気か!」
男は淡々と答えた。
「炎に巻き込まれてこそ、人は旗を求める。
痛みを知らぬ笑顔など、意味はない」
ダグが剣を握り締めた。
「……冷たく言いやがる。だがその冷徹さが一番恐ろしい」
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結び
三つの火球が一斉に軌道を変え、町の三方向へと飛び去った。
炎は再び町を呑み込もうとしている。
――炎の担い手は、冷徹に、計算された反撃を始めた。