影の正体に迫る
炎に包まれた旅籠町。
黒い外套の影は屋根を駆け抜け、赤く染まる瓦の上を飛び越えていた。
ソラたちは息を切らしながら、その背を追い続ける。
「逃がすな!」
ダグが叫び、剣を振りかざした。
炎の熱気が刃に映り込み、赤黒い光を放つ。
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追い詰められた影
ついに路地の行き止まりで、影は足を止めた。
燃え落ちた梁が道を塞ぎ、逃げ場はない。
ソラが杓文字を握りしめ、息を荒げて言った。
「……ここまでだ! お前は何者だ!」
炎の揺らぎの中で、黒い外套が音を立てて外される。
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明かされた素顔
現れたのは――あの僧院で人々を導くように現れた、フードの人物と同じ顔だった。
だが、その瞳は穏やかではなく、冷たい憎悪に燃えていた。
「……あのときの……!」
ミナが息を呑む。
男はゆっくりと口を開いた。
「俺の旗は偽りなどではない。
だが、人々に選ばせるつもりもない。
……旗は、争いの炎の中でこそ立つのだ」
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まかない部の衝撃
ルナが鋭く言い返す。
「だから……町を炎に巻き込んだのね」
ソラは震える声で叫んだ。
「旗は……笑顔を守るためのものだろ! お前のは、ただ人を焼くだけだ!」
男の口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
「守る笑顔など、いつか燃え尽きる……ならば、炎に鍋をかける方が真実だ」
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結び
炎の中で明かされた影の正体は、旗を巡る新たな敵であり、かつて人々を導いたあの人物自身だった。
信じたい声と、恐れる声を巧みに操り――ついには破壊を選んだ旗の担い手。
――旗を巡る物語は、もう後戻りできぬほど深く燃え始めていた。