表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
1/127

辞めたいけど朝の蒸しパンが優勝してた

「もう限界だ……明日こそ辞める……」


 朝、厨房のカウンターに並んでいたのは、

 ふかふかのトウモロコシ粉の蒸しパンと、蜂蜜バター。

 それに、野菜と白根肉をじっくり煮込んだ粘つくスープ。

 テーブルの真ん中には、砕いたナッツと塩を練り込んだチーズペーストまで添えられていた。


 ──何この職場、怖い。


 


「おいソラ、今日も辞めるって言ってなかった?」


「言った。でもこのパン、焼きたてどころか“蒸し上がり直後”……。モフるしかない……!」


「ほらね、また意志がパンに敗北した」


 


 こいつはルナ。魔王軍第三食堂所属の厨房補助魔導士。

 俺の胃袋を管理してる女。


 


 俺の名前はソラ=リット。十八歳。

 魔王軍第七課・探索兵(仮)。戦力外通告を受けつつ、なぜかまだ首にはなってない。


「主な業務:雑務、荷物運び、野外調査、まかないの味見」


 


「ちなみに今日の任務、知ってる?」


「……おっ、お手柔らかに頼みたいです……?」


「“魔王様の昼食用フルーツ調達”だって」


「で、出た〜〜〜! 魔王様の食リクエスト!!」


「今回は“皮が紫で、中が冷たいやつ”らしいよ」


「いやヒントざっくりしすぎでしょ!? 誰の魔法試験!?!?」


 


 ──うちの魔王様はグルメだ。


 異常にグルメだ。

 そして本人が、たまに厨房に立つ。


 


「……ルナ、これさ。俺じゃなくて、もっと有能な人がやるべきじゃない?」


「うん。でも有能な人は、みんな“夕食の前菜”担当で忙しいから」


「なんだその分業システム!?」


 


 というわけで、

 俺は今日も辞められなかった。


 飯がうますぎる魔王城で、変な任務に振り回されながら、

 気づいたら魔王様の胃袋の平和を守ってる。


 


 あーあ……

 どうして俺、ここで働いてんだろ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ