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ウザかった幼馴染の女医が最近可愛くなった  作者: 国北弘樹
第1章 多重衝突事故の患者を救命せよ!
3/9

回診

 今回のお話は彩奈さんの秘密が明かされるよ!

そして京介の本心と彩奈さんの気持ちが交差することに!新たなキャラクターも加わり物語の展開が加速する!

  回診


 京介side


 音が聞こえる。それは手術室の機械音、呼吸器や人工心肺装置が稼働する音。今俺は成城医大病院の手術室で一昨日大動脈瘤で運ばれてきた少女のオペをしている。開かれた胸には心臓が露わになっていて小刻みに揺れている。この患者は昨日の夜のカンファレンスでロボット手術ではなく手動の手術で俺の出頭が決まり、朝の午前6時から今1時間半程経過している。俺はメスでゆっくりと動脈瘤の残る血管を切り取ってそこにハイブリッド血管を縫合する。もちろん今この少女はクランプをしているため血は流れていない。血管を縫合して臨床工学技士と看護師にクランプ解除を告げる。そして俺の後ろの伊井波遥が言った。

「午前7時45分クランプ解除」血管を塞ぐサテンスキーを外し、エクモを作動させる。手術室の向かいの見学室には弟の健太郎の姿があった。丁度マイクがオンになる。

「お疲れ様、相変わらず縫合速いな。なんで兄貴は脳外科行かなかったんだか謎だよ。」弟に自分の過去を突かれて少し心が乱れる。俺は足元にあるスイッチを押してマイクをオンにする。

「その話はしないでくれ、心が草臥れる。」本音がすんなり口から零れ落ちた。

「わかったよ兄貴、まぁ美波先輩の件もあるししょうがないか。」健太郎はそう言って見学室から出て行った。俺は心膜を縫合し、残りの作業を助手として出頭した原センター長にお願いして手術室を出る。ガウンとゴム手袋を外してすぐに除染室に行って手を洗う。すると除染室に彩奈の姿があった。

「相変わらずオペ速いね。私内科だからオペ室には入れないけどカメラで見てた感じだと凄く手際良いしカッコよかったよ。」彩奈は俺の肩を叩いてそう答えた。正直彩奈とは先週の週末の出来事を思い出して少し恥ずかしくなる。彩奈は俺を見て言った。

「あれれぇ〜たった一夜を共にしただけで幼馴染に恋しちゃったの〜?」もう俺の心の中まで彩奈に見透かされているような気がして不安になる。俺は平然を演じて言う。

「そんなわけないだろ。お前が可愛いことは認めるが恋に落ちはしないよ。」(だがここで言わせてもらう!俺は決して彩奈にそんな感情は抱いてない!)すぐに俺は手を拭いて朝の回診に向かう。

 俺は中央手術室を出て一旦医局に戻る。後ろからは彩奈も続いてくる。「今日は絢香ちゃんのところ行くの?」彩奈が聞いてきた。絢香ちゃんは2週間前に交通事故で救命センターに運び込まれてきた中学2年生の少女だ。俺は訳あって彼女とよく病室でよく話をしている。1週間前まではHCUに入っていたが今は一般病棟の角部屋の個室で過ごしている。

「あぁ、ちょっと今相談にのってもらってるからな。お前は来るなよ、いくら担当医でもな。」俺がそう言って自販機でスポーツドリンクを買うと彩奈は言った。

「流石小児患者からモテる先生ですね、この間なんて退院した女子高生からデートの誘い受けてたじゃん。私もあれくらい男の子にモテたいな〜」棒読みで彩奈はそう言った。正直女子高生の誘いは断ったがそのせいでその女子高生は彩奈に嫉妬している。ちなみにその女子高生はこの成城医大を受験すると言っていたので早ければ半年後に彼女はここの大学の門をくぐることになるだろう。

「お前は同年代の男子からモテてるから良いだろ。俺なんて年下からしかモテねーしさ。」俺の嘆きに彩奈は槍のように鋭い言葉で俺を突き刺す。

「欲張り、あんたを狙ってる人は案外身近にいるかもよ!」俺は欲張りだというセリフに少し心が痛む。そんな話をしているうちに彼女の病室の扉にたどり着いた。

「じゃあここからは俺を1人にしてくれ、彩奈さん。」すると彩奈は渋々不満げに外来棟の方に走って行った。

彩奈がいなくなったことを確認して扉をノックする。

「どうぞ」彼女の声を聞いて扉を開ける。

「こんにちは、悩める子羊さんっ!」彼女、伊犂宮絢香は俺と何かと相性が良く最近は休憩時間とかに色々と相談にのってもらっている。そんな彼女は水色の寝巻に身を包み、顔は色白で目は赤茶色でその艶やかな黒髪を後ろで束ねている、どこか大人っぽい中学生だ。

「本日もよろしくお願いします師匠。」俺は頭を下げてから椅子に腰を下ろす。

「一昨日は彩奈先生と一緒に寝たんだってぇ〜?やるじゃん先生!」その一言に胸の鼓動が早くなる。(あの野郎師匠に全部バラしてんのか...)尋問されることを避けるために俺は全て吐き出すことにした。

「おっしゃる通りです、でそこで俺が寝てる時に抱きついてきて。」俺の言葉を聞いて彼女はニヤニヤして言った。

「女の子は好きな人にしかそんなあざといことしないよ。特に杣田先生はそのへん堅そうだし、それで先生はどう手を打つの?」彼女の話に俺も共感した。確かに彩奈は大学生の時もよく先輩とかから話しかけられていたがいつも塩対応だった。だが俺と話す時はいつも笑顔ですごく可愛いかった。そんなことが頭の端からこぼれ落ちてきた。

「先生顔紅くなってるよ、早く杣田先生襲っちゃえばいいのに。」俺の気持ちにますます彼女は拍車をかけてくる。

「俺、わかんないんですよね。本当に人を好きになったことが無いもんで、」俺が本音を溢すと彼女は続けた。

「じゃあ杣田先生のこと攫っちゃえばいいのに、きっと先生なら素敵な彼氏さんになれますよ。なんなら2人の結婚式の祝辞私やりましょうか??」俺は彼女の誘いを断って結論をだす。

「それは無理だよ、2つの意味で。1つは俺は彩奈に釣り合わない、2つ目はもし祝辞をするとしてもその席はもう指定されている。」俺がそう告げると彼女は布団で口元を隠して言った。

「私にしてくださいよぉ〜、私なら2人を泣かすことのできる最高のスピーチができますぅ〜!」彼女の言葉に俺はどことなく恐怖を感じた。それは多分「泣かせる」というところに心が反応したのだろう。

「正直その言葉に恐怖覚えたからやめてくれ。」そう溢すと彼女は続けた。

「ならどうするんですか?先生は彩奈さんにどう接するんです?」彼女の問いに俺は答えることができなかった。

「言っておきますけど理系の人間は何でもかんでも答えがあると思っているかもしれませんが、恋愛に模範解答用紙なんて存在しませんからね。だから答えをあなたたちなりに導き出さなきゃいけないんですよ。」彼女の言葉はダイレクトに胸に突き刺さる。だがこれが良いとどこかで感じてしまう。だから俺と彼女の距離感を丁度良いと感じるのだろう。

「じゃあ師匠的にはどうすれば良いと思いますか?」俺の質問に彼女は的確な返答をした。

「具体的に言ってしまえば早く2人がお互いに抱いている感情に背を向けずに真っ向からぶつかれってことですよ。でもそれができないのなら、お互いが接触、つまりボディタッチを増やせば良いんですけどできますか?」脈が速くなるのを手首から感じる。だがここで背を向けてしまっては彩奈にも彼女にも嘘を吐くことになってしまう。

「わかりました、じゃあそうさせてもらいます。じゃあ俺はこれで。」俺がそう言いかけると彼女は白衣を掴んで言った。

「杣田先生も扉の向こうで聞いているんでしょ、出てきてくださいよ。」その言葉に緊張感が走る。すると扉がゆっくりと開いて彩奈が入ってきた。

「お前、聞いてたのか?」俺がそう言うと彩奈は言った。

「だって京介が悪いんじゃん、この間一緒に寝た時も私のこと抱いてくれなかったし。」彩奈の言葉に彼女が反応した。

「えっ?京介先生杣田先生のことまだ抱いてないの?」彼女は驚いた口調でそう答えた。俺の心はもう崩壊しそうだ。

「そうよ!絢香ちゃん聞いてよ、コイツ私のこと抱きしめながら寝たくせにキスもしてくれなかったのよ。」彩奈は顔を真っ赤にしてそう言った。

「京介先生それはないでしょ、こんな一級品が側にいるのにそれでも襲わないなんて。」師匠はもう話を聞かないと硬い意志を表すように俺から顔を背けた。

「頼みますよ師匠、だってコイツ俺に挑発的な口調であたってきてもうそんな気になれなかったんだよ。」そこに彩奈が拍車をかけるように答えた。

「だって私京介のために初めても守り抜いて、むっ!今の忘れて京介!」彩奈の衝撃的な真実に頭の回転が間に合わない。それにしてもアイツ、俺のために..ってそんなことを考えるな。このままだと師匠にイジられるだけだぞ。

「じゃあ師匠である私から2人に指示します。京介先生は今月中に彩奈先生とお家デートすること、そして彩奈先生はもう少し柔らかく京介先生に接することを心がけてください。」俺は師匠に抗議する。

「ちょっと師匠、それは急すぎますよ。それに彩奈だって、」もう師匠も急すぎるって、そう簡単に彩奈を...なんてできねぇよ。あんなに大学までモテていた幼馴染を性的な目で見ろなんて急には無理だ!

「じゃあ京介先生に言うけど女の子は見向きもしてくれない男子と接するのがどれだけ苦しいことかわかりますか?」俺は口篭ってしまった。師匠は続ける。

「まずは京介先生が女の子の気持ちを理解するのが1番大切ですよ。」彩奈が続ける。

「ありがとう絢香ちゃん、お陰で気持ちに踏ん切りがついたよ。というかこんなに恋愛に詳しいってことは絢香ちゃんもモテるの?」そう彩奈が言うと師匠は恥ずかしそうに答えた。

「それは、モテますよ。この大きな胸のせいで嫌でも男子達が寄ってきますから。」もう俺は何を言えばいいかわからなくなり黙り込む。

「そうなんだ、じゃあ彼氏とかいるの?」彩奈が聞くと彼女は嬉しそうに答えた。

「彼氏はいませんけど、彼氏にしたい人はいますよ!」俺はもう意気消沈、冷汗三斗と言うにふさわしい状態だと言えるだろう。それからの会話の内容は覚えてない。そしてこの後俺は仕事の持ち場に戻るのであった。

 今回も最後まで読んでくださりありがとう

ございました。今回のお話はどうでしたか?

次回は新たな彩奈のライバルが登場???

次回もお楽しみに!

次回は余裕ができた時に投稿します!

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