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和光市の街を歩く

和光市駅を降り立った兄妹は、まず駅前の雰囲気をじっくりと感じ取っていた。圭介は周囲を観察しながら、これからどこをどう回るかを考えている様子だったが、奈緒はもっと軽い気持ちで街を見ていた。


「せっかくだし、観光もしていこうよ。合言葉探しだけじゃつまんないし。」奈緒がそう言うと、圭介は少し困った顔をしたが、すぐに諦めたように肩をすくめた。


「まぁ、そうだな。せっかく来たんだし、少しはのんびり見て回ってもいいか。」圭介は観光ガイドアプリを立ち上げ、和光市の観光スポットを確認した。


「まずは…和光樹林公園かな。緑が豊富で、リラックスできる場所らしい。」


「いいね、自然がいっぱいなところ行ってみたい!」奈緒はすぐに乗り気になり、二人は和光樹林公園に向かうことにした。


駅から公園までは、さほど遠くなかった。住宅街を歩く間、圭介はふと昔のことを思い出していた。彼がまだ学生だった頃、このような静かな町に住んでいる友人が何人かいた。彼らは都心まで電車で通いながら、和光市のような住宅地で穏やかな生活を送っていた。


「こういう場所に住んでる人たちって、幸せなんだろうな…」圭介はぼんやりとそんなことを考えた。


「ねぇ、何か考えてるの?」奈緒が聞いてきた。


「いや、何でもないよ。昔のことを少し思い出してただけだ。」圭介は笑ってごまかしたが、奈緒は少し首を傾げた。


やがて、和光樹林公園に到着すると、奈緒はその広がる緑に感嘆の声をあげた。「すごい!こんなに広いんだね。」


「確かに。和光市がこんなに自然豊かな場所だとは思わなかったな。」圭介も驚いた表情を見せた。


公園内を歩きながら、二人は緑に囲まれた小道を進んだ。圭介はあまり感情を表に出さない性格だったが、奈緒は彼の表情が少しだけ穏やかになっていることに気づいていた。自然に触れることで、圭介の心も少し和らいでいるのかもしれない。


「この公園って、何か歴史的な背景があるの?」奈緒は興味津々に尋ねた。


「うん、和光樹林公園はもともと国有地で、昔はここに米軍の通信基地があったらしい。それが返還されて、今では市民の憩いの場として整備されているんだ。かなり広くて、自然のままの景観が残されているのが特徴だな。」


「へぇ、そんな歴史があったんだね。でも、今は平和で、すごくリラックスできる場所だね。」奈緒は木々の間を歩きながら、ふと足を止めて深呼吸をした。


「確かにな。都会の喧騒とは違うな。」圭介も同じように木々の中に立ち、静かな時間を味わっていた。


公園を一通り散策した後、二人は次の目的地へ向かうことにした。奈緒はまだ足りないとばかりに、次の観光スポットを探し始めた。


「次はどこ行く?」奈緒が興奮した声で言う。


「次は…そうだな、白子宿に行ってみようか。」圭介が答えた。


「白子宿?どこそれ?」


「川越街道にある昔の宿場町の跡だよ。江戸時代に栄えた場所で、今でも当時の面影が残っているんだ。歴史が好きなお前にはピッタリかもな。」圭介が少しからかうように言うと、奈緒は笑いながら肩をすくめた。


「よし、じゃあ行ってみよう!」


白子宿に到着すると、二人はその静かな町並みに心を奪われた。古い建物が今でも残っており、江戸時代にタイムスリップしたような感覚を覚える場所だった。


「これが宿場町か…なんだか昔の人たちがここを行き交っていた光景が目に浮かぶね。」奈緒は興奮した様子で辺りを見回していた。


「そうだな。川越街道は、江戸と川越を結ぶ重要な道だったから、ここも昔はかなり賑わっていたんだろうな。今はすっかり静かになったけど、その分、歴史の重みを感じる場所だ。」圭介は冷静に説明しながらも、どこか感慨深い表情を浮かべていた。


二人はしばらく白子宿の周囲を歩き回り、歴史的な建物や古い石碑を見て回った。奈緒は時折、スマートフォンで写真を撮りながら、兄と共に歴史を感じる時間を楽しんでいた。


「こんなに面白いところがあるんだね。最初はただの住宅街だと思ってたけど、いろいろ奥が深いんだな。」奈緒は満足そうに言った。


「和光市も、知らないと見過ごしてしまうような場所が多いんだよ。俺も今回調べて初めて知ったことばかりだ。」圭介は苦笑しながら言った。


「じゃあ、次はどこに行く?」奈緒が期待に満ちた声で尋ねた。


「観光はこれくらいにして、そろそろ本題に入るか。」圭介は少し真剣な顔に戻り、次の計画を練り始めた。「これまでの場所は良い観光だったけど、手がかりはまだ何も掴めていない。次は理化学研究所の方に行って、具体的な探索を始めよう。」


「了解!じゃあ、そっちに行ってみよう!」奈緒は元気よく応えた。


二人は観光を終え、和光市の静かな街並みを背に、次なる目的地へと向かうことにした。ここからが本格的な探索の始まりだ。祖父の遺した合言葉を探す旅は、ようやく動き出そうとしていた。

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