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死神に刻まれた凡人の名


 「ほら、たった二つだ。早く言ってくれた方がお互いに嬉しいだろ?」


 「はは…」


 乾いた笑いしか出ない。この状況からどうやって死ねるのかわからない。もし俺の能力を知ったら殺さないだろう。そんな何度も考えたことが頭の中を支配する。


 「早く答えてくれないか?それだともっと痛みを知ってもらわなくなる」


 「ぐっ…あぁ」


 傷口から何かを突っ込まれたような痛みが走る。傷口についている謎の金属が悪さをしているのか?早く考えをまとめて話さないと、痛みでどうにかなりそうだ。


 「どうだ?言う気になったか?」


 「一つ疑問がある」


 「何?一回だけ聞いてやろう」


 「どうやって俺が異界人だと証明したらいい?俺はお前みたいに元の世界の能力を持っていない。まず、俺の世界では能力者みたいなやつはいなかったからな。なら、俺の世界の知識を披露しようか?だか、それも俺が異界人から聞いた知識だと言われたら何も言い返せない。そうするとだ、俺は異界人だと証明できない。教えてくれ、俺はどうやったら証明できる?」


 「証明か…それは自分で考えるものだろ?無駄口を叩くな」


 「ゔっぁ…!」


 左腕が飛んだ。どうやっているのかもわからない。『鉄翼』に関係しているのか?この攻撃方法が?あー、わからないことを考えるのはよそう。どうにかして切り抜けるか、殺されるようにしないとな。


 「…俺の星は地球だ。知ってたか?星ってやつは球体なんだ。この世界だって多分球体なんだぜ。そんなこと思った奴もいないかもだけどな」


 「…それがどうかしたのか?」


 「いやぁ、俺の世界の話をしたら信じてくれるかもだろ?頭ごなしに切り捨てようとしないでくれよ。あぁ…そうそう『鉄翼』だっけか?俺の世界にも似たようなモンあったわ。飛行機って言ってな。空を鳥よりも早く飛ぶんだ。何でもベルヌーイの定理とかで、翼の上と下を通った空気が合流することで浮力を得るんだとか。すごいよなぁ」


 「…お前、何を言いたい。それがどうしたと言うのだ!」


 死神さんはマジギレだ。てか口調荒々しすぎだろ。俺あんまり強く言われるの嫌いなんだよなぁ。


 てか、それがどうしたって?どうもしねぇーよ。さっさとイライラして俺を殺してくれ。俺にはあんたを納得させる考えがないんだわ。


 「どうしたってねぇ。すごいなぁって話だよ。あんたは知ってたのか?ベルヌーイの定理」


 「知らんわ!そんなモン!」


 めっちゃイライラしてるなぁ…まぁ、こんな状態になってふざけるやつなんていないからな。もしふざけるやつがいるなら、不死身か力に自信があるやつだ。そして俺は前者、すなわちどう転んでも美味しいはずだ…多分…


 「あぁ…一つ言っとかないとな」


 「…」


 死神は何も答えない。


 「何で名乗る必要があったのかって聞いたよな?名乗ることで俺は死ななくなるのさ!どうだびっくりし…」


 ビンゴ、首を切ってくれてどうも。そりゃ死ななくなるって言えば確認したくなるよなぁ。さらにイライラが溜まったところにこんなこと言われちゃぁ…殺したくなるはずだ。あーよかった。俺が弱くて。舐めてるわけじゃなく、自力で上に立っているからこその行動が最高だ…



 「…ッ!はっはっはぁぁぁ…ふぅ」


 お、ちゃんと発動してるっぽいな。死神の部屋の前じゃん。多分名乗る直前ぐらいに戻ってるだろうな。


 「死神ーでてこーい」


 返事はなしか、でもどうせ代わりに殺しにくるからいいか。


 「お前、何をした?私に何を植えつけた!」


 うおっ、すげぇ殺気みたいなのがわかる。空気が振動してるみたいだ。クリスの比じゃねーな。こりゃ。


 「しらねぇなぁ。もしかして、俺を殺せねぇのかぁ?」


 とりあえず、威嚇しとこう。こうゆうのって臆した方が負けみたいなのよく聞くしな。イキリヤンキーみたいになっちゃったけど大丈夫だろ。


 「…あぁ、何故かなお前を殺した記憶がお前を守ってるみたいだ」


 「そうかい、それは気の毒だなぁ。俺を殺しちまったみてぇだ」


 てか、何で俺を殺した記憶が俺を守ってるってわかるんだ?クリスの時もそうだったけど、殺すな的なメッセージでも出てんのかよ。


 「それよりだ、俺は斉藤佑樹。お前と同じ異界人だ。とは言っても場所違いだけど」


 「だから、何だってんだ」


 「そりゃ、手を組もうって話だよ。こんな所にずっと居たくないだろ?俺は嫌だからな。一緒に脱獄しようぜってお誘いだ」


 「…それは無理な相談だ。第一お前からは強さが感じられない。強者には特有の雰囲気があるものだ。それが一切ないお前と脱獄などできないと思うがな」


 なんか、達人みたいなこと言い出しやがった。特有の雰囲気ってなんだよ。何だかクリスがだんだん小物に見えてきたぞ。コイツの強者ですよ感に比べたら、可哀想だがクリスがかませじみてきちまう。どっちも俺より強いのは変わらないけどな。


 「そうゆうなって。とりあえず話だけ聞いてくれよ」


 とりあえず、第一目標の記憶植え付けが達成したんだ。こうなったら何でもやってみて、仲間というか協力を仰げるぐらいにならなきゃな。二回か三回の死が無駄になると悲しいし。






 『能力者の名前を知る殺害者が二人になりました。【バックウォーカー】起動します』

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