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深淵の新人歓迎会


 「今日からここがお前の家だ。同居者とは仲良くするんだな」


 そう言って俺は窓のない石壁で囲まれた部屋に入れられた。中は大体四畳半ほどの大きさで、二段ベットがあるだけの部屋だ。


 「おい、新入り。私はクリス。『千人殺し』のクリスだ」


 『仙人殺し』?聞いたことないがおそらく有名な仙人殺したんだろ。信心深い奴らはブチギレたんだろなぁ。髪が腰ぐらいまで伸びていて燃えるように赤い髪をしている。顔はクール系だ。俺の好みだな。


 「俺は斉藤佑樹、異界から召喚されたものだ」


 「異界からだって?!そりゃまた珍しいやつが来やがったなぁ」


 「王様が俺にキレちゃってね、それで一発アウトになっちゃったんだわ」


 多分こうゆうところだったら敬語とか使わない方がいいんだろうなぁ。クリスの反応からやっぱり異界の存在は広く知られているみたいだが、監獄にぶち込まれるようなやつはあんまりいないっぽいな。


 「へぇ、何やらかしたのか気になるぜ。そういえば話変わるが、ここには異界から来たやつがもう一人いるぜ。女だけどな」


 「マジで?いいこと聞いたわ。サンキュー」


 思ったより異界から呼ばれている奴は多いかもな。それより異界の奴が地球かそれ以外かで話が変わるな。もしかしたら地球以外からも召喚してるかもしれない。それだったら結構面白いよなぁ。


 「礼はいらねぇよ。それより情報をくれてやったんだ。お前の能力を教えろよ」


 おや?まずいなぁ。これって格付け決まるくね?正直に【バックウォーカー】の事言ってもなぁ、舐められるだろうなぁ。でも、強い能力言ってもバレるに決まってるからなぁ。


 「俺の能力は過去に戻る力だ」


 よし、これが最適解だろ!嘘言ってないし、戻ったら記憶も変わる的な設定にしたら問題なし!


 「ふぅん?そんな力あるなら何でここにいんだよ。捕まる前に過去に戻って逃げればこんなとこ来ないはずだよなぁ?」


 「俺が捕まるという事象は決定してしまったからな、俺の力は決まってしまった未来を変えるためには使えないのさ」


 なかなか痛いところついてくるなぁ。咄嗟に考えた出まかせだ。これで納得してくれたらいいが。


 「よし、一つ特別にタダで教えてやる。ここではな、ルームメイトは二つに分けられるんだ。何でって?それは行動を共にするからな。ルームメイトってのはそうゆうものなんだ。ここじゃあ。それでな、二つに分けられるってのは、使えるやつか、生ゴミになるやつさ。お前は後者だぜ、嬉しいだろ?」


 「なっ!やめ…」


 クリスは俺との少しばかりあった距離を瞬時に詰め、俺の首に手を置いた。その時俺の首は無くなった。正しくはだるま落としみたいに首だけが吹っ飛んだ。痛みは一瞬、体が麻痺して電源が落ちる寸前のような感覚になる。


 「タダってのは嘘だったわ。冥土の土産ってやつだな」


 クソ…そんなのどうでもいいわ。最後に聞いたクラスの声は少し笑っていた。そして視界にはベットの下が見えた。薄暗いがよく見ると血のようなものが床に滲んでいる。


 はは…次はここにはこねぇ…今までで一番の死に方だぜ。








 「ああぁぁぁあ!はっ!はっ!ふー、よし首あるな」


 なかなかにショッキングな死に方だったな。絶対あそこにはいかねぇ。今回もカテキョルートいくか?でもなぁ、またバレてタルタロス行きだろうしなぁ…


 「おい、新入り…お前薬中か?」


 「…ク、クリス?」


 「…この『千人殺し』のクリス様を知ってるタァ嬉しいね。ただ私は顔は知られてないと思うんだけど?」


 どうなってる?召喚まで戻るんじゃないのか?ここはタルタロス監獄なのか?クソ!訳わかんねぇ…


 「たまたまそう思っただけだ」


 「ふぅん?だけどヨォ、あやしいなぁ?疑わしきは罰すってな!」


 そう言ってクリスは俺の首を前回と同じように掴んだ。


 あぁ…また死ぬのか?これで召喚された瞬間まで戻れるならそれでもいいか…


 しかし、一向にクリスは俺の首を飛ばそうとしない。さっきは一瞬で吹っ飛ばしたくせにだ。むしろ少し震えているように見える。顔は少し恐怖を含んでいるようだ。


 「…おい…お前何もんだ!何で私に()()()()()()()()があるんだ!精神作用系能力をつかったな!」


 「…は?」


 「惚けてんじゃねぇぞ!私がお前を殺そうとしても殺した記憶が、お前を殺させないんだ!」


 何が何だがわかんねぇ。俺のリスポーンは王城のはず、そこで一ついつもと違うのに、前回俺を殺したクリスが、殺した記憶を持っている?そして、それによって俺を殺さないだと?もしかして、今まで全ての俺を殺した奴らは俺を殺したことを覚えてるのか?いや、前回の殺しだけ引き継がれるのかもしれない。けど、一つだけわかることがある。クリスは俺を殺せねぇってことだ。


 「…俺の能力は精神作用系じゃない。俺は殺された時一定の時まで時間を巻き戻す能力【バックウォーカー】だ。何でクリスの脳みそに俺を殺した記憶があるかって?それは前回俺を殺したからさ!そして俺を殺したことがある奴は俺を殺せなくなる、それが俺の力だ」


 ハッタリは余裕がある時か、危機一髪って時に使うもんだ。交渉ごとは自分を大きく見せて相手を小さく萎縮させたもん勝ちだからなぁ!


 「…はぁ?ありえねぇだろ?そんな能力、ず、ズルだ!ふざけてるだろ!」


 「ちなみに言うとな、俺は斉藤佑樹、異界から召喚されたものだ。…そうそう、前回お前に教えてもらったよ。ルームメイトは二つに分かれるってな。使えるやつか生ゴミになるやつ。お前は今回どっちかな?クリス」


 リスポーンが変わった理由はわかんねぇが、【バックウォーカー】の力がようやく分かり始めてきたな。とりあえず、王城でカテキョルートから、監獄でインキャルートに変更だ!


 クリスをどうにかしてもどうせ俺は弱いから端っこで目立たないように過ごしてやるぜ!

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