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試験を軽々突破しよう


 しばらくして俺はなんかさらに偉そうな人の前に跪いていた。


 「斉藤佑樹、異界のものよ。お前の知識を聞くだけでは我々には判断がつかない。故に試させてもらおうと思う。よいな」


 「はい、よろしくお願いします」


 よっしゃー!俺の考えてた中で一番いい感じじゃね!この世界の教育レベルなんてたかが知れてるんだから、余裕だぜ。


 「それでは、これから問題を作ろう。そのため明日改めて話そうじゃないか。我らのために知識を使おうとする若者に、皆拍手を」


 パチパチ パチパチ


 周りから拍手が聞こえてくる。俺に向けられていると思うと、拍手も気持ちいいものなんだと感じる。


 しかし、明日改めて話すということは、明日で全てが決まるということでもある。俺が使えるやつか使えないやつかの選別が。俺が目指すのは使えるやつでも『便利で扱いやすい優秀なやつ』だ。そんなやつなかなかいないだろうが、真面目で素直な秀才を演じることで騙せるだろう。相手も俺から搾り取れるだけ取ろうとするはずだ。俺の底を見せた瞬間捨てられると言っても過言じゃない。これからはもっと気を引き締めなければならないな。


 「では、ついてきてください」


 騎士に言われるがままついていくと、クラスメイト達が集まっている大広間に案内された。初めての経験に少し興奮している。よく見るともともといたはずの数人がいなくなっている。俺と同じようにザコ能力者は追い出されていたらしい。俺だけじゃなかったってのはなんか嬉しい。


 「斉藤、どこいってたんだよ」


 「別にちょっと話してただけさ。ところでお前の能力なんだったんだ?柏木」


 俺に話しかけてきたのは柏木颯太、気のいいやつだ。


 「いやぁ、あんま良くなくてよ。【分解】だったわ。もっと派手なのがよかったわ」


 「へぇー、でも強そうじゃん」


 【分解】過去十年で一人しか現れていない能力だ。その効果は触れたものを最も小さい位まで分解する。Aランク能力だ。一応上にはSランクがあるっちゃあるが、十二分に上位の能力だろう。七、八、九と情報収集にだけ努めてよかったぜ。この世界では能力の有無は人生を決めることだから、あらゆる文献がそこら辺にあるのは好都合だったな。


 「斉藤は?」


 「俺は【思考加速】だ。まぁ非戦闘能力だから地味だぜ」


 【思考加速】これも時々現れる能力でBクラスだ。効果は考えるスピードを上げるというそのまんまだ。馬鹿正直に【バックウォーカー】だって言ってもいいが、なんで俺が偉い奴らと話すのかってなると、こんな感じの事務に向いてる系の能力を言ったほうが納得されやすいだろうしな。


 「そっか、まぁ強すぎてもなぁ…こき使われるだけだしな」


 そう言って柏木はいわゆる一軍グループ達の方を見た。


 「見ろよ、不平等だよなぁ。顔も良くてさ能力も強いんだから」


 「マジで?全員強いのか?」


 「おうよ、日比野は【聖剣の担い手】って能力らしくてバカ強いらしいし、榊原は【バニッシュ】で、どんな能力でも無効化できるらしい。そんな感じでみんな強いんだよ」


 【聖剣の担い手】【バニッシュ】は聞いたことない能力だ。俺の知識が完璧じゃないから普通にAランク能力かもしれないが、異界の存在にしか出ないSランクかもしれないな。どっかで聞いたが、SランクのSはスペシャルのSらしいな。


 「あっ、斉藤くん。どんな能力だったの?」


 「加藤さん、俺は【思考加速】だったよ」


 加藤さん、俺が能力を知っている数少ないクラスメイトの一人だ。実際に能力を見たのは彼女を含めて数人だ。彼女の能力は確か雷を操る的なやつだったけど、実際はどうなんだ?


 「私はねぇ、【雷の血を持つ者】だったよ。なんか一人だけ長いんだよねぇ」


 「でもかっこいいね、なんか強そうだし」


 というか、この世界のの能力の名前が、漢字なのか英語なのかはっきりして欲しいだけどなぁ。なんかよくラノベはどっちかにするはずだろ?


 「そういえばさ、なんか生産系の能力持ってるやつっていないの?」


 「あー、あそこにいる橋本さんが、そんな能力だった気がするけどなぁ」


 「私もそう聞いたよ」


 柏木と加藤が指差す先には、ちまっと部屋の端に立っている小柄な女子生徒がいた。


 「橋本さん、ちょっといい?」


 「…はい、なんですか?」


 なんか、よそよそしいなぁ。まぁ、元の世界でも全然話してないから当然か。


 「あのさ、加藤さんとかから橋本さんが生産系の能力持ってるって聞いたんだけどほんと?」


 「ほんとです。私の能力は【性質変化】です。物に機能をつけれるらしいです」


 「そんなんだ。強そうだなぁ」


 大当たりだ。【性質変化】はAランク能力で、俺が一番欲しい能力だぜ。橋本さんに助けてもらったら銃なんてすぐ作れる。雷管を作れるかがネックだったがこれなら問題ない。


 「ちなみに俺の能力は【思考加速】だ。頭の回転が早くなるだけだから、羨ましいなぁ」


 「そんなんだ」


 うーん、会話弾まねー。こいつは強敵だな。どうすりゃええねん。ツッコミしたろか?俺の関西魂(嘘)が疼いてるぜ。


 「ちなみに、俺はこの召喚は十回目だ」


 「…え?」


 「加えれば、俺は九回死んだ」


 「いったい何を言ってるの?」


 …間違えたあぁぁぁ!なんとなく思いついたのがカミングアウトってダメだろ。一番ダメな選択肢選んじゃったよ。もうどうなでもなれ!


 「俺はもうこの召喚を繰り返したくない。この戦いを確実に終わらせたいんだ。だから橋本さん、君が欲しい。俺についてきてくれないか?」


 「…告白ですか?」


 あれ?なんか橋本さんが顔真っ赤にして下向いちゃった。告白だと?そんなこと言ってないけど………あっ、『君(の力)が欲しい』って言ったわ。大事な言葉忘れてた。これだから俺はダメなんだ…計画立てなきゃ、思い通りにいかないんだよ…


 「…わかりました。よろしくお願いします」


 「えっ、よろしく」


 反射でよろしく返ししたけど何がよろしくなんだ?


 「じゃあ、これから佑樹くんって呼びますね」


 もしかして、告白のオッケーって事なのか?


 そうして俺は初めての彼女を手に入れた。明日の不安と共に。

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