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死んでも戻るからって死にたいわけじゃない


 「よくぞ、答えてくれた。異界の勇気ある若者たちよ。ここはスラン国、今この世界を救ってもらうために君たちを召喚した」


 ざわざわ、ざわざわ


 周りがすごくざわめいている。まぁ、そらそうだわ。俺たちはさっきまでサッカーしてたからな。そのせいで今着てる服が少し汚くなった体操服だから。こうゆうのって朝の教室とか休憩時間にするくね?もういいんだけどさ。


 「はぁ…十回目だ」


 俺はこの光景が十度目だ。今色々と王様の隣で騎士団長のクライスさんが話しているけど大体こんな感じだ。この世界には神と邪神がいると、そしてこの世界には神の寵愛を受けた7つの種族と、邪神の寵愛を受けた魔族という、合計八つの種族がいるとこの中にはラノベとかで人気なエルフとか獣人とかがいる。そして魔人は自分たち以外の種族をを滅ぼそうとしている。だから助けてくれって話。


 なんで俺らみたいな地球人を呼ぶのかっていうと、なんか異界からこの世界にから時に、狭間を越えるために力が付与されるらしくて、その力はこの世界の現地人が持つ力より優秀なものが多いからだとさ。


 それでみんなすげーかっこいい能力持ってんの。ビーム出したり、なんか明らかに聖剣って感じの剣召喚したり、化け物操ったりやばいのよ。


 それでまぁ、俺も能力もらえたよ。その結果がこの3回目の召喚ってことなんだけど、わかる人にはよくある能力だって思われるし、強いんじゃないって思うかもしれないが、俺の能力は【バックウォーカー】いわゆる過去に戻れる能力だ。一応知識とかは保持したまま戻れるけど、発動条件は死ぬこと。それ以外じゃ何もできない。ちなみに初めて死んだのはこの召喚された日の2日後だ。この世界では後天的に能力を得る方法はなくて、せいぜい体を鍛えるだけ。そんな世界で俺は元の世界とおんなじまま来ちゃったわけで、すぐ死んだわ。


 死を味わった感想としてはあっさりしてるもんだと思った。確かに死んでここに戻ってきた時、みっともないぐらい叫び喚いたよ。首を通っていく物体の冷たさと自分の血液の温かさ、それを感じた瞬間に弾け飛ぶ意識。正直、アニメとかそんな感じで死を感動的で残酷なものだって思ってた。けど、ただ当たり前に存在する終わりでしかなかったんだ。


 実を言うと、俺は初め自分が主人公なんじゃないかって思ったんだわ。よくあるだろ?ループ系主人公的なやつ。過去に戻って対策して攻略していく。しんどいだろうけど、最終的に英雄になるやつだ。でも、そんな考えは二度目でなくなったな。この世界の強者は能力で決まる。使い方とかは少しは影響するが、この世界にはみんなが使える魔法みたいなものもないし、鍛えたところで、身体強化の能力に勝てない。


 さらに言えば、俺の9回ある死は全て召喚されてから十日以内に起こっている。俺みたいなザコは標的にされやすい。それとこのあと能力診断的なことをするんだが、そこで俺だけザコ能力だから戦うのに不向きってことで、お金を渡されて暮らすように言われるんだな。まぁ、お荷物はいらないってことだわ。その渡された金を狙う奴らに殺されたり、魔物に殺されたりと散々な目にあった。


 そして俺は気づいたのさ、生き残る方法を。


 「それではみなさんの能力を調べるのでついてきてください」


 メガネをかけていわゆるリケジョって感じの美女、この人はメリー・スクロース。この国の三代貴族のうちの一つスクロース家の人間だ。どれぐらいの地位なのかは知らないが。


 周りを見渡すとやはりみんな落ち着きがない。男子は少し興奮している奴もいるが、女子はひどく怯えているように見えるな。ここもいつも通りだ。


 「ねぇ、斉藤くん。こわくないの?」


 「…こわいよ、すごくね。加藤さんは怖くないの?」


 おかしい…ここの時点で俺に話しかけてくるやつはいなかったはずだ。何かミスをしているのか?それとも俺と似たような力を持っているのか?加藤さんは。


 「それは怖いよ。でも斉藤くんほんとは怖くないんじゃない?ここにきた時からずっと落ち着いてるみたいだし」


 「そんなことはないよ。まだ状況がわかってないだけさ」


 もしかしたら、落ち着いてることが変化を呼び起こしたのかもしれない。これまでの始まり方は、初めはもちろん困惑して動悸も変な感じになった。それ以降も死んだ感触が残ってるもんだから初めより、怯えているように見えるだろうな。だが、今回だけは感覚がない状態の死。それによって異常なまでに落ち着いているように見えるってことか。


 そういえば加藤さんは雷系の能力で強かったような…これはついてる。今のうちに仲良くなっておこう。もしかしたら俺を生かしてくれるかもしれない。


 「それよりも、能力ってなんだろうね?」


 「んー、超能力的なことなのかな?私はピンとこないよ」


 「じゃあさ、加藤さんが強い能力だったらさ、俺を守ってよ」


 「えーそうゆうのって男子が女子守る感じだよね。意気地なしなんだ。斉藤くん」


 「そうなんだよね。だからお願い」


 加藤さんは少し驚いたあと、くすりと笑った。加藤さんはそこまで目立たないけど、クラスで五番目には入るぐらいの美人だからよく似合う。


 「斉藤くんと喋ったことあまりないけど、なんだか不思議な人だね。もっと前から喋ってたらよかったよ」


 「そう?じゃあこれから友達ってことで」


 少々強引な話し方だったが、不思議なやつってことで納得してくれたらしい。こうして口で友達と言っておく。これで少しでも仲間意識ができれば幸いだ。仲間だと思ったら助けたいと思うことがあるかもしれないからね。


 そうして、次々とクラスメイトたちが呼ばれていく。能力が強いやつと弱いやつに分け始めているのも見て取れる。よく見ると二つのグループに分かれているからだ。そして、俺は毎回どちらのグループにも属せなかったわけだがな。


 「斉藤佑樹様、能力を確認するのでこちらにきてください」


 おっ、俺の番か。能力判定は毎回クラスメイトが一人もいないところで行われる。おそらくだが、俺みたいなやつを追い出しやすくするためだろう。毎回この部屋で判定したあとすぐに追い出されているからな。


 「えー、斉藤佑樹様の能力は【バックウォーカー】です。最下級能力ですね」


 スクロースさんは眉ひとつ動かさず告げる。たぶんここで測ると言うのは嘘なのだろう。この人か誰かがラノベでよくある鑑定的な能力を持っているんだろうな。


 「斉藤佑樹様の能力は他の方と比べて戦いに適しておりません。なのでお金を渡します。そして城下町で暮らしてくれませんか?」


 これも何回も聞いたわ。ここで城下町に行ったら死しかないんだからなぁ。城下町といってもメインストリート以外はスラムみたいなもんだから、俺みたいなひ弱なやつは生き残れない。この誘いに乗ることは俺にとってゲームオーバーだ。


 「お待ちください。私はスラン王国に感銘を受けました。私も仲間と同じように王国の礎になりたく存じます」


 周りの騎士もスクロースさんも動揺を隠しきれていない。そりゃ召喚したばかりのやつが、国に感銘を受けただなんて言うはずがないからなぁ。普通はな。


 俺がネトゲで培ったロールプレイを見せてやる。俺の必勝の策は王城で雇ってもらうことだ!

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