第1話 何かお探しですか
静かに開いたオートドアに気づくと、店内にいた従業員はぱっと振り向いた。
「いらっしゃいませ」
ほとんど反射的にそう言ってから、彼は少し戸惑った。
と言うのも、やってきた新客は、あまりこの店を訪れない年齢層だったからだ。
「ねえ」
十一、二歳だろうか。それは栗色の髪をポニーテールにした、可愛らしい少女だった。
「ここ、〈クレイフィザ〉?」
「ええ、そうです」
戸惑いを消して、少年のような外見を持つ〈クレイフィザ〉の従業員はにっこりと答えた。
「よかった。すぐに見つけられた」
にこっと少女も笑みを返した。
「何かお探しですか」
少女の手に封筒のようなものが握られているのを見て、彼は尋ねた。
「拝見しましょうか」
「え?」
「そこに何か、書いてあるのでは」
「うん。書いて、あるよ」
こくりと少女はうなずいた。
「それなら、拝見しますよ」
従業員は、少女が誰か――大人の――お使いできたのだと考えてそう言った。
日常品の買い物とは違う。メンテナンスや修理の依頼にせよ、部品の調達にせよ、まだ子供と言えそうな少女が〈クレイフィザ〉への使いをするには、メモ書きの一枚や二枚はあっておかしくない。
「ううん」
しかし、ふるふると少女は首を振った。
「あなた宛てじゃないから」
「え?」
「ええと、責任者」
考えるように、少女は言った。
「はい?」
少年は目をしばたたいた。
「店主」
「当店の店主が、何か」
怪訝そうに彼が尋ねれば、少女は胸を張った。
「ここの店主。出して。いますぐ」