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木漏れ日の下で婚約破棄を希う  作者: 天満月 六花


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32/41

―アデライン第一王女殿下―


 オズウェル第二王子殿下と話したその日に側近の打診があった事を父に伝えた。


 父は難しい顔をして重い息を吐く。


「……今は様子見しかないだろう。また何かあれば言え。……宰相殿にも伝えておく」


「はい、ありがとうございます」


 宰相から信を置かれている父の言葉に安堵する。やっとしっかり息が吸えたような気がした。


「……オズウェル王子殿下に言った応用できそうな技術の発表はいつできる?」


「もう準備を進めております。エルヴィス王子殿下にも協力頂いて最短で発表するつもりです」


「それがいいだろう」


 父は頷いた後、大きく息を吐いた。父でも王族からとなると対処を悩むのだろう。


 オズウェル第二王子殿下に会った後、研究棟にいたエルヴィス殿下に会った。オズウェル第二王子殿下に言われた事をエルヴィス殿下に軽く伝えると、苦しそうな顔で気をつけてくれと言われた。

 エルヴィス殿下とオズウェル第二王子殿下はあまり仲良くはないと言っていた。もちろん表立って対立している訳ではない。


 ……エルヴィス殿下はオズウェル第二王子殿下は自分が王族としてではなく、研究者として立っているのが気に入らないのかもしれないと……自嘲交じりに言っていた。


 オズウェル第二王子殿下はそれぞれの立場に合った功績を求める方なのかもしれない。


 どうするべきかと俺は思考を巡らせながら、父の執務室を後にした。


 ***


 それは俺が魔力変換術式を学会で発表してすぐの事だった。


 王立学院の授業が終わり研究室へと向かっていると、背後から話し掛けられた。


「もし、あなたがディオン・ユーフィリウム様、でいらっしゃる?」


 その声に振り向くと、オズウェル第二王子殿下より金色が濃い白金の髪、王家の人間に現れやすい青と金、銀が混じる不思議な色の目を細めて優雅に微笑む女性と剣を持った護衛騎士と侍女。


 その女性を見て俺はすぐさま頭を垂れた。


「……はい、私がディオン・ユーフィリウムでございます。アデライン第一王女殿下に直接お声掛け頂くとは光栄です」


「まあ、ありがとう」


 優しげな声ながらも、王族の威厳が感じられる。


 落ち着こうと深呼吸をする。

 アデライン第一王女殿下は俺の二学年下だ。接する機会などなかった。

 暫く前にオズウェル第二王子殿下から声を掛けられてのこれだ。正直何かあるのではと疑ってしまう。


 頭を上げる許可を頂き、王女殿下は涼やかな美貌を持ったお方だ。雰囲気がオズウェル第二王子殿下と似ている。


 フィーリアの可愛くて癒されるあたたかい笑顔とは違い、その微笑みには温度は感じない。

 王族だからこその隙を見せない微笑みなのだろうとは理解していても、オズウェル第二王子殿下といい俺に対してあまりいい感情があるとは思えなかった。


 王女殿下は優しげに笑む。


「私、あなたが発表した魔法に興味を引かれたの。詳しく教えて下さるかしら?」


 ひとつ喉を鳴らしてしまった。それでもすぐ頷く。


「もちろんでございます」


「ありがとう。ではこちらに来てもらえる?話が長くなってはいけないからお茶を用意させたの」


 そう言って歩き出す。

 断る選択肢など存在しない。


「……かしこまりました」


 王女殿下に付いていくと中庭にお茶と茶菓子が用意されていた。


 ……正直ここで茶を飲むよりも早くフィーリアの元へ帰って一緒にお茶を飲んで癒されたい。今日は研究室に寄るだけにして早く帰ろう。フィーリアの病状を観察しないといけないし。……本当はフィーリアに早く会いたいだけだけれど。


 しかしそんな事を言えるはずもなく、王女殿下の質問にひとつずつ答えていった。


「興味深い話が聞けたわ、ありがとう」


「いえ、お役に立てたのであれば光栄です」


 かなり警戒していたが質問は多岐に渡り、最後には「新たな魔法を発表した者として、魔法普及に関する留意事項はあるかしら?」と聞かれ、何点か答えておいた。

 ただ新しい術式がどのようなものなのか本当に気になっただけなのだろうと思って安堵する。


 そんな俺に、王女殿下から更に声が掛かった。


「あなたには婚約者がいらっしゃるのね」


「……はい」


 世間話なのかもしれないが、少し緊張が走った。

 以前オズウェル第二王子殿下からフィーリアの事について言及されたのでどうしても警戒してしまう。


 王女殿下は感情を見せない微笑みを浮かべた。


「ふふ、婚約者の為であればどんな事でもできるのかしら?」


「もちろんです」


 その質問には即答する。

 どんな事でも叶える為に、俺は研究を続けてきたのだ。


「まあ、お熱いこと。……いつか会ってみたいわ」


 目を伏せながら言った最後の言葉だけは、なぜか何かしらの感情が見えたような気がした。


「…………はい、いつかお会いできる機会があれば……紹介致します」


 どんな感情かまではわからなかったが、俺は考えた結果そう答えた。


「ふふ、ありがとう」


 アデライン王女殿下は、最初俺に話し掛けてきた時と同じように優雅に微笑んだ。



読んで頂きありがとうございます。

土曜日に更新できず、遅くなって申し訳ないです。

これからも読んでもらえると嬉しいです。


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