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木漏れ日の下で婚約破棄を希う  作者: 天満月 六花


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染み込む不安


「もう暑くなってきたわね……」


 そうマリーに話し掛ける。


「ええ、暑くなってきました。あまり外に長い時間は出られませんね」


 橙色に染まり始めても強い光を放つ太陽をサンルームから眺めながらマリーの言葉に苦笑した。


「わかってるわ、マリー。出るとしても少しの時間だけにするから」


「あまりご無理はなさいませんようにお願い申し上げます」


 にっこりと笑って言ってきたマリーに頷いた。


 そしてまた外を見る。門はまだ動いていない。


「ええ……。…………今日もディー、遅いわね……」


 眉を下げて門を見つめる。ここ数日、ディオンは帰って来るのが遅い。いつもは私に魔力渡しをする為に早めに帰って来てくれていた。

 研究が遅くまでかかりそうな時でも、先に私に魔力渡しをしてからまた研究室に戻っていたのだ。


 そんな時は私の魔力渡しはあとでも大丈夫だし、父にしてもらってもいいとは伝えていた。けれどいつもディオンは俺が早くフィアに会いたいし魔力渡しをしたいし、それにむしろフィアの顔を見てからの方が研究を頑張れるからこれでいいと言ってくれていた。

 別に遅くなるのは構わない。でもディオンが遅くなると伝えてくれていない事が気になる。

 ディオンは私を不安にさせないようにしてくれているから、もし遅れそうだとしたら先に伝えてくれるはずなのだ。


 それに他にも気になる事がある。


 門が開いていくのが見えて、そちらに視線を向ける。待ち望んでいたはずなのに私は顔を曇らせた。

 ディオンはゆっくりと門を通る。顔は伏せていて表情がわからない。


 胸が嫌な音を立てた。


 最近のディオンは走って私に会いに来てくれない。いつも恥ずかしくなるくらい、嬉しそうに私の元へと来てくれていたのに。

 そして門を通った後もすぐに私の所へは来ない。

 防護魔法が掛かっている父の執務室にディオンが行っているのは知っている。父と何かを話しているのだろう。


 私は手元の紙を見る。


 ディオンとの婚約を強固にする為に、私自身の功績を残す試み。


 ディオンと一緒に考えた、映写魔法を立体的に映し出す魔法理論。

 私が魔石に刻んだ術式を発表しようと言ってくれた。


 あくまで写真から読み取れる情報を立体化するような術式にしてね、と口酸っぱく言っていたディオン。

 それはつい一週間程前だというのに。


 思わず眉を下げると、マリーが背中を優しく撫でてくれた。優しい微笑みに私は弱く微笑み返した。


 暫くしてサンルームの扉が開いた。


「フィア……ただいま」


 弱々しいディオンの微笑みに、立ち上がって近くに行く。


「ディー、おかえり。大丈夫……?」


「……大丈夫だ。ごめんね、今日も遅くなってしまった……。早く魔力渡しをしよう」


 ……また同じ言葉で返される。

 ここ数日はこんな風に明らかに元気がないのに、私に何も言ってくれない。


 数日前から国王陛下に帯同してルディウス様とユーフィリウム侯爵家の跡継ぎであるディオンのお兄様が友好国へと行かれているけれど、関係はあるのだろうか。

 ルディウス様は宰相補佐なので今回は宰相代理として友好国へと赴いている。ディオンのおじいさまが今は領地を治めているので、その間は人脈作りの為に王宮で働いているのだ。私の父もそうしている。

 祖父も祖母も存命だけれど、領地を治めてくれている為に年に一度程度しか会えていない。領地への旅路は長くなってしまうので私は行くのが難しい。

 ルディウス様が宰相代理として行っているのは宰相は国王陛下がおられない間、国を治める役目があるからだ。今回は王太子殿下も行かれているので宰相まで国を離れられないだろう。

 ディオンのお兄様はこれからの勉強の為らしいけれど、きっと若くてもそれなりの地位を得ているとは思う。ディオンのお兄様も優秀な方なのだ。


 けれど……恐らくルディウス様やお兄様がいないから、だけではないと思う。ディオンは休暇にも領地へと帰らずに私と一緒に居てくれるから、家族がいない状態はそれなりに経験しているはずだ。

 それに寂しい感じじゃなく、もっと苦しそうな感じだ。


 そっと魔力渡しをしてくれているディオンの頬に触れる。


 ディオンは触れている私の手を片手で包んで、緩く笑んだ。


「……フィア、魔法薬は……どう?」


「少し……週に使う回数が増えたけれど……問題は起きていないわ」


 私の言葉にディオンは安堵したように顔を緩めた。


「そっか……。わかった」


 そのディオンの表情に、心の奥が軋む。


 さっきまで晴れていたのに急に弱い雨が降り始め、少しすると何もかもを覆い隠す程の大雨が降っていた。感じた不安は心の奥に染み込んだ。



更新が遅くなって申し訳ありません。

また読んで頂けると幸いです。


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