望み
ディオンが抱き締めてくれるのを心地よく感じていると、そっと頭を撫でられる。
「……ねえフィア。とっても嬉しいんだけどね……一つ聞かせてくれる?」
「なあに?ディー?」
「なんで……映写魔法が立体的に映し出されているんだ……?」
ディオンの問いに私は得意気に笑った。
「これはね、ディーに喜んで欲しくて頑張ったの。普通の映写魔法の術式に見えるように落とし込むのがなかなか難しかったわ」
この魔法は……いつか……私がいなくなったらと思いながら作ってしまった。
だから……私が少しでも傍にいると感じて欲しい為の、我儘な私の魔法。ディオンにずっと私を覚えていて欲しいと願った、私の切望の魔法。
そんな私の想いは、ディオンは知らないままでいい。だって映写魔法ではない本物の私が、ずっと傍にいたいから。
ディオンは私の言葉を聞くと遠い目をした。
……この感じはまたディオンを困らせることをしてしまったらしい。少し目を伏せる。
「……フィア、普通の映写魔法に見えるようにって……何……?」
「ええっと……普通の映写魔法の術式じゃないと……また着けてもらえないかと思って……。ちょっと……普通の映写魔法の術式に見えるように……小細工を……」
もしかしてこの小細工がよくなかったんだろうか。
ディオンが頭を抱えた。よくなかったらしい。
「……フィア、それはどうやってるの……?」
「…………普通の映写術式の中に……極小で……映像を立体にできる術式を入れ込んだの……」
ディオンが両手で顔を覆う。
なんだか私が魔法を使い始めてからこんなディオンをよく見ている。
もっと魔法に関する常識を身に着けないと駄目ね……。
ディオンとこの先も一緒にいる為だ。あまり突出した能力を見せない方がいいんだろう。
守ると言ってくれている父やディオン、ルディウス様達にもあまり負担は掛けたくない。
ディオンはじっと魔石を見ている。
「極小の術式……?……どう見ても普通の映写魔法の術式にしか見えない……。いや……映像や写真を映す術式はそれぞれ情報が違ってくるから……そこに入れているのか……。そうであれば見咎められない……」
流石ディオンだ。私が言っていないことまで推察して当てていく。
「ふふ、流石ディーね」
笑いながら言うと、呆れたように溜め息を吐かれる。ディオンから溜め息を吐かれる事が今日は多くて少しだけ落ち込んだ。
ディオンが私の頬を撫でる。その仕草に顔を上げて、ディオンの空色の瞳と目を合わせた。
「フィア、落ち込まないで。溜め息を吐いてごめんね。ただ……フィアは本当に魔法の才能があり過ぎてね……どうやってその凄さを漏らさないかを考えているんだ……」
難しい顔で言ったディオンに首を傾げる。
「私は信頼してる皆の前以外では魔法を使わないわよ?」
そう言った私にディオンは優しく微笑んだ。
「先の話だよ、フィア。フィア、魔道具師に興味を持っているだろう?フィアのしたい事、応援したいんだ」
目を見開いた。
ディオンはいつも、私の未来の事を考えてくれている。
「もちろん、他にしたい事ができたらそれをすればいい。どんな事でも俺はフィアの力になりたいから」
目が潤む。私はディオンの優しさにどうやったら報いる事ができるのだろう。
「ディー、ありがとう……。いつも、色々と考えてくれて……ありがとう……。私ね……今は魔道具師に……興味を持っているの」
ディオンにちゃんと伝えていなかった、私の……未来への、希望。
言わなかったのは……きっと実現まではできないのだと、諦めていたから。
零れた笑みと涙に、ディオンが額を合わせて柔らかく笑う。
「そうか。きっとすごい魔道具師になれるよ。…………それまでにどのくらいフィアの能力を人前で出してもいいかを考えておくから……」
「ふふ、私もちゃんと、家庭教師の先生やディーから言われた事をしっかり守るわね」
「ああ、そうしてくれ」
柔らかく笑ったディオンの笑みに吸い込まれそうになる。
「フィア」
軽く私の涙をディオンの親指が拭き取った。
空色の瞳に私が映っているのが見える。
暖かい光が降り注ぐ中で、私とディオンの距離がなくなる。
私の瞳の若葉色に彩られた季節に、私達は初めての口づけを交わした。
木々が青々と輝く季節を待ち侘びるように、未来への希望を持ってディオンと笑い合った。
昨日は更新できずにすみません。
読んで頂きありがとうございます。
これからも読んで頂けるとうれしいです。
タイトルを書くのを忘れていました……。すみません。




