P19 学園祭と弱い心
今日は学園祭の日。
私は朝早くから身支度を整えて、学園へと足を急がせる。
玄関先の鏡で姿をもう一度確認する。
きらびやかなピアスに、少し薄めの化粧。
ギャルになってからしばらく経った。いつの間にか焼けた肌も元の色を取り戻していた。
夏休みに海に行ったことが1か月前だなんて、驚きだ。
髪もついこないだ美容室に行き元に戻した。黒髪にしてある。
少しカールをかけた髪をハーフアップにして前髪を整えている。
服装はオフショルの白にキュロットスカートを合わせたコーデだ。
少し垢抜けた女子大生と言ったところか。このぐらいがちょうどいい気がした。
やっと自分の見た目がちょうどよくなったような気がして少し笑えてくる。
「行ってきます……あれ?おにいもお出かけ?」
私がいち早く家を出ると踏んでいたが、身だしなみを整えているおにいに視線が行く。
「ああ、昼からな。」
「あっ!デートだあ!」
「はは、まあそうなるのかなあ。」
明らかにいつもよりも気合いの入れた服装に見慣れないアクセサリー。
シズ姉とお出かけであることは明らかだろう。
「ちゃんと、決めてくるんだよ!」
私は思いっきりおにいの背中を叩き鼓舞する。
きっといつもとは違う。
もういい加減付き合う覚悟が決まったのだろうか。
例えそうでなくとも、おにいにはシズ姉が合っている。
病気のこともしっかりと受け止めてくれるあの人なら安心だ。
「いってて。わかったよ、そっちもしっかりな。」
呆れつつも笑ってくれるおにい。少し曇ったような笑顔で見送ってくれる。
「ん?なに?」
何か言いたげなその表情に疑問を浮かべてみる。
おにいは私の疑問符に対し、躊躇うような表情を見せるが、切り替えるように振り払う。
「……ううん。澄らしく……な!」
「ん?……うん!行ってくるね!」
「おう!」
ーーーーーーーー。
私は待ち合わせをしている修司にメッセージアプリで連絡をする。
『今から向かうね!』
『りょうかい!まってるよー』
「ふふ、もう着いてるんだ?ノリノリじゃん」
私は高鳴る気持ちを少しばかり抑えるが、にやけてしまう。
だが、すぐに修司の下に表示された『メイ』『想』の名前にやや気落ちする。
あれから2人ともずっと連絡を取れていない。
想はなんだかんだ連絡はかえってくるが、以前のような関係ではなくなっている。
当然と言えば当然なのだろうか。
「別れたんだもんね…」
ポツリとつぶやく言葉。どこか寂しい気持ちはある。
メイちゃんに関しては海の一件以降一切連絡が取れない。
私は相当な地雷を踏んでしまったのだろう。
いくら電話、メッセージをおくってもかえってくることはなかった。
「本格的に嫌われちゃったな」
でもだからこそ自分の間違えに気がつけた。
私は馬鹿みたいに自分の心に正直でいることしか出来ない。
揺れて揺れ続けている。
何度も考えが変わって、優柔不断で、周りのことなんて考えていない。
だからこそ私は嘘なんて、取り繕うなんて、駆け引きなんて、演技なんて、向いていなかった。
正直な私に戻るんだ。
きっとそれが、シズ姉が本当に伝えたかったことだと思うから。
考えてみれば、修司と距離が空いたのは演技を始めたあたりからだ。
『ありのままのあなたで向き合いなさい』
その言葉の意味が今になって染みてくる。
遅いかもしれないけど、嘘偽りのない私で戦うからね。
ーーーーーーー。
「久しぶり、澄。じゃあ行こうか」
待ち合わせ場所の駅に着くと、偉く周りから浮いている美少年が立っていた。
間違うはずもない修司だ。
「お待たせ!いこっ!」
挨拶を終えるとゆっくりと歩みを進める。
クリーム色のカーディガンに白のインナー。
オーバーサイズのカーディガンが可愛らしさを演出し修司の魅力を引き出している。
「髪戻したんだね。前のも素敵だけど、今日は一段と素敵だね。」
優しく微笑み今日の私を褒めてくれる。
修司の否定しないこういうところが好き。昔と変わってなくて安心する。
「ホント〜?嬉しいなあ!修司のカーディガンも可愛いじゃん!」
「それは良かったよ。今日のために準備してきたんだよ」
「え〜!気合い入れてきたってこと?」
「そ、そうなる…かな。えへへ。」
なんという破壊力のある笑顔だろうか。あざといはこのことを言うのではないか。
恥ずかしくてこっちまで赤面する。
はあ、かわいい。
ーーーーーーー。
学園に着くと想像以上の賑わいだ。
「すっごい、人!」
どこを見ても視界に人が入る。
首をブンブン振っていると軽く人に酔いそうだ。
多くの出店や派手な装飾の看板、大盛り上がりでお店へ勧誘する生徒の様子。
とても楽しそうだ。
「クラスの出し物とかって修司はあるの?」
つい疑問に思ったことを口にする。
いくら一般公開とはいえ、学校行事だ。やることはあるのではないかと思った。
「あ、うん。サークルの出し物とクラスのメイド喫茶でお仕事あるよ」
「メイド喫茶!!!見たい!!!」
「そっか、なら僕が店番の時おいでよ。」
「店番ってどれぐらい?」
「1時間ぐらいだね。ちょうどお昼ご飯終わってからだよ。」
「そうなんだ!なら私ひとりで1回回らなきゃだね!」
「そうなんだよ〜ごめんね、だから想誘ったんだけどね。」
「ねー!酷いよねー!……なんてね」
「きっと仲直りできるよ」
「うんっ!そうだね!」
チラシもこっており学園内に入ると、ポスターやチラシに目がいく。
恒例のミスコン、漫研の案内、各サークルや各クラスの出し物、お化け屋敷、サークルの紹介、白馬の王子様ショーなんていう変なチラシもある。
「白馬の王子?」
「ああ、それね。ミスコンの後にあるから良かったら見てよ。」
「これが修司のサークルのやつなの?」
「まあ、そんな感じ」
ばつが悪そうな修司。これ以上は詮索しないでおこう。
なんでも出来てこの容姿なのだから、任されるのかもしれない。
彼には彼にしか分からない苦労があるようだ。
それにしても漫研。きになるなあ。
ーーーーーー。
それから私たちは出店のフランクフルトやポテト、たこ焼き、わたあめ作りを行った。
どれも楽しくて時間があっという間に過ぎていく。
謎にポテトを沢山口に含み食べ続ける修司が小動物みたいで可愛かったり。
「もぐもぐ!お祭りと言ったらポテトでしょ!」
「なにそれ〜!詰めすぎだって〜!」
私は猫舌すぎて全くたこ焼きを食べられなかったり。
「あっつ!あつすぎるんですけど!」
「そんなに猫舌だっけ?」
「ほらあついから!食べてみてよ!」
「ちょ!澄!あっつっ!?」
「あははは!ほら〜!!!」
意外と修司がわたあめを作るの苦手だったり。
「なにこれ!はっ!?できない!できないよ!?」
「あははは!なにしてんの!全然巻けてないって〜」
ーーーーーーー。
どれも楽しくて。
忘れていたあの頃を想起させてくれて。
本当に私は修司を高く見ていたんだなって。
勝手に距離を作っていたんだなって。
どこまでも愛しくて。一緒にいて楽しくて。
普通の男の子なんだって。
私が好きになった人の素敵なところが沢山。
ねえ、もっと早くに気がついていればよかったね。
ーーーーーー。
「ふぃ〜!結構回ったね!」
「だね、そろそろ僕行かないといけない時間だよ。楽しくてつい夢中になってたよ。」
「え!もうそんな時間!?」
「もう一個回ろっか。」
「どこか行きたいの?」
「うん。いこう?」
修司は子供のように微笑むと、私の手をそっと掴む。
「ほら、時間ないからさっ!」
「え、あああ!うん!」
駆け出していく。廊下のひとつなのに、景色が煌めいて。
胸が高鳴っていく。
ーーーーーー。
「はい!とうちゃーく!」
「え!ここって。」
目の前に広がる無数の漫画原稿。
展示されている沢山のアニメイラスト。同人グッズのようなものも沢山用意されている。
「漫研!!!!」
「そ!さっき見てたから。行きたかったんでしょ?」
「で、でも。」
私は嬉しい半面どうしても恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
こんなものにハマって、痛い女だと思われないだろうか。
オタク女って思われているのだろうか。
小学生の時から何も変わっていないと呆れられるだろうか。
あの人たちにまた釣り合わないって言われるだろうか。
気持ち悪い、そう幻滅されるだろうか。
「いや、いいよ。あ!ほら!もう時間でしょ!私待ってるから用事終わったらまた連絡して……ね?」
「え?ああ。……そう。そうだね。……じゃあ……えっと、またあとでね?」
ーーーーーーー。
あれからどれだけ経っただろう。
もうすぐ店番が終わる頃かな。
口にした苦いアイスコーヒーは溶けた氷で、かなり不味くなっていた。
「甘いのにすれば良かったな。」
どうして。あんな態度をとってしまったのだろう。
ありのままで、接するチャンスだったのに。
途中までいい感じだったのに。
明らかに空気が悪くなったのをさすがに感じた。
なによりも、修司のあの顔は。
「やっぱり僕にはそうなんだね」
そう言っているようにしか見えなかった。
ーーーーーーー。
修司の学科メイド喫茶に顔を出す。
「おおお帰りなさいませ……だにゃん!……お、お嬢様!」
出迎えてくれたのは猫耳メイドの可愛らしい女の子だ。
短いスカートを必死に伸ばしながら恥ずかしそうに出迎えてくれる。
「(きゃ、きゃわわわわ!!!)」
一気に荒んだ心は癒しを得る。
案内されるまま席につき、甘いクレープを注文する。
「ご!ご注文……ありがとう…なのら!…あっ、にゃん!」
どうやらセリフを間違えたようで、テンションを落としたようにニャンと付け足す。ニャンと驚きの可愛さだ。
いかんいかん。可愛さに夢中になり目的を忘れていた。
周りを見渡し我に返る。
だが、やはり修司の姿は見当たらない。私は落ち込んでいるメイドさんに声をかける。
「あの、修司っていますか?今日一緒に回ってて」
「ひゃい!!!」
「あ、無理しないで、いつも通りでいいと思いますよ?お姉さん可愛いから」
「あ、ありがとう……。その、僕男でして……あはは。」
ぬあああああっ!?
お、男だとっ!?こ、この可愛さで、この可愛さでえええっ!?
いやまて、1度落ち着こう。
私はどうやらフォローに失敗したらしい。その謝罪が、まずは必要だ。
「あ、ごめんなさい。なんか、励まそうと思って……」
「あ、いえいえ!大丈夫です!……えっと、修司だよね!さっき交代したから戻ってると思うけど……」
私に気を遣われたのことに対して焦るように取り繕う。
「あれ、そうなの?連絡なくて」
「あっ、良かったら、探すよ!この後僕上がりだから!」
「あっ!ほんと!助かる!ここ広くてさ〜あ、でもなんか悪いね」
「ううん!大丈夫だよ!僕修司とよく一緒にいるからさ!それにこのあと暇なんだよね!あはは!」
「そうなんだ!ならお願いしよっかな!」
「うんっ!頼まれた!でもその前にクレープ持ってきますね!」
ニコッと微笑むと小走りでその場を後にする。
フリフリとおしりが揺れてスカートがヒラヒラとする。付けしっぱがぴょんと跳ねてとても愛らしい。
「後ろ姿かわよ……」
ーーーーーー。
美味しいクレープをペロリと食べると、別室から着替え終わったメイドさん改め『岸 音子』さんが出てくる。
水色のシャツに黒いズボンとごく普通な格好で現れた。
確かにこう見れば男の子として見れる……かもしれない。
「いこうか!」
「はい!」
まあ可愛らしい声にこの華奢な体、乙女のような顔つき。
言われないと分からないだろうなあ。
ーーーーー。
一緒に岸さんと歩いていると、周りからとても注目されているように感じる。
「あっごめんね。僕といると結構見られるよね。ごめん。」
「うん?別に気にしないよ?沢山人いるからね、見られることもあるよね。」
「え、あ、うん。……ふふ、そうだね。」
「ん?」
「ううん。修司と同じこと言うだなって思って。」
「そうなの?」
「僕こんな見た目だし、名前も子ってついてて女の子みたいってよく言われて。こう、なんだろ。よく歩いてると可愛い〜って見られたり、それはまだマシで。……僕が男だって知っている人は気持ち悪いって……あはは、だから真島さんか嫌な思いしたら嫌だなって。」
自嘲気味に俯いて話す岸さん。
彼なりにここまで辛い思いをして生きてきたんだと伝わってくる。
初対面なのにとても可愛くて、守りたくなるのは確かだ。
何も、彼のことは知らない。
それでも頑張って苦手な女装して、語尾も頑張って挑戦して、見ず知らずの私にも親切にしてくれて。
一生懸命で素敵な人だとそれだけはちゃんと分かる。
「私は初対面だし、気の利いた事言ってあげられないけど……今親切にしてもらってとても気を配ってくれて嬉しいよ!私も見た目のことでいろいろ言われてきたからさ!わかる……とまでは言わないけど。気にしないから!!名前なんて超素敵じゃん!!見た目もとっても整ってる!可愛いって言われるってことは武器だよ!強みだよ!」
私は勢いに任せて言葉を紡いでいく。人に偉そうに何かを言える立場では無いけど。
頑張っている人の力になりたい。人の意見で辛い思いをするのは私が1番経験があるから。
この出会いに意味があると信じて。
「私ね!好きな人に振り向いてもらうためにいっーぱい!自分磨きしたよ!でもそいつ全然振り向いてくれないの!酷くない!?でもね、ようやく素の自分を取り戻せそうなんだ!……ありのままの自分でぶつかってみようと思うの!だから岸さんも!ありのままの自分を好きになってあげて!せっかく素敵なのに勿体ないよ!!!」
私は必死に自分なりの言葉をぶつける。まるで自分を鼓舞するかのように紡ぎ出された言葉で私自身にも力が湧いてくる。
驚いたように岸さんは目を丸くして、その後お腹を抱えながら大笑いしてくれる。
「あ、え?え?」
私が困惑していると涙を拭いながら話してくれる。
「あいや、ごめん。初対面なのにすごく真剣に意見くれるから嬉しくって!うん!なるほどね!僕も君のこと好きになりそうだ!あははっ!……よしっ!決めたよ!応援する!君がいてこその修司なんだって思えたよ!」
「あ、え?どゆこと!?」
「ああ、ごめんごめん。僕ね、誰にも認められてこなくてさ。こんな僕を認めてくれたのは修司が初めてだったんだ。さっきの君みたいにね、偏見なしで僕を男としてみてくれて。普通に接してくれたんだよ。それがとっても嬉しくって、恋なのかな?本当にキュンってしてさ。……だからさ、修司が……ううん。これは僕が言うべきじゃないね。……とにかく、君と話してみたかったんだよ。本当に良かった。話せて。また勇気が出てきたよ!」
「えぇええええっ!?そうなの!?」
「あはははっ!本当に純粋だよね!……ほらここに修司いると思うよ!頑張って!!!」
困惑して動揺している私の背中をそっと押してくれる。
「ほら、ありのままで頑張るんでしょ?」
「うん!!!ありがとう!!!!」
ーーーーーーー。
岸さんと別れて案内された体育館へと足を踏み入れる。
中で荷物を移動させる修司の姿が目に入って、駆け寄ろうとする。
「ごめんなさい!そこのあなた!ミスコン出ませんこと?」
「えっ!?」
不意に腕を掴まれ、振り返ると目を引く金髪が視界に入る。
眩しいくらい美しい金髪。お人形のような青い瞳、白い肌、顔立ち。
紛れもないお嬢様という表現が適切な美少女がいた。
「え、わたしなんて!無理ですよ!この学校の人じゃないし!」
「何を言ってますの!誰でも参加できるタイプのミスコンですわ!」
「と、飛び入り!?なんか自信あるみたいじゃん!」
「その美貌を持ってしても自信が無いというのならば、むしろ私たちへ失礼ですわ!鏡を見なさい!あなたこそ美少女ですわ!」
「なに!?な、なんですか!新手の勧誘!?」
この人可愛い見た目に反して推しが強すぎる。
「あら?澄じゃない!やっぱりきてたのね!ミスコン出るの!?」
私がお嬢様美少女と、戯れていると背後から聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「シズ姉!?」
振り返るとシズ姉がそこにいた。お忍びだからかメガネに帽子をつけている。それでもなお新たな魅力を引き出しててある意味怖い。
「ああ、言ってなかったかしら?特別ゲストで呼ばれてるのよ。ほら、ここのミスコンで、1位だったのが再ブレイクのきっかけだったし。ここのOGだからさ。あっ彩も来てるわよ、今は御手洗行かせたけど。(修司と澄見つけたらお節介焼きそうだからね。何回迂回したことか。)」
「あー、そうなんだ……そ、そうだったね……」
「あら、しずく先輩のお知り合いでしたの。なら、出ますわよね?ミスコン!」
「出なさい」
「えぇえ〜」
私は半ば強引にミスコンへと参加することになった。
『ミスコン出てきます、あとで合流しよ』
『僕もサークルの準備あるから、ちょうど良かったかも!全然連絡できなくてごめんね!ミスコンぜったい見るからね!』
『見なくていいから!!!』
私はようやく連絡のついた修司とメッセージをやり取りする。
なんとか合流できそうだ。
このミスコンを乗り越えれば……。
ああ、憂鬱だ。
ーーーーーーーー。
ミスコンは緊張したものの、思ったより一瞬で過ぎていく。
待っている間の緊張はとてもじゃなかった。それにしても、有名校のミスコンだけあって参加者もとても多い。
事前に勝ち上がった6名で本番がスタートした。
勝ち上がったのは外部で三名、学園側で三名だった。
外部はスカウトで選ばれた10人から選ばれたようだった。
一定基準が用意されていたようだ。
外部からは私とたまたま来ていた伊織ちゃん。
そして有志としてライブをしたアイドル『メイ』ちゃんが選ばれていた。
明らかに身内しかいなくて『特別審査員の悪意』をかんじたが、よしとしよう。
メイちゃんと伊織ちゃんとは海以来となるが、特に会話をすることなく本番を待った。
特にメイちゃんはわたしと一切目線をあわせることはなかった。
伊織ちゃんは「なんで私なんかが……」と、繰り返していた。
シズ姉にはめられたようだ。
学園側からは先程の岸くんがまたメイド服を着せられて女の子として参加していた。本人は嫌がっていたが、学園側の維新に関わると懇願されていた。
いったいなんの維新だよ。岸さんファイトだ。
残りは先程のお嬢様美少女と男の子っぽいスポーティな女性が選ばれていた。
お嬢様はやはり遠くで見ても近くで見てもものすごくかわいい。
一切見たことがなかったもう一人の女性は健康的な日焼けと豊満なボディが魅力的でスタイルだけで見ればこの中の誰よりも優れているのではないかと感じさせる。
ーーーーーーーー。
ミスコンは大盛り上がりを見せる。主に観客の反応が素晴らしかった。
まずステージに現れたのは、メイちゃんだ。
「エントリーナンバー1!グラビティ所属メイです!先程はライブありがと〜!こんな機会にまさかまさか!呼ばれるとは!感激です!ぜひ推してね!」
「うおおおおおお!君だけを見ているぞ!」
「メイちゃん最高だ!!!!」
メイちゃんは予想通りファンのお客さんも沢山来ていたので、オタクたちの歓声が湧いた。
服装はステージ後のまま、ミニスカートにポロシャツ風の肩出し上衣にネクタイをつけた可愛らしい衣装だ。
アームカバーとニーハイが黒のアクセントを演出し、美しい線を描いている。
髪が汗で乱れて不思議な色気を出している。
いつも下ろしている髪はハーフツインテールに結っておりとても可愛らしく女子校生アイドル最高と言った感じだ。
ーーーーーー。
「ええっと、ええん、エントリーナンバー2です。神崎です。え、ええとキィーンあっ!?きゃん!!!」
緊張して上手く話せないのか、モタモタしていると、マイクをハウリングさせてしまい、可愛い声を漏らす。
「かっ可愛い!!!!!」
会場全体の男たちの声が漏れた瞬間だった。
顔を真っ赤にして退場する伊織ちゃん。
白と茶のツートーンカラーで、パフスリーブドレスを上品に着こなしていて清楚な感じがしっかりと出ている。
赤面して退場する姿も乙女のそれだ。
「嫁にしたい」
「天使か」
「神…だ…可愛すぎる」
いかにも男性が好きそうな反応の数々に数名の男性が倒れ込んでいた。
ーーーーーーー。
「うっし!3番!外村 涼!よろしく!」
次にステージに上がったのはスポーティな女性だ。
ショートデニムとハーフパーカーと長袖のインナーでごく自然に服装を決めている。
だが自然なコーデ故に天然のムチムチ太ももと強調していないのに際立つお胸が魅力的で、デニムのびっちり感が余計におしりのラインを強調させて……まあ要はエッチだ。
「えっちすぎる……!」
「エッチだ!」
「安・産・体・型!!!!」
このタイミングだけ男性陣のお客さん達が前かがみになっていたのは何故なんだろう。
ーーーーーーー。
「はい、4番。岸です。男です。入れないで。」
先程の猫耳メイド姿で登場した岸さん。とても嫌そうに登場した。
「しっかりやれよー!」
「にゃんにゃんやれよー!」
「金払ってんだぞ!」
やる気のない岸さんに対して、ブーイングの嵐だ。
「はぁ。……おかえりなさいませ♡ご主人様!……にゃん♡」
大きなため息を吐くと、岸さんはくるっと一回転し猫のポーズと超絶可愛いウィンクを披露する。
かわいすぎる!!!!!!
「うぉおおおおおおおっ!!!!」
過去一会場が盛り上がったと言う。
「……死にたい」
本当に灰になって帰ってきた岸さんを私はヨシヨシと撫でたのであった。
ーーーーーーー。
いよいよ次は私の番。
「5番、真島澄です。よろしくお願いします!入れてくれると嬉しいな……なんて。」
私は元気よく挨拶をし、あざとくセリフを言ってみる。
あまり自信なかったが、想像以上に会場は盛り上がってくれる。
「可愛いぞー!!!」
「王道だ!!!」
「彼氏いますかー!!!」
「彼氏はえっといなくて……ずっと好きな人いて……あはは、恥ずかし……応援してくれると嬉しいです!」
何を言っていいのか分からず、赤面しながらよく分からずに発言する。
「うおおおお!!!応援するぞ!!」
「なんだその男!見る目ねーな!!!」
「俺がもらってやるよ!!」
予想外の盛り上がりを見せてくれた。
なんとかなったのかな?
ーーーーーーー。
「ラストを飾るのは私!!!大城クラージェですわ!」
「お嬢様ああああああっ!」
登場するなり大歓声の嵐だ。学園では相当人気な人なのだろう。この美貌でカリスマ性もあるなんて、もはや天才だなと感服する。
「こちら先程、演劇で着たドレスです!どうかしら、似合うかしら?」
「うおおおおおお!かわいいぞ!!」
「お嬢様ぁああああ!!!」
これは優勝確定だなと言うような盛り上がりだ。
朱色を主とした素敵なレースのドレスが金髪とマッチしてとても華やかだ。
体はまるで小さくてお人形のような美しさを持つにも関わらず、強気で大きな強さを見せる。
二面性が両極で華やかで気高い。
一言で言うなら美しい。
歩く姿、立ち居振る舞い、全てに華やかさとエレガントさが滲み出ていた。
だけど、それでいて嫌味がなく彼女は生粋のお嬢様であるとよくわかる。
ーーーーーーー。
優勝したのはもちろん大城さんだ。満場一致だったのではなかろうか。
私はありがたいことに外部賞というものを頂いた。
伊織ちゃんはダイヤの原石賞を審査員特別賞としてシズ姉から貰っていた。
こうして突如始まったミスコンは終わりを告げたのであった。
ーーーーーー。
「あれ、また連絡つかない。サークルの出し物あるって言ってたけどどうなったのかなミスコンの間におわっちゃったかな」
私が体育館でキョロキョロ周りを見渡していると、先程の大城さんが話しかけてくれる。
「どうかなさいましたの?迷子ですの?」
「ああえっと、友達と中々合流できなくて。」
「修司……ですわよね?」
「あれ、知ってるの?」
「もちろんですことよ!今なお振られ続けておりますわ!」
「えっ……ああ、そなの?」
本当にこの人は。なんでも素直にはっきり言う人のようだ。
「たぶん、中庭にいると思いますわよ?人気な人ですから、いろいろ頼まれるのでしょう?」
「あはは、それはあるかも……中庭ね、ありがとう!」
「このぐらいお易い御用ですわ!オーホッホッホ!!!」
突然笑い出す大城さんに少し驚きつつ、再度お礼を言い中庭を目指す。
ちゃんと話そう。さっきのこと。これまでの事。私の想いを。
真正面から。今度こそ。
「待ってくださいまし!」
「は、はい?」
不意にぎゅっと抱きしめられる。
「あっ!え、えっと!!」
「大丈夫……大丈夫ですわ。きっとうまく行きます。自信を持ちなさい、あなたはこの学園のミスコンを、勝ち取ってますわ。」
「……えっと…?」
「告白するのでしょう?そういう背中でしたわ!」
「あっ……うん!頑張るね!」
大城さんにはなんでもお見通しのようだ。
二回振られただけの私とは全然違う。
この人はいつも真正面から修司に告白してきたんだ。
「この私が保証してあげます。学園という括りがなければ優勝はあなたでしたのよ?それはつまり、今この場所で1番美しいということ。さ、おゆきなさい。」
「……大城さんはなんで……」
とても力強くて素敵な言い回しだ。とても勇気が湧いてくる。
だからこそ、なぜこの人は修司のことが好きになったのか気になってしまい、言葉がこぽれ落ちる。
「それはあなたにならわかるのではなくって?」
「……そっか、それもそうだね。」
「ほら!どんとぶちかましてきてやりなさい!」
「はいっ!!!」
答えは決まっている。修司だからだ。
私の好きになった人は。そういう人なんだ。
誰に対しても偏見がなくて、普通に接してくれる。
彼はいつも同じ目線にたってくれる。
その目線に立てなくなるのはいつだって弱い自分の心なんだ。




