P14 隣に立ちたい気持ち
「ごめんな、帰り2人になっちまって。」
「いえ!大丈夫です!……むしろ大歓迎……みたいな!……なんて。」
私と想くんは偶然ながらに二人で帰ることになった。
修司さんも同じ方向だった気がしたが、雫花さんと何やら話し込んでいた。
メイちゃんは後半機嫌が悪く、マネージャーと一緒に次の現場へ。
ああいう時は放っておいて、しばらく経ってから話しかけると良い。私の経験だとね。
澄さんと彩さんは一緒に車で帰宅。乗せていってくれそうだったが、さすがに遠慮した。
「免許はあるんだけどよ、何分学生なもんで。悪ぃな。」
「ううん!一緒にこうやって帰ることって中々できないからっ。嬉しい。……なんか恋人さんみたいだね!」
彼とはどうやっても埋められない距離。それは年齢だ。
私は彼に意識されているのだろうか。
「またそうやって。年上をからかうな。」
「からかってないよ?本気だもん!ちゅーしたっしょ?」
「あれはノーカンなの。」
分かってる。前も言われた言葉だ。それでもあの時のことを忘れて欲しくない。
助けてくれたあの日も、怒ってくれた日も、一緒に帰ったあの日も、今共に過ごす時間も。
私という存在を彼に刻み込みたい。
私にとって彼がそうであるように。
「えぇ。ファーストキスなのに。」
私は意地悪な言い回しをしてみせる。こういう言い方はきっと弱いはずだ。
「……お、俺もだよ。だからいいだろ、それで。おあいこだ。」
案の定、照れたように顔を腕で隠す仕草にキュンとくる。
仕掛けたはずが、私の方がドキドキさせられる。
夕焼けが優しく想くんを照らし横顔を美しく演出する。
まだ、耳をすませば、波の音が聞こえる。
いま、とってもロマンチックだ。
今ならもう少し踏み込めるかもしれない。
「あ、あのっ!!!」
無理やり声を大きく張り上げる。反動で、声が裏返り一気に恥ずかしさが先行する。
「ん。なんだ?」
落ち着いたように首を傾げる。
年上の余裕の現れなのか、私の特性を知ってなのか動じることは無い。
黙って真剣な眼差しを向けてくれる。
「こここ、こないだ!デートの約束しましたよね!?」
「ああ!そうだったな!いつにしようか?具体的な話してなかったな。……いいぞ、お礼なんだし、合わせるよ?」
「い、いいい一緒に!青愛の学園祭デートしませんか!」
ようやく踏み出せた一言。今日何度も口にしようとしては、私の中の何かが止めさせた。
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『やめておけ。』
『お前なんて眼中に無い。』
『よく見るんだ。』
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不意に頭が痛くなるが、そんなのは気にしてられない。
「学園祭でいいのか?気をつかってるなら、食事でも映画とか、遊園地とか動物園とかでもいいんだぞ?」
「はい!学園祭がいいんです!今の想くんを知りたいんです!学園祭なら、きっと色んな話ができるよね!?」
「そうか……そうだな。確かにいい機会かもしれないな。行こうか、学園祭。一緒に。」
「はい!!!!」
私は満開の笑みで返事をした。
呆気なく取り付けられる約束。
何だ、簡単じゃない。
やっぱり、勇気出して良かった。
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『後悔するぞ』
『本当は分かってるはずだ。』
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私は頭の痛みなんて吹き飛ぶほどに嬉しさでいっぱいだった。
楽しみだな、学園祭。




