P13 恋慕と祝福
「……大丈夫?澄。」
私はそっと顔を上げる。優しく声をかけて来たのは、修司だ。
彼はずるい。こういう時にいつも私のそばに現れるのだから。
そんなの、好きになっちゃうじゃない。
「……うん。大丈夫。ちょっと休んだら行くよ。ありがとね。」
「少しなら話聞くよ?……メイ気にしてたよ?言いすぎたって。」
私が話を聞いて欲しいのを察したかのように微笑む。
砂浜に波の音だけが木霊して、修司がそっと横に座る。
「…修司は何でもお見通しだね。」
「そんなことないよ。僕はどっちかって言うと鈍いと思うよ。……想みたいに君を見てあげられない。」
その言葉はまるで、ここに来るのを促したのは想だと言っているようなものだ。
想は突然『恋人ごっこをやめよう』と、提案してきた。
私は数ヶ月の間に想を男性として意識するようにまで変化していた。
だからこそ、突き放した。私にそういうつもりは無い。想とは友達でいたいという気持ちで。
『本気になられたら困るだろ?』その言葉が私に強烈なインパクトを与えた。
想も男だ。フリとはいえ付き合ってあれば、いずれそういうことになる…可能性がある。
わたしの今までの距離感ではいけないと思ったのだ。
「私ね、想と別れることになったのも、想の気持ちも、メイちゃんがどうして怒ったのかも分からないんだよ。」
「まだ、想のこと好きなの?」
「嘘。……嘘なんだよ。想と付き合ってるって。……私はただ、修司、あなたと離れるのが嫌だった。それだけなの。……好き。どうやっても、この気持ちが変わらないの。」
勢いに任せてこぼれ出す言葉。分かってる。彼が私を受け入れてくれないことぐらい。
でも、どうしようもないぐらい好きなの。
全部どうでもいいぐらいに。修司のことが好き。
「……っ。」
修司は辛そうに顔を伏せる。口にできない想いがあることが伝わる。
だが、刹那。
ゆっくりと肩を引き寄せられる。
「……え?」
「付き合うとか、好きとか。僕にはまだ、ピンと来ない。……でも、今はこうしていたい。」
「……うん、ありがとう。」
ーーーーーーー。
メイちゃんは想が私の事を好きだと言った。
そして自分自身は想のことが好きだと。
でも、付き合う振りを承諾したのは紛れもない想だ。
私には到底、想が私のことを好きだったなんて思えない。
てっきり『そういう可能性もある』ということを教えてくれたのだと感じていた。
もし、メイちゃんの言っていた事が正しいのであれば、わたしは最低な女だ。
気づかないようにしていただけで、思い返せば『想は私のことが好きなんじゃないか』とよぎったことは何度かあった。
ただ、友達として接していたからか意識することは無かった。
修司との時間が減って距離ができて、2人で過ごす時間が増えて不意に意識してしまった。
それまではそういうことは無かった。
想は一体何を考えていたのか、グルグル思考をめぐらせているうちに分からなくなる。
メイちゃんのこともそうだ。自分の身内を血が繋がっていないからかと好きになるのだろうか。
家族として過ごしてきた時間があるのに。
これに関しては経験した本人にしかわから無いことなのかもしれない。
でもそんなの考えもしていなかった。
何故なら、メイちゃんは修司が好きだと思っていたからだ。
おにいが運転する帰りの車の中でグルグルと考える。
どちらにしてもメイちゃんと想にはきちんと謝らなければならない、という所までは整理が着いた。
いくら知らなかったとはいえ、私のやり方は褒められたやり方ではなかった、ということだ。
私はいつも人の気持ちを理解するのが苦手だ。
いつもおにいが守ってくれて、想がそばに居てくれて。
優しく包んでくれる修司がいたから。
でも。
きっとこのままではいけない。
周りが許してくれるから、受け入れてくれるからっていい訳では無かった。
今までずっと自分を磨いてきた。成績を上げたり、運動を頑張ってみたりした。
修司の隣に立つにはその必要があると思ったからだ。
でもきっとそうではなかったんだと今ならわかる気がする。
彼女たちは終始と仲の良かった私をよく思っていなかった。
その空気を私は理解していなかったのだ。
私は過ぎていく海を見つめ、思う。
ようやく自分の過ちに気がついたのかもしれない。
自分の考えで行動するのではない。
周りのこともきちんと考えるべきだったんだ。
いつも支えてくれる兄のように。
いつも気にかけてくれる想のように。
優しくいてくれる眩しい彼のように。
しばらく体調不良でお休みしておりました。更新遅れてすみません。
13〜17話更新いたしましたので、楽しんで頂ければ幸いです。
いつもご愛読ありがとうございます。よろしければ、感想や評価などお待ちしております。
この章はあと数話続く予定です。揉めたり鬱な回もあるとは思いますが、楽しんで頂ければ幸いです。
では、いつもありがとうございます。




