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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
85/252

第85話:装備の強化

異世界生活182日目

 魔鉄の加工に成功して5日後



 異世界に飛ばされてから約半年。


 初めは私ひとりから始まった異世界生活だった。それが今では100人近い村人たちと、それなりに豊かな暮らしをしている。


 日本にいた頃から、領地育成ものやサバイバル系のゲームを趣味にしていた。そういう意味では、理想的な環境にいるんだと思う。


 ただここは現実の世界。一度死んだらおわりだし、セーブもなければやり直しもきかない。とはいえ、この村には強力な結界がある。村に籠っている限り、死のリスクはほぼ無いと言っていいだろう。


 ――と、そんな引きこもり生活のなか、


 ようやく外へ踏み出すためのアイテムが完成した。村の誇る巨匠、夏希先生の傑作がこちらだ。


===================

『結界のネックレス』

制作者:夏希

希少度:☆☆☆☆

結界宝珠をはめ込んだ希少なネックレス

身に着けることで以下の効果を発動する

・認識外の攻撃を弾く結界を展開

(物理攻撃、魔法攻撃、状態異常攻撃)

※結界発動中は宝珠に内蔵する魔素を消費

※村内の魔素を吸収して再充填可能

===================


 さすがは上位鑑定、かなり詳細な情報までわかるようになっていた。


 まず目を引くのは希少度の項目か。☆が4つもあるので、いかにもレア度が高そうだ。最高が星何個なのかは不明だけど、希少価値が高いことは間違いないだろう。


 続いてその効果なのだが、「認識外の攻撃を弾く」とある。これについてはここ数日の検証により、概ね把握できている。


・攻撃がくる、攻撃されている。そう認識しているときは発動しない

・認識外の攻撃なら物理も魔法も弾いてくれる。状態異常は未確認

・発動するごとに宝珠の色が変化。薄緑色が、だんだんと黒色へ

・村にいれば自動で充填され、色も元に戻る

・村長の魔力でも充填可能


 大体こんなところだが、不意の攻撃や状態異常攻撃にも対応するとなれば、戦闘時はもちろんのこと、結界外での安全確保も格段に向上するはずだ。しかも、私の魔力でも補充可能なのだから、常に結界の保険がある状態で行動できる。

 

 宝珠に内蔵された魔素の消費量についてなんだが、色の変化から想定すると20回発動して約半分消費、って感じ。春香の予想では「50回は耐えれるでしょ」ってことらしい。

 受けた攻撃の威力によって消費する魔素量が違うのか、これについては今後も検証が必要だ。



 そしてもうひとつ、魔鉄により鍛えられた武器についてだ。


 見た目どおり切れ味は抜群、通常の鉄剣と比べても、その違いは一目瞭然だった。それに加えて特殊効果も付与されている。夏希の技巧スキルにより、柄の部分にセンスのいい意匠が施してあった。


===================

『魔鉄の剣』

制作者:ベアーズ

希少度:☆☆☆

特殊な熱処理により魔鉄を鍛えて仕上げた剣

魔力の浸透率向上、切れ味上昇

特殊効果:耐久値向上

===================


 名称こそシンプルだが、その希少度と性能は実に素晴らしいものだった。製作者がベアーズなのは、彼が中心となって鍛造したからだろう。


 魔力の浸透率に加えて切れ味の上昇、さらに特殊効果で耐久値も上がっている。冬也の魔剣士と相性がいいのはもちろんのこと、ほかの者が使用しても、今までの剣とは比較にならない。


 記念すべき一振り目は、全会一致で冬也が所有することになった。


 冬也曰く、「普通に切っても十分すごい。魔力を流すとえげつない!」って感じで興奮しまくり。ほかの面子も、恐ろしいほどの切れ味だったと口を揃えて話していたよ。


 現在完成しているのは『結界のネックレス』が5つと『魔鉄の剣』が3本。それぞれの所有者は以下のとおりだ。


『魔鉄の剣』

冬也 春香 ラド

『結界のネックレス』

啓介 メリナード ウルガン ウルーク 椿


 街にいることが多い三人を優先、今後は忠誠度が高い順に配布する予定でいる。


 今後の施策を話し合った結果、武器は剣と槍と盾を、防具は胸当てを中心に依頼した。頭部を保護する帽子や足元を守るブーツなんかも、既存の革製品に組み込むことが可能らしい。


「あ、魔法職用の杖かワンドも忘れないでくださいよ!」

「あ、それ私も欲しいです」

「なら私もぜひお願いします」


 村の貴重な魔法使いである桜とロアと杏子も、魔法関連の特殊効果を期待しているみたいだ。魔鉄はわりと軽い素材なので、短杖くらいの重さなら問題ないんだろう。

 

「今回ので自信がつきました! あとは巨匠夏希にお任せあれ!」

「夏希ちゃん、なるはやでお願いね!」

「りょーかいです!」


 巨匠夏希を始め、鍛冶師の二人もやる気を見せている。今後の装備強化にも期待が持てそうだっだ。




◇◇◇

 

 夕方食堂に集まったとき、村のみんなが採掘班を囲んでいた。御礼と賛辞を口々に述べており、そんな光景を見た私もほっこりした気分になる。


 採掘班のみんなもご満悦な様子で、発掘したときの状況を事細かに語っていた。


「あんときはオレも驚きやしたぜ!」

「最初に見つけたのはオレっすよ! ねえベッケルさん!」

「そうだな。アレは大手柄だったぞ」

「まさかあんなところにあるとはなぁ」

「きっかけはオレの一振りが――」


 

 ――こんな感じの日常がいつまでも続くといいな、なんてことを考えながら今日という一日が過ぎていく。





 



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