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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
76/252

第76話:議長の訪問(3/3)

 教会の秘密を打ち明けた私は、職業やスキルを授かること、そして大地神の加護についてを詳しく話していった。



「おい! 今なんと申した!」

「ですから、大地の女神の恩恵が――」


 するとドラゴが、いきなり血相を変えて興奮し始めた。


「お主がなぜその存在を知っとるんじゃ! 大地の女神様は我ら竜人が崇める女神ぞ。大山脈に住まう竜と我らしか知らぬはず……」

「キッカケは神への祈りでした。この土地に感謝を捧げたとき、『女神信仰』という特性を授かりました」

「その女神が大地神様じゃと?」

「はい、ステータスにもハッキリと表示されています。間違いありません」


 急に騒ぎ出したドラゴ、その態度にも驚いたが……大山脈に竜が住んでいるという新事実も判明してしまった。大地の女神の存在は、竜と竜人のみが知っているらしい。秘匿されているのかは不明だけど、尊い存在なのは間違いなさそうだった。


「そうか……そうじゃったか……」

「何かまずいことでも?」

「いや。この村に一歩踏み行ったとき、儂の竜気が高まったんじゃ。その理由がわかって納得しておった」

「竜気と言うのは?」

「竜気とは、お主らで言う魔素のことじゃ。呼び方は違うが本質は同じものよの」

「大地神さまの恩恵により、その竜気を強く感じた、と?」

「こうしてはおれん。村長、食事の途中で申し訳ないが、今すぐ女神さまのもとへ行かせてくれんか」

「それは構いませんけど、あとで詳しく教えて下さいね」

「無論じゃ、では参ろう!」


 


 現地に到着したドラゴは、教会の前で平伏してから入室する。私や椿たちもそれに続いて入っていった。


「女神様、拝謁が遅れ申し訳ございません。神聖なる竜気に触れ、このドラゴ感激しております。なにとぞご容赦を……」


 ドラゴは感謝と謝罪を繰り返しながら、女神像の前で五体投地をしている。大地神というのはそれほど尊い存在なのだろう。


 やがて――


「村長、感謝する。無事に女神さまのお告げを賜った」

「え? お告げって……。もしかして女神さまと交信できるのですか!?」 

「いやすまぬ、言い方が悪かった。儂の頭の中に、女神さまのお声が聞こえてきてな……。『竜闘士』という職業を授けてくれるそうじゃ」

「おお、それはおめでとうございます」

「じゃが村人になったばかりの儂が、女神様の恩恵を受けていいものかと思ってな……」


 女神への祈りが遅れたことで後ろめたい気持ちもあるのだろう。判断に迷っていて、恩恵を受けることに躊躇している。

 

「良いではないですか。女神さまからのお言葉となれば、それを受けねば不敬というものでしょう? ありがたく頂きましょうよ」

「……そうじゃな、村長が言うならばそのほうが良いのかもしれん」


 私に促されたドラゴは無事に恩恵を賜り、再び女神像に向かい祈りを捧げていた。



 それからややあって、今は自宅の居間に陣取りドラゴのステータスを確認中。周りにある日本製品にも驚いていたが……いまはそれどころではない。


「これに触れればいいのか?」

「ええ。日本語なので読めないと思いますが、私にも確認させてください」

「うむ、では……」



==============

ドラグニアス Lv50

村人:忠誠75

職業:竜闘士

スキル:竜闘術Lv1

竜の力:竜気を纏い全身を強化する

竜の血:自然治癒力を促進させる

竜の翼:翼による飛行が可能となる

竜の咆哮:竜気を放出して攻撃する

※スキルレベル上昇により各効果が向上


大地神の加護

・竜気の吸収速度が大幅に向上する

==============



 モニターに映し出されたステータスは、「これぞまさしく最強戦士」という感じの能力で満載だった。


 以前のスキルは格闘術だったはずなので、今回はいきなり派生職を授かったということだろう。それにここまでの交流や女神の存在が効いたらしく、忠誠度も75まで上がっていた。


 ドラゴと最初に対面したとき、春香が鑑定できなかった項目は『大地神の加護』だと判明した。結界と同じ名称なだけあって、その効果も凄そうだ。



「本名はドラグニアスと言うのですね」

「なっ、そんなことまでわかるのか……。それは儂の真名じゃ、番となる相手にしか明かさぬのでな。このままドラゴと呼んでくれ」

「それは失礼を、ドラゴ様」

「しかし、竜闘術とはのぉ……。儂ら竜人族でこのスキルを身に着けたものは、過去にただひとりだけじゃ」

「それって、竜人族の始祖とか?」

「お主は何でも知っとるな。まさしく、我ら始祖様だけが所持していたスキルじゃ」


 話の流れ的にそんな感じなのかと思い、適当に言ってみたんだが……。


 ファンタジー好きなら誰でも思いつきそうなことだったのに、ドラゴからの評価がまた上がってしまった。




◇◇◇


 教会の一件もおわり、ほかに見る所もないので自宅へと戻る。


 その後は竜人のことや首都ビストリアの様子、人族領の動向なんかの話をしていたよ。


 

 獣人領にいる竜人族はたったの4人だけらしく、自分の妻、そして息子と娘だけだとドラゴが言っていた。本来竜人は、大山脈から降りてくることはないみたいだ。竜と共に平穏な生活を送っているんだと。


 大昔から続く風習で、竜人族が議長を務めているらしい。50年前、先代に替わる立場として、ドラゴ夫婦が首都へと降りてきた。やがて子どもが生まれ、普段は家族で慎ましく暮らしているみたいだ。


「竜人族が議長を務めるのは、何か厳格な誓約でもあるのですか」

「いや、そんなものはないぞ」

「ならどうしてなんです?」

「我らは4人しかおらんのじゃ。個の力は強くとも、種としての戦力は知れておる。……要は体の良い神輿じゃな、ククッ」

「なるほど、それで中立の立場を保てるわけですか」



 また首都では、日本人奴隷をダンジョンに送り込み、レベルアップを図っているそうだ。日本人奴隷の平均レベルは24。高い者は40に手が届きそうで、低い者でも20は超えている。


(うちの主力部隊の方が、若干なりとも先行してる感じか)


 首都や各街の日本人冒険者は、レベル20前後で停滞している者と、レベルが40を超えてダンジョン攻略に励む者とで二極化している。


 大多数を占める前者はオーク討伐ができず、浅い階層で日銭を稼ぎながらのんびりと過ごしている。そして数少ない後者に関しては、やる気のある者や有能な者でパーティーを組み直して、ダンジョンの奥深くへと挑戦を続けている。


 攻略組のほとんどが異世界の知識に富んでおり、自らのスキルを最大限生かして日々を楽しんでいるらしい。


「ちなみにSランクの冒険者って、どれくらいのレベルなんですか」

「そうじゃの。獣人領にいるSランクは8人じゃ。平均レベルは65といったところかのぉ」

「失礼ですが、ドラゴ様よりも強いと?」

「強さとは、単純なレベルだけで測れるものではない。……まあ、竜闘術を授かった今なら負ける気はせん」


 獣人領にも、ドラゴ以上の怪物クラスが8人もいるっぽい。そう考えると、うちの攻略組はBランク上位ってところか。


 

 そして最後に、人族領の動向についてなんだが……結論から言うと『現状維持』だった。


 人族側でも慢性的な食糧難が続いており、長期的な戦争を起こす余裕はないらしい。ただ、転移した日本人の数は明らかに多い。正確な人数は把握してないが、おおよそ獣人領の5倍程度だと密偵の報告で判明している。


 人族の王は、勇者や聖女などのユニークスキル持ちを旗頭にして、戦力の増強に励んでいる。


 が、獣人領への侵攻を諦めているわけではないようだ。食糧事情が改善すれば、こちらへ攻め込んでくる可能性もある、とドラゴは言っていた。


「もし戦争が起きても、食料支援というカタチで後押しするつもりです」

「うむ……。直接村を見せてもらったが、これ程までとは思わなんだ。連合議会としても、この村とは交流を続けていきたい」

「こちらへの干渉がなければ、継続して取引させて頂きます」

「それについては、儂からもしっかり説明しておくでの」

「よろしくお願いします」




◇◇◇


「村長、今日は大変世話になった」

「私のほうこそ、村のことを知っていただき感謝しております。議会での報告の件、よしなにお願い申し上げます」

「わかっておる。では、また会える日を楽しみにしておるぞ」

「はい、お気をつけて」


 こうして、議長たち視察団は夕暮れ前には帰っていった。


 馬車には大量の芋を積んでいる。視察に来た側近や護衛たちへの個人的なみやげだ。ドラゴも了承していたので、みんなホクホク顔で帰路についていく。



 今回の視察は思わぬ展開もあったが、最大の目的であった議会との交友は成功したと思っていいだろう。

 

 あとの判断はドラゴに委ねるしかないが、「この分なら穏便に過ごせるな」と、このときの私は安易に考えていた。







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