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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
71/252

第71話:村ボーナス★

異世界生活162日目



「おっはよー!」

「啓介さん、おはようございます」

「おはよう、今日は早いじゃないか。二人もステータスのチェックか?」

「うん、わたしたちも朝食前に済ませとこうかな、ってねー」

「そっか、じゃあ先に見ていいぞー」


 日課のステータス確認をしようと思ったところで、春香と桜のふたりが同じタイミングでやって来た。


 昨日は鉱山の視察をしたり、雛の誕生イベントなんかもあった。もしかしてスキルに変化が……なんてことを思いながら、少しだけ楽しみにしていたのだ。


「じゃあお言葉に甘えてお先にー」


 モニターに映し出された春香のステータスを覗き見ると、スキルや新職業は発生していないが、レベルは44まで大きく上昇している。ダンジョン10階層のボス討伐や、11階層以降のオーク上位種を相手にしているだけあって、ここ数日の上昇幅はとても大きい。


 桜にしてもそうだった。レベルが46まで上がってるし、申し分ない成長だと思うのだけど……本人は少し不満げな様子。恐らく二次転職に関することだろう。


「ふぅ、まだダメかぁ」

「慌てなくても大丈夫だろ、あまり気負い過ぎるのも良くないぞ」

「そうなんですけどね。せめて何かのキッカケでも掴めれば……」

「派生職のトリガーが判ればいいのにねー」

「やっぱり色んな魔法を体験するのが、一番の近道な気はするんですよね」

「冬也くんもそんな感じだったもんねー」


 たしかに冬也は、桜の水魔法を全身に纏って戦っていた。その経験から派生職に進化したという可能性が高いように思える。それと同様、桜もいろんな魔法を体験することで――


 ん? 色んな魔法の体験か……。



「なあ、あした南の勇者のところへ行く予定なんだけど……桜も一緒にどうだ?」

「え、別にいいですけど何か目的でも?」

「いや、あそこには全属性魔法が使える賢者もいるだろ? 魔法の体験とかヒントが貰えるかもと思ってさ」

「あ……いくいく! 私もついて行きたいです!」

「えー、じゃあわたしも行くー」

「春香もか。でもダンジョンはいいのか?」

「一度くらい会っておきたいじゃないですか。伝説の勇者様ご一行に!」


 まあ、桜だけってわけにもいかんよな……。この際だ、日本人メンバー全員で顔を出しておくのも悪くないかもしれん。


「んじゃ、みんなで行って親睦会でもするか」

「お、それはいいねー」

「啓介さん、できれば長めに時間をとって貰いたいんですけど……。ダメでしょうか?」

「もちろんいいさ。向こうの都合もあるけど、私は全然構わないよ」

「やったー! ありがと啓介さん!」


 そう言って抱き着いてくる桜、おっさんは朝からデレまくりだった。


「っと、私もステータスを確認しないとな」

「あ、ごめんなさい」


 全然ごめんなさいじゃなかった。もっと堪能すれば良いものを……つい話を切ってしまい、とてつもなく後悔している。



 気を取り直してモニターに触れ、映し出されたステータスに目をやる。


=================

啓介 Lv50

職業:村長 ナナシ村 ★☆☆

ユニークスキル 村Lv8(72/1000)

『村長権限』『範囲指定』『追放指定』

『能力模倣』『閲覧』『徴収』

『物資転送』『念話』


村ボーナス

★   豊穣の大地<NEW>

☆☆  万能な倉庫

☆☆☆ 女神信仰

=================


 映し出されたステータスのうち、村ボーナスの『☆』印が黒く塗りつぶされ『★』になっていた。よく見ると名称も変わっているようだ。


『豊かな土壌』だったのが『豊穣の大地』に変化していた。


「お、なんだこれ?」

「あれ? 村ボーナスが変ですね」

「表示バグとか?」

「……ちょっと詳細を見てみるよ」


=================

村ボーナス


★ 豊穣の大地<NEW>

この地に生きるものは病気にかからず、生命の維持に好影響を受ける

※解放条件:初めての収穫、生命の誕生


=================


「これは……進化、ってことだよな?」

「ええ、以前は土壌と作物限定でした。今回のは人や家畜にも効果があるみたいですね」

「解放条件は生命の誕生……昨日ひな鳥が生まれたからだねー」

「この、生命維持に好影響ってのは何だろ」

「これ以上の詳細は見れませんか?」

「ダメだな。何も映らない」


 言葉面からして、良い効果であるのは間違いないんだろうけど……詳細がわからないのでいまいちピンと来ない。


「パッと思いつくのは……。怪我の直りが早い、疲労回復が早い、老化が遅くなる。みたいな感じ?」

「ふむ、どれもありそうだ」

「まさかとは思いますが、肉体的老化が止まるとか、若返りとかもあったりして……」

「んー、流石にそこまではどうだろ。生命『維持』ってあるしな、若返りは難しいんじゃないかな」

「わっかんないですよー。名称にも豊穣の『大地』とついてますし、なんとなく大地神を連想させますよね」

「まあ何にしても良い効果だろうし、そのへんも追々判明するだろう。自らの実体験でな」

「ありがたいですねー」


 春香の言う通り、非常にありがたいボーナスへと進化した。病気にかからないだけでも万々歳な効果だし、作物への影響も持続、もしくは向上していそうだった。


 今回のことで、残りのボーナスにも進化する可能性がでてきた。どんな解放条件で、どんな効果になるのかは不明だ。それでも、良い効果なのは間違いないだろう。


「ねえ啓介さん、折角ですし今日はみんなで水路作りをしません? 疲労回復やMP回復の検証もできますし」

「お、いいんじゃないか?」

「じゃあわたし、他のみんなに声掛けてくるねー。朝ごはんでも食べながら打合せしましょ」

「ああ春香、よろしく頼むよ」

「あいあいさー」


 勇者訪問の件もあるので、みんなで話しながら水路を建設する流れになった。




◇◇◇


「よーし。敷地の拡張も終わったし、上流のほうから進めていくぞー」


「「「おおー!」」」



 朝食を終えて早々、まずは結界を拡げることから始めていた。


 今後、村を大きくすることを考慮し、上流に300m行ったところで川の水を引き込む。下流も同じだけ距離をとって川へと戻す予定でいる。


 村周辺の地形は、北から南へとゆるやかな傾斜になっている。すなわち、水路の勾配をそれほど危惧する必要はない。如何せん測量機器がないので、正確な高低差はわからない。が、水の流れが途中で止まるようなことはないだろう。


「まずは川の上流から村の北側まで水路を引き込むぞ。その水深を確認したら、どれくらいの深さにするか決定する」

「水路の幅はどうしますか?」

「川の幅に合わせて3mにしとこうか」

「わかりました」



 ちなみに水路建設の段取りはこんな感じ。


 まずは私の土魔法で地面を大雑把に凹ませていく。そのあとを追うように、凹ました地盤を椿が綺麗に整形する。


 次に水路の側面を、ロアが石のように硬く固めていく。100m進める毎に、水路に水を張って勾配をチェック。村に隣接する場所まで来たら、最後に水路の底面を固めて仕上げる手筈だ。


 30m間隔で水路に簡易の橋、というか丸太を並べて渡りを作っていく。ここは森の中なので馬車が通るわけでもない。人さえが安全に渡れれば、形状なんて何でもいいのだ。あとは残りのメンバーに任せておけばいい。


 もう既に、みんなの力は人並みを大きく逸している。重機を入れて作業するより格段に効率がいい。異世界ファンタジーよろしく、まるでゲーム感覚のように工事が進んでいった――。


「おーい、そろそろ昼休憩にするぞー」


「「「りょうかい(でーす)!」」」


 まだ昼前だというのに、上流側の工事がほとんど終わってしまった。


 普通に考えたらとんでもない突貫工事なんだが……。水路の仕上がりも良好で、地盤が水流で削れることもなかった。



「桜は杏子さんの教えを乞うとして、春香や秋穂も、剣聖や聖女と話してみるのがいいかもな」

「私は聖女より剣聖に色々聞いてみたい」

「秋穂……ひょっとして戦闘狂なのか?」

「そうじゃないけど、いま身に着けるべきは戦う力のほうだから」

「そっか、自分の思うとおりやってくれ」

「うん」


 今はご飯を食べながら、明日の予定を話しあっているところだ。


「もぐもぐ……わたしはどうしよっかなー」

「夏希は好きにすればいいさ。ただ、派生職のことは秘密にしといてくれよ、むろん冬也もな」

「わかってる。そう簡単に手の内を見せるつもりはない」

「あー、あと女性陣、あまり勇人を揶揄うんじゃないぞ」

「わかってるよー、ウヘヘっ」

「おい! ウヘヘじゃないぞ夏希……」


(ちょっと怪しいヤツもいるが、ここだけの冗談だろうし、まあ大丈夫だろう……大丈夫だよな?)


 そんな感じで雑談が続き、午後からは村の中での水路建設に取り掛かっていった。



◇◇◇

 

 結局のところ、村の上流と村の中の水路は完成を迎えていた。重機も入れないような森の中、このスピードは明らかに異常だ。現代でも魔法が使えたら大儲け……。と、職業柄そんなことを考えていたよ。


 あと、村の要所には馬車も渡れる橋が架けられ、試運転でも問題はなかった。


 というか、橋の建設途中でルドルグが出張ってきて、これでもかと言わんばかりの見事な橋を建てていた。職人としてのこだわりがあるのだろう。こういうことには手を抜けない性分らしい。



 明日はいよいよ南の勇者たちとの再会。


 はてさて、うちのメンバーはどうするか。若干の不安、そして派生職への期待を胸に、私も眠りにつくのであった。





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