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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
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第5話:最初の出会い

 声に驚いて振り返ると――、


 結界を挟んだ目の前に、二人の女性が立っていた。


 ひとりは20代前半に見え、襟付きの白いシャツと黒いズボンにエプロン姿、洒落たカフェの店員さん風の格好をしていた。もうひとりは高校生くらいだろうか。私服姿で、結構大きめなエコバックを肩に掛けている。


 どう見ても同じ日本人に見えたし、言葉も日本語に聞こえた。異世界翻訳スキルの可能性もあるが、黒髪黒目の典型的な日本人に見える。

 二人とも、服や顔に土汚れは目立つも、顔立ちはとても良い。控えめに言っても美人だった。



 ほかの転移者の存在も想定はしていたが、突然の問いかけにどう対応していいか迷っていると――、店員風の恰好をした女性が声を発した。


「私は佐々宮 椿と言います。こちらの女性は藤堂 桜さんです」


 佐々宮さんの名乗りに続いて、もうひとりの子も頭を下げる。


「突然何を言い出すんだと思うかもしれませんが……、どうか話を聞いてください」


 こちらも名乗るべきとは思ったが、何があるかわからない。とりあえず警戒すべきと判断し、頷くそぶりだけで続きを促した。


「わたしたち、今日のお昼ごろに突然、ものすごい光で目の前が真っ白に――。次の瞬間にはこの森の中にいまして……」


(私とほとんど同じ状況だな)


 そこで言葉を区切り、こちらの様子を見ている感じだったので、私はまた頷いて返す。


「ここがどこなのか教えて頂けませんか。それと…………どうかお願いします。今晩、こちらに泊めて頂けないでしょうか」


 突然わけも分からない場所に来て、森を彷徨ったあげく、やっと同じ日本人を見つけた。そこに家があれば、頼るのも当たり前か。


(だが、受け入れても大丈夫だろうか)


 2人とも疲れ切った顔をしている。演技しているようには見えないし、いきなりこちらが襲われる可能性は低いと思う。なんとしてもこの機会に、村スキルの侵入と追放の効果を確認しておきたい。


 何かの罠という可能性もあるけど、リスクを考えだしたらキリがない。スキルの確認を最優先にすべきと決断し、女性に話しかけることにした。


「わかりました。お泊めします」

「っ、ありがとうございます!」

「ただし、こちらも少しばかり条件、というかお願いがあります」

「条件……ですか?」


 私の返答に対し、女性はひどく動揺しているように見える。


(うん。異性から、しかもおっさんからの交換条件だ。いろいろ警戒するのは当然だよね……)


 たしかに美人だし、私自身もそっちが枯れているわけでもない。ないんだが、今はそれどころではない。


「条件と言っても、決していかがわしいお願いではありません。泊めるかわりにいくつか私の指示に従って欲しいのです」

「……指示、ですか」


(まだ疑っているようだ。どんな指示かもわからないもんな)


「無理強いはしません、指示の内容に不満があれば断ってもいいです。ただその場合は――。申し訳ないですがお泊めすることは出来ません」


 問いかけて来た女性が、もうひとりの女の子と視線を合わせて頷きあった。


「わかりました。指示に従いますので、泊めていただけますか」


 どうやら交渉には応じてくれるようだ。


「ではこちらに来て下さい。ところで、目の前に薄い膜みたいなの見えてますか?」

「はい、実はここが見えてからずっと気になっていました……」


 自分以外にも、普通にこの結界が見えていることが判明した。


(あとは勝手に入れるかだが……)


 そう思案しながら女性たちに答える。


「そうですか。ではゆっくりと、その膜に触れてみてください」


 私の指示どおり、恐るおそる指先で触れる2人は……結界に遮られるように指が止まっていた。


「……」


 今度は手のひらで強く押したのだが、それでもビクともしない。

 

「なにか、固い壁でもあるみたいな感じがします。……ダメです。そちらへ行けません」


 どうやら侵入は出来ないみたい。こうなると次の問題は、どうやったら許可を出せるかだ。いきなり声に出して「侵入を許可する!」などと言って、何も起きないのは恥ずかしい。そんなくだらない考えを巡らせ、彼女たちを見ながら、頭の中で侵入の許可を出してみる。


「もう一度触れてみてください」


「「あっ」」


 伸ばされた2人の指先は――、見事に結界を貫通していた。


 そのまま中へ進むように伝えると、2人は少し戸惑いながらも、結界の中まで入って来る。無事に入れたことに安堵の表情を見せていた。


(さて、この2人を受け入れたわけだが……万が一もあるし、追放できるのかも確認しておきたいな)


 ただ、何も言わずにいきなりやると、あとあとシコリを残しそうな気がする。そう考え、事前確認を取っておく。


「今から言うことは、指示ではなくお願いなんですけど」

「はい、何でしょうか……」

「信じてもらえるかわかりませんが、私には、自分の所有地にいる他人を、自由に追放する能力があります」

「え……?」


 女性の反応を無視してそのまま続ける。


「まだ一度も使ったことがないので、どうしても今、確認をしておきたいのです」

「……それは危険なことですか?」

「正直わかりません。なのでお願い、という言い方をしています。――もし嫌なら断っても構いません。その場合もお泊めしますので安心して下さい」


 女性が思案していると、今までずっと黙っていたもう1人の子が話しかけてきた。


「大丈夫です、私で試してください」

「えっ、ちょっと待って。危険かもしれないのよ」

「いいんです。私たちは助けてもらう立場ですから」


 心配して声をかけた女性にそう答えた女の子は、こちらをしっかりと見て言い切った。女性のほうも自分の置かれた立場上、それ以上何か言うことはない。ちょっと酷いことをしている気分に陥るが、背に腹は変えられないのだ。


「ありがとうございます。たぶんですが、今から一時的に、この膜の外に出されると思います」

「はい、わかりました」


 この子が了承した意図はわからないが、それを聞いて話が拗れても困る。気が変わらないうちに、さっさと追放を念じる――。


 するとどうだろう。念じた瞬間、目の前から女の子が消えたのだ。そして、転移前には自宅の門があった場所、その結界の外に立っていた。


(良かった、成功したぞ)


 無事に追放の能力は発動できたようだ。女の子にも見たところ異常はない。私はすぐに侵入の許可を念じて、中へ入ってくるように言った。



「藤堂さん、協力頂きありがとうございます。確認は終わりました。まだおふたりにお願いしたいことはありますが……、今日のところはゆっくり休んで下さい」


 彼女らと向き合ったところで、今度はしっかりと名乗りを上げる。


「それと、名乗りもせずに申し訳ない。私は日下部 啓介と言います。どうぞ家にあがってください」


 そう言われた二人は、幾分ほっとした様子でついてきた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本人同士なのに、会話の流れが不自然だなぁ。お前ら全員コミュ障かよ、って感じ。上手く会話のやり取りをさせられないなら、主人公以外の日本人は登場させない方が良かったと思う。
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