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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
43/252

第43話:教会と水車小屋


 教会は、集会所の南向かいに設置することになった。村の中心に位置するこの場所なら、住居からも近いのでみんなも利用しやすいだろう。


 教会の大きさがどの程度なのかもわからないので、まずは空き地に向かって大雑把にイメージをしてみた。すると西洋風な教会が、点滅しながら半透明の状態で現れた。高さも幅も10mほどのサイズだ。


「じゃあここに設置するから、みんなは少し下がっててくれ」


 と、教会が固定された瞬間、村を囲っていた結界の色が変化する。今までは薄い()()だったのだけれど、それが一瞬で薄い()()に変わったのだ。


「「「おおぉ……」」」 

「え、何が起きたの?」

「結界の色が……なぜ?」

「啓介さん、結界を鑑定できるようになりました! 名称が『大地神の加護』になってますよ!」


 今までは鑑定しても何の反応もなかったのだが、結界の色が変化したことで鑑定対象になったようだ。春香が言うには、名称が変わっただけで特殊な効果が付与されたわけではないらしい。――のだが、


「とても心地良くて、力が(みなぎ)るような感覚が……気のせいでしょうか」

「……そう言われると、オレもそんな気がしてきました!」

「冬也それほんとー?」


 椿たちはそんな感想を述べているし、村のみんなも同じようなことを口々に言い合っていた。もしかすると何らかのプラス効果があるのかもしれない。

 すると、誰からともなく教会に向かって祈りを捧げており、やがて全員が教会に向かってひざまずいていた。



 教会の中に入ってみると、礼拝用の長椅子や水晶製の女神像が祭られていた。内部の造形はとても簡素だが、神秘的な雰囲気を漂わしている。


 ひとり、また一人と女神像の前で祈りを捧げ、村人全員が職業とスキルを確認していく。お告げを受けて職業とスキルを授かった者は、歓喜と感謝を全身で表しながら、女神像に向かって何度も平伏していた。


 祈りの結果、今日の段階で得られた職業やスキルは以下のような状態となった。


==============

ロア Lv16

村人:忠誠84

職業:魔法使い<NEW>

スキル:土魔法Lv4

念じることでMPを消費して攻撃をする。

形状操作可能。性質変化可能。

==============


 ロアは職業欄に『魔法使い』と表示された。それと、スキルの詳細が桜と同じ感じの説明文に変化していた。

 桜曰く、村の教会で授かる職業とスキルは、転移者が持つものと同じ種類ではないか。ロアの場合は大地の女神に祈ったことで、もともと所持していたスキルが更新されたのでは、ということだった。


==============

ルドルグ Lv12

村人:忠誠85

職業:建築士<NEW>

スキル:建築Lv1<NEW>

建築物の強度と品質に上方補正がかかる

==============


 ルドルグは職業が『建築士』となり、スキルの『建築』は建築した際にプラス補正がかかるみたいだ。本人も、自分が得た能力にとても満足げな顔をしていた。


==============

ベリトア Lv6

村人:忠誠73

職業:鍛冶師<NEW>

スキル:鍛冶Lv1<NEW>

武具や道具の加工速度と品質が向上する

対象:革

==============


 ベリトアの職業は鍛冶師、革の加工と品質が向上するようだ。夏希と同様、スキルLvが上昇すれば素材の対象も増えていくと思われる。


 他にも、いつも狩りに同行していた兎人族の男性2名が『斥候』と言う職業になり、スキルに『探索Lv1』が発現していた。探索の能力は、周囲の気配を感知できるものみたいだ。


 また、村で農作業に従事していた3名は『農民』と『農耕Lv1』のスキルを、機織りを担当していた2名は『細工師』と『細工Lv1』を授かっていた。

 

 最後に、ラドたち交易班だった6名は『戦士』の職業となり、スキルに『身体強化Lv1』を授かった。集落でも狩りをしていたメンバーらしく、「これで強くなれるかも知れない」と期待に胸を膨らませていた。


===============

<新たに増えた村の職業所持者>

鍛冶師 1ベリトア

建築士 1ルドルグ

細工師 2名

斥候  2名

農民  3名

戦士  6名(ラド含む)

===============


 全ての村人に職業とスキルが与えられたわけでは無かった。しかし、与えられた者の傾向から見ても、従事する作業次第で、今後に授かる可能性は十分にあると思う。


「みんな聞いてくれ。職業やスキルを得られた者はおめでとう、より一層村の為に励んでくれ。そして今回得られなかった者も、今後に授かる可能性は高い。マメに教会に寄って確認するようにしてほしい」


 能力を授からなかった者に落胆の色はなく、自分も早く授けられるようにと、むしろやる気をだしているように見えた。




◇◇◇


異世界生活86日目

-教会設置から13日後-



 街の商会が集落へ来るのを明日に控え、ラドたち交易班は最後の荷を持って集落へ向かって行った。今日はそのまま、集落で夜を明かして待機する予定になっている。


 一方村では、農作業や布製品の加工、交易路の開拓作業をしながら順調な日々を送っていた。魔物狩りも、東の森でレベルを上げつつ、南のほうで大蜘蛛狩りをして素材集めに精を出している。


「器材や魔道具の設置は順調に進んでるかい?」


 そんな私はいま、昨日完成した鍛冶場でベリトアと話していた。


「はい! 器材の量は知れてますしね。魔道具も、ルドおじさんお手製の簡易炉に組み込んであります!」


 ドーム型の炉、その天井部分には熱処理用の魔道具が付いており、魔石を投入することで、炉内の金属を熱する構造になっている。


「今日にも仕事に取り掛かりますよ! まずは村全員分の靴を作ろうと思ってますが、村長は何か要望とかあります?」

「ベリトアの靴は丈夫で歩きやすいからな。予備も用意しといてくれると助かるよ」


 交易組や狩猟班には配ってあるが、まだ全員に行き渡っていないので人数分より少し多めに依頼しておく。


「わかりました! 靴のあとは持ってきた素材で剣や斧を作りますね」

「ああ、鍛冶のことはベリトアに全部任せるよ。――ところで、職業やスキルの効果は実感できたのかな?」

「はい、凄すぎて驚きですよー!」

「そんなにか?」

「建築作業の合間に何足か作ったんですけど、加工の早さも品質もまるで別次元です!」


 ベリトアが言うには、革の加工から縫製に至るまで、工程の全てが自分の思い通りにスイスイといくらしい。


「街の日本人がポンポンと簡単に作っちゃうのが理解できます。これなら十分張り合えそう!」

「そっか、でも今さら街に戻るなんて言わないでくれよ?」


 私が冗談交じりでそう言うと、


「いやいやそれは無いです。村の雰囲気も良いですし、良い鍛冶場もあります。何よりも芋が私を離してくれません!」

「そうだったな。ベリトアが街に戻ることになっても、芋の取引を中断すれば大丈夫そうだ」


 勘弁してほしいとベリトアが笑いながら返す。村にも馴染んできたみたいで安心した。


「それじゃあ、完成品の配布は椿を通して頼むよ」 

「はい、お任せを!」


 鍛冶場は問題なさそうなので、次はルドルグと夏希のいる川の方へ向かう。米や麦の脱穀作業を水車式にするため、今日から建築に取り掛かっているはずだ。


 現状、まだまだ人手が足りないため、稲の収穫量に脱穀作業が追いついていない。それに加えて麦の収穫量がほぼ同量増えるのだ。手作業のままでは、近いうちに限界が来るのが目に見えていた。


「よぉ長、初日から視察とはご苦労なこったな」

「水車の実物なんて見たこと無いからな、興味本位で来ただけだよ」

「街で構造は把握してきたしな。加工さえキッチリできれば問題ねぇぞ」

「そこでわたしの出番です!」

「ああ、二人に任せておけば何の心配もないさ。ルドルグの技術も格段に上がったんだろ? 良いものを期待してるよ」


 ルドルグは建築士の職業とスキルを得たことで、本人も驚くほどに腕が上がったみたいだ。それに加え、いつも作業を手伝っていた兎人の一人にも、建築の職業とスキルが発現している。これで作業効率もさらに上がるだろう。

 順調に進めば、水車の動力を利用した半自動型脱穀機4台と、麦を挽くための臼2台が10日ほどで完成するはずだ。



 村の生活もずいぶんと豊かなものになって来た。日本での生活に比べればかなり劣るが、欲をださなければ衣食住に困ることはない。なによりも、毎日を穏やかに暮らせるこの環境がとても心地良かった。


 村の風景を眺めながら、異世界での生活にもすっかり慣れてきたもんだな、と思い浸っていた。




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