表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第2部 『日本でも村長編』
243/252

第243話:大規模転移、当日

 大規模転移の当日、


 日本国民はもとより、村人たちも変わらない朝を迎えていた。彼らは何も知らないのだからそれも当然だろう。今日の午前10時、一時的とはいえ日本からすべての国民がいなくなる。


 と同時に2神の存在も完全に消滅――ダンジョンや幻想結界も消えて、魔物のいない日常が戻ってくるはずだ。


「桜、こっちのことは任せたぞ」

「はい、啓介さんもお気をつけて」


 現在の時刻は午前8時、


 日本のことは椿たちに任せ、私は異世界へと出発した――。


 

◇◇◇


 ナナシ村経由でナナシアの街に移動。領主館の広場には大勢のナナシ軍が整列していた。


 今日は演習という名目で、防壁周りの巡回をする予定となっている。ほとんどの者は大規模転移が起こることを知らない。


「村長、こっちの準備は抜かりないわ」

「ああ、すべて杏子に任せるよ」


 街の防衛については杏子が指揮を執っている。誰が攻めてくるわけでもないが、念には念をというやつだ。


 部隊が散開していくのを眺めながら、杏子と軽く言葉を交わす。


「地上には勇人夫婦と竜人族、地下には蛇人族も配備中よ。ナナシ軍もいるし、戦力としては申し分ないわね」

「まったくだな。まあ、何かあれば念話をくれ」

「ええ、そっちも気をつけて」


 街の様子を眺めたあとは、私の持ち場であるナナシ村へと戻る。


 今日の仕事は自宅を警備すること、そして日本人を送り返すことだ。冗談でもなんでもなく、自宅警備員としての仕事を全うしなければならない。

 


 と、居間へ到着したところで、ナナーシアさまが姿を現した。たぶん今日からしばらくの間は、ここで女神と缶詰め状態になるだろう。


「啓介さん、ちょっと待ってくださいね。いまモニターを繋げますから」


 そう言い放った女神は、PCのモニターに触れながらアレコレ操作をしている。かつて神界で見た異世界の俯瞰映像、あれを見られるようになるらしい。


 それから間もなく、PC画面が一瞬だけ光り輝く。と、次の瞬間には村の映像が映し出されていた。


「はい、これで啓介さんでも操作できますよ」


 さっそく触らせてもらうと――問題ない、わりと簡単に動かせる。拡大や縮小、画面切り替えも自由におこなえる。


 操作のイメージとしては、超大型サイズのタブレットに近いか。どうやら直接触る必要はなく、念じるだけでも良いみたいだ。

  

「大規模召喚が発動すれば、大陸全土を見渡せると思いますよ。あの子たちが完全消滅すれば、私の管理領域も増えますからね」


 間もなく、ナナーシアさまはこの世界の唯一神となる。2神が持つ権限もすべて移ると言っていた。


「ところで女神さま。画面に映っているコレって……何の数字ですか」


 PC画面の右下には、上下2段の数値が表示されている。今は両方ともゼロ表示のままだが……この上なく怪しい感じがする。


 以前神界で経験した『ポイント消費事件』、それを彷彿とさせていた。


「ああ、それは召喚者のカウントです」

「召喚者の……?」

「上の段が大陸全土の、下の段が画面上に映った人数です。言っておきますけど、ぼったくりカウンターではありませんよ?」

「なんと、それは凄い機能ですね……」


 神格化した女神は伊達じゃないようで、とてつもなく便利な機能が追加されていた。今回飛ばされてくる日本人、その人数がすべて把握できるらしい。


(完全に疑ってましたごめんなさい……)


 そんなやり取りをしつつも、やがて時間は刻々と過ぎていき――



 ついにその瞬間を迎えた。


「あっ、啓介さん来ましたよ!」


 女神の言葉どおり、カウンターが目まぐるしく上昇している。


 あっという間に億単位まで到達、そして次の瞬間には数値が半分にまで減少していた――。


(いまので子どもや老人が戻ったってことか。でもこれは……)


 半分になった数値は止まらなかった。千単位の桁数でどんどん減り続けている。カウンター越しだから実感がないだけで、現場では阿鼻叫喚の光景が……。こうなることはわかっていたけど、中々におぞましい選択だった。


 そんなことを考えながら、しばらくカウンターを眺めていると――。


 日本で待機していた椿が居間に駆け込んでくる。異世界間の移動ができるか、日本の状況がどうなったか、それを報告するよう事前に決めていたのだ。私の無事を確認して安堵の表情を見せる。


「椿、ナナーシアの村はどうだった?」

「村に異常はありませんし、問題なく転移もできました。それと日本の状況については――」


 午前10時きっかり、見える景色すべてが真っ白に。それと同時に幻想結界が一気に縮小、ものの数秒で消滅したらしい。なお、公園ダンジョンが消えたことも念話で確認できている。


「学生村長は?」

「はい、自宅ごと消えました。結界も残っていません」

「そうか、なら2神も消滅したのかな?」


 言いながら女神のほうを見やる。どうやら上手くいったようで、なにかを確信した様子で頷いている。


 ナナシ村付近、いわゆる大山脈跡地にいる日本人は約3万人。むろん着々と減りつづけており、ここまで辿り着けるかも微妙なところ。


 一方、大陸全土の分布状況は――


 大山脈を挟み、西と東で均等に分かれていた。もはや言うまでもないが……大陸の東側はほぼ壊滅といった感じ、生存者は激減している。


「啓介さん、西側はどうなんですか?」

「ちょっと待って、いま調べてみるから」


 西側全域が映るように画面を操作、カウンターの表示を確認する。


「えっ、まだこんなに……?」

「これはちょっとマズいんじゃないか。いくら何でも多すぎだろ……」


 大規模転移発動から30分、まだ1千万人の日本人が生き延びていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ