第220話:ライブ配信スタート!
村に戻って早々、主要メンバーを集めて今日の出来事を報告する。私の受けた印象を交えながら、ひとつずつ丁寧に説明していった。
・学生村長のスキルは、私と全然違っていたこと
・思想はさておき、わりと話せる相手だったこと
・女神の加護は持っているけど、交信自体はできないこと
・村人が増える気配はなさそうなこと
・お互い不干渉、好きなように行動すること
話している最中、様々な質問、疑問のたぐいは挙がったけれど――最終的には『放置で問題ないだろう』という結論に至った。
「日本人を奴隷にする発想は……いえ、否定はしませんけど」
「わたしも椿ちゃんに同意かなー。忠誠度、絶対上がらないよね」
椿と春香はまだ気になっているようだ。とはいえ、彼の行動自体を否定してるわけではない。あくまで村人を増やす方法論について語っているだけだ。
「まあ、私たちも似たようなもんだ。たまたま上手くいって、奴隷からもすぐ解放できたけど――」
「そうですね。獣人は良くて日本人はダメ。そんなこと言える立場にありませんよね」
「特大ブーメランになっちゃうもんねー」
あ、それとネックレスの効果についても話したよ。黙ってるわけにはいかないからね。余計なことは一切言わずに、結論だけを淡々と語っておいたんだ。
私が説明をしている最中、政樹さんを含め、ほかの男性陣も無言を貫き通していた。いまのところ怪しんでいる気配はない、と思いたい。
そんな一方、村のほうでもいろいろあったみたいだ。先ほどから、椎名さんと柚乃さんのふたりがソワソワしている。あからさまに上機嫌なご様子だった。
(なるほど、さては異世界交流に成功したな? それを室長に話したくてウズウズしてる感じか)
報告もすべて終わったことだし、今日はこれで解散にして切り上げることに――。
「政樹さん。そちらも打ち合わせがあるでしょうし、私たちはいったん席をはずしますよ」
「それはありがたいですが……この場をお借りしてもよろしいので?」
「一時的とはいえ村人ですからね。おふたりと気のすむまでどうぞ」
「あ、なるほどそういう……この様子だと長丁場になりそうです」
「はい、ごゆっくり」
打ち合わせた内容は、《《すべて》》報告書に纏めてくれるらしい。村にも提出してくれるようなので、あとからじっくり拝見しようと思っている。
◇◇◇
<集団転移発動まで残り9か月>
学生村長との面会から3日が経ち、村の開拓も少しずつだが順調に進んでいた。相変わらず、毎日たくさんの獣人が見学に訪れている。とくに何かがあるわけでもないし、結界の外にも出られないんだけどね。
検問所には自衛隊が配備され、簡易のバリケードや、仮設のユニットハウスが設置されている。万全とはいかずとも、ある程度の抑止力にはなると思う。なにせ、村に来るための道路はたった1本しかないのだ。
――と、そんな状況の中、
いよいよ今日からライブ配信を開始。
これまでの編集動画とは違って、生の映像を流すことになる。ありのままを見てもらうことで、より親近感を、そして現実感を演出できれば最高だ。
村の中心部には土魔法で作った見晴らし台を設置、村全体を映すための定点カメラを常設してある。もちろんそれとはべつに移動式カメラも用意した。
撮影班の説明によれば、この2つの視点を切り替えながら、2画面編成で配信するらしい。
「村長、最終確認だけど……ホントになんでもアリなんだよね?」
「ああ、夏希たちに任せるよ。だけど、あのことだけは秘密だぞ」
「うん、それはもちろんわかってる」
「ならあとは好きに……常識の範囲で好きにやってくれ」
「おっけー、さっそく始めちゃうよー!」
もう村の存在を隠す必要はなくなった。むしろ積極的に公開して、多くの人に興味を持ってもらいたい。
当然、居場所を突き止めた取材陣、ネット配信者なんかも来るだろう。だが、唯一の交通経路には検閲所がある。山の方から入ってきたら、不法侵入で通報すればいい。きっとそれすらも話題になるはずだ。
(っと、もう配信が始まりそうだ。私も早くいかなければ――)
チャンネルの待機所にはすでに何十万……どころじゃないな。恐ろしい数の人々が待ち構えている。コメントの流れが早すぎて読めそうにない。
(え、低速モードってなに? おっさん良くわからんのだけど……)
司会の夏希がカメラの前に立ったところで、いよいよ配信がスタート。
さすがにこれだけの大人数だ。夏希もさぞ緊張して――
「どもー、みんなのアイドル夏希だよー!」
ないようだ。いきなりトンデモない挨拶をブチかましていた。
いや、べつに否定してるわけじゃないんだ。ある程度の人気があれば、こういうノリも全然アリだと思っている。けど初配信でこれは完全にアウトだろ……。
きっと画面の向こうはドン引き状態。いまごろ誹謗中傷コメントが殺到して――――なかった。むしろ大絶賛の嵐だった。「かわいい」だの「天使」だのと、好意的なコメントばかりが目に飛び込んでくる。
「樹里、武士、こんなことってあるのか?」
「うちの看板娘、夏希嬢ですからね」
「村長、動画見てないんすか? 夏希ちゃん、いまや超有名人っすよ」
「え、そうなの? でもなんで……」
「なんでもなにも……登録者3千万越えの超人気配信者だし。この反応は当然っしょ。あ、ちなみにオレもそこそこっすよ!」
武士のことはどうでもいい。それより、ここまで有名になる理由がわからない。異世界の紹介動画、それのどこに夏希要素があるというのか。
そう考えているとすぐに答えが――。
「最近、サブチャンネルでライブ配信をしてるんです。夏希ちゃんはクラフト配信を。武士くんは……なんかよくわかんないけどサムライ配信だっけ?」
「樹里さん、SAMURAIっすよ!」
「あー、そうだったっけ。とにかくそんな感じで、人気がグングン上がっていきましたよ。オマケで武士くんも……」
「マジかよ、全然知らなかった」
と、こうして話している間にも、アイドル夏希のオープニングトークは続いていく。コメント欄もますます賑わっているようだった。
「――じゃあ、まずは我らが村長からひと言! 村長、出番だよー!」
あ、そういえば……次は私の番だった。夏希のことに気をとられてスッカリ忘れていた。渡された台本を片手に、なんとかそれっぽい挨拶をして、今後の展開を説明していく――。
この村が政府公認であること。いずれは村人を募集すること。異世界と行き来できることなんかも打ち明ける。
今はコメントが見れないけど、たぶん相当な盛り上がりを見せているはずだ。一応、樹里からもVサインをもらったし……概ね好印象なんだと思う。
「村長おつかれさまです、なかなか良かったですよ」
「手汗がヤバいわ。めちゃくちゃ緊張した」
「コメントも荒れに荒れまくってます。やっぱり、異世界に行けるってのが相当効いたみたい」
「そうか、でも内容は言わないでくれよ。メンタルがやられる……」
村の運営サイドとしては把握するべきなんだろうけど……今は無理だ。
せめて椿を呼んでからにしよう。『安らぎの加護』を貰わないと……おっさんには耐えられそうにない。
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スキル:安らぎの加護Lv-
本人と指定対象1人の精神耐性が大幅に向上
※対象が離れている場合は無効
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