表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第2部 『日本でも村長編』
200/252

第200話:神々の目論見

 神々の食事事情にも興味をひかれるが……。女神がお腹を満たしたところで、まずは肝心なことを聞いていく。



 まずは魔物発生の原因について。これは太陽と月の女神が、日本へ来たせいだと確定する。


 詳しい原因をつらつらと聞いたが、話の内容が複雑すぎてよくわからなかった。簡単に言えば、「無理やり日本へ来たことで、異世界との因果がまじりあい、魔物が発生する状態になった」ってことらしい。


(うん。自分で言っておいてアレだが、よくわからない)

 

 一方、幻想結界については、日本の神々がほどこした緊急的な措置だった。


 結界には2つの目的があり、即時的なものと長期的なものに分かれている。まずは魔物や人類を封じ込めること。そしてもうひとつは、日本人を異世界へ送ること。言わば、超大規模な転移装置というわけだ。


 なんと、すべての日本人を異世界へ送ることで、現在発生している現象をリセットできるらしい。なんだかよくわからん理屈だが……人が一時的にいなくなることで、因果の乱れが正常に戻るんだと。


 もちろん学生村長も送還されるし、与えられた加護も消える。肝心の2柱神は完全に抹消されるようだ。


「理屈はよくわかりませんが……いきなり異世界に放り込んだら、大量に死人がでますよね? 1億人以上いるんですけど……」

「ん? もちろんそうなりますけど、なにか問題が?」

「いやいや、全国民が消えたらマズく……ってそうか。向こうで死んだら戻ってこれるのか」


 どうやらそのへんも織り込み済みのようだ。死に戻りすれば、異世界の記憶も能力もない状態で日本に帰ってくる。


 運よく、いやこの場合、運悪くか。どうにか街にたどり着き、そのまま異世界で粘るヤツもいるだろうけど……それはそれ、って感じみたいだ。


 ちなみに子どもや老人は、転移してすぐ、日本へ強制帰還される仕組みらしい。さすがは神様、ご都合てんこ盛りの神対応だった。


「女神さま、二神と学生村長だけを戻すのではダメなんですか?」

「んー、それを説明するのは難しいですね……。なんというか、もはやそういう次元の問題ではないんですよ」

「……じゃあ、私たちはどうなります?」

「それは大丈夫です。《《いずれの》》神にまつわる者は対象外ですから」


(なるほど、いずれの神ときたか。やはり私たち以前にも、異世界経験者がいたんだな)


 まあ、それはともかくとして――。何も知らない日本人はもちろんのこと、異世界の住民たちにしてみれば、なんともはた迷惑な話となる。


 とはいえ、日本の神々にとっては些細なことだ。ナナーシアさまも平然と受け入れているしね。きっとこのあたりは、人智の及ばない道徳観なのだろう。なんにせよ、ナナシ村の住民にはなんの影響もないらしい。


「あ、そうだ。祖父や甥、それにあの村の人たちって……どの場所に飛ばされるか分かります? 出来れば保護したいんですけど」

「あー、彼らなら心配ないと思いますよ? 少なくとも、私の世界へ転移することはあり得ません」

「それって……爺ちゃんたちも?」

「はい。先ほど、彼らを司る神から聞いてきたので間違いありません」


(やっぱり爺ちゃん、異世界経験者だったのか。ステータスもバグってたし……神まで降臨させていたとはなぁ) 



 それとここからは余談なのだが――


 日本の神々としては、魔物がはびこる世界自体がダメなわけじゃない。今回の転移措置は、あくまでイレギュラーな状態をリセットすること。それこそが目的なのだ。


 魔物自体は世界中で、はるか昔から存在している。日本でも、邪鬼や妖怪といった魔物が徘徊していた。当然、それを倒す能力者も――。


 すでにあの頃から、現代ファンタジーは始まっていたのだ。




◇◇◇


 全国民の大規模転移、そして爺ちゃんの正体と――。


 結構エグい話もあったが、ひとまず肝心なことは知れた。神界に戻った女神をあとにして、椿とふたり、今後のことを話し合う。


 日本にいる同志を勧誘する案は継続。そのために、女神と異世界のことを日本中に知らしめる。信じるか信じないかは各自の判断に任せればいい。


 ただ、さっきの事実を公表していいものか……その判断に迷っていた。


「全国民転移とか……公表したら大騒ぎですよね」

「まあ、信じる人は少ないだろうけどね。どちらかと言えば、デマを流すイカれたヤツとして晒し上げられるかも?」

「信じたら信じたで、異世界での保護を迫られそうな気がします」

「だよなぁ。どっちにしろ公表するメリットはないわ」


 保護するにしても、大陸のどこに飛ばされるかは不明。保護できる規模は限られるし……そもそも助けようという義務感も湧いてこなかった。公表するメリットがないどころか、厄介事に首を突っ込むハメになる。


(そりゃあ人道的観点からすれば、非道な選択なのだろうけど……)


 私たちは神じゃないし、人々を救済するという使命感も持ち合わせていない。信用されずに嘘つき呼ばわりされるか。信用されても助けずに、非人道的だと非難を浴びるか。どっちに転んでも最悪の展開が透けて見える。


「この事実を知るのは、女神と俺たちだけ。神々からのお告げもなしだ」

「じゃあ、私たちさえ黙っていれば――」

「ああ、そういうことだ」


 結局、この件については一切公表せず、限られたメンバーだけで共有することに決まった。


 来たる転移の日を迎えるまで、村人になれるものだけを囲うことに。「異世界人と生活してみたい」だとか、「いずれは異世界を体験してみたい」なんていう連中を集めるつもりだ。


 異世界PRには、スマホの動画機能を使えばいい。帯電の魔道具で充電ができるし、映像データを日本へ持って来れることは既に検証済みだ。


 街での生活風景、強大な魔物との戦闘シーン、ほかにも獣人たちとの共同生活など、アピールできることはたくさんある。


 これらを動画で流しつつ、女神も配信に乗っけてしまおう。こうなったら、とことんやっちゃうのが良いと思うんだ。ついでに広告収入を得られたら最高だ。


「でも、そんなに上手くいくものでしょうか? 私、そういう知識には疎くてよくわかりません」

「俺もよく知らないけど……うちのメンバーには適任者がいるだろ?」


 配信に関しては樹里のノウハウがあるし、夏希あたりに演出を頼めば、きっといいものが出来上がる。完全に他人任せだが、()()()()という魔法の言葉を使えば万事解決する。


「途中で雲行きが怪しくなったら異世界へ逃げ帰ろう。なにも無理してこっちに住む必要はないよ」

「そうですね。それくらいの気持ちで挑むのが正解なのかもしれません」

「まあ、なるようになるさ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 言い方悪いけど、 ある意味上級神様たちが丹精込めて整えた『生贄の生け簀』から、 生きのいい生贄を月と太陽の女神が地引網で掻っ攫って、 挙げ句に異世界外来種持ち帰って投げ込んで生け簀を汚…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ