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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
184/252

第184話:女神☆降臨


異世界生活541日目-1,001,414pt

 聖理愛たちとの会談から2週間が経過



 自宅ごと異世界に転移してから1年と半年――本日ついに、女神降臨のときを迎えていた。


 かなり前に「女神が真のラスボスかも」なんて話をしたと思うが、そのための対策として信仰ポイントも完璧に調整してある。


<女神降臨:1,000,000pt>

<顕現維持:1,000pt>


 その残りを1,000pt未満にしてあるので、早くて1日、長くとも2日経てば神界へと戻されるはずだ。恩恵を受ける身としては不謹慎極まりないが……ひとつの可能性として考慮させてもらった。


 しばらく経ってから急変する、なんてパターンもあるけど、そこまで考え出したらキリがない。ひとまず女神が降臨したら、特典の交換ができるかを試す予定でいる。



 現在、自宅にいるのは私と椿のふたりだけ。とある事情により、他のメンバーは全員、外での待機を命じていた。

 

『椿、ポイントは交換したよ。そっちに変化は?』

『いえ、今のところは。あの……ほんとにこんな場所から出てくるんですか?』

『ああ、女神本人がそう言ってたんだ。初回の降臨だけは、ソコからしか出てこれないって』


 今はちょうど、居間でのポイント交換を終えたところ。冷蔵庫前で待機中の椿と念話をしている。


『そ、そうですか……』

『やっぱアレかな。誰にも見られずに出てきたいのかもしれん』

 

 ちなみに、さっき言ったとある事情とはこのことだ。井戸ならぬ冷蔵庫から這い出てくる女性――そんな登場シーンを見られたら、女神の威厳もへったくれもない。


(一度向こうへ行ってみるか。いやでも、ここにいないとポイント交換が試せないんだよな……)

 

 そんなことを考えていると椿が――


『これって、扉を開けておかないとダメなんじゃないですか?』

『あー、御開帳ってこと? よくわからんけど、ひとまず全部開けてみてくれるかな』

『わかりました。やってみまうえぇぇっ!』

『おい、どうした! 大丈夫かっ!』

『だ、大丈夫です……。えっとその……女神さま……ご降臨です……』


 何があったか気になるが、まずはポイントが交換できるかを試す。問題ないのを確認すると、急いで台所に向かった――。




◇◇◇


 リビングに到着すると、冷蔵庫の前にはナナーシアさまが立っている。その傍らには、腰を抜かして座り込んでいる椿の姿もあった――。


 彼女曰く、冷蔵庫を開けた瞬間、目の前に女神のご尊顔が……こちらをじっと見つめていたんだと。そのまま冷蔵庫からい出るところまで、一部始終を目の当たりにしたらしい。


 そんな椿だったが、すぐに落ち着きを取り戻すと私の方へ駆け寄って来た。取り繕ってるだけかもしれないが、表情もいつも通りだ。こういうところは、相変わらず肝が据わっている。



「我が名はナナーシア。啓介よ、よくぞ私を解放してくれました」

「え? 急に改まってどうしたんです?」

「……よくぞ私を解放してくれました」


(なるほど、これも決まり事なのか……)


「ナナーシアさまのお迎えが叶い、この啓介、この上ない喜びでございます。ようこそお越しくださいました」

「ええ。そなたの功績をたたえ、ここに新たな恩恵を授けましょう」

「はい、ありがたく頂戴いたします」


 何の恩恵なのかは不明だが、どうやらここまでがワンセットらしい。その後はいつもの口調にもどっていた。



「本当に嬉しいわ。啓介さん、そして椿さん。ふたりともありがとう」

「よかったですね。えっと、これで正式な女神になれたんですよね?」

「はい、ひとまずこの世界においては。最終目標は、あくまで日本に行ってからになりますけど」

「あの、その辺りの話も含めて、外にいる連中を呼んでもいいですか? できたら一緒に聞きたいんですが」

「もちろんです。どうせなら、皆さんも神界へお連れしましょう。――あ、心配いりませんよ。私、ラスボスではありませんので」


 どうやら、完全なる女神となったことで誰でも行けるようになったみたいだ。ナナーシアさまは微笑みを浮かべながらそう語っている。


 これからは、滞在に要する信仰度も消費しないらしい。あと、これは何の根拠もないんだが、女神が悪神ではないという確信もあった。


 女神のお許しもでたので、待機中のメンバーを呼びに行き、全員で神界へと移動する。いまこの場にいるのは、私のほかに椿と桜、冬也と夏希、春香と秋穂の7人。初期から生活を共にしている古株ばかりだ。


 それぞれが挨拶を済ませたところで、いよいよ本題が始まる。聞きたいことは山ほどあるが、まずは女神の話に耳を傾けることにした。



「そうですね。まずは私のことをお話ししましょう。今までの私はいわゆる半神という状態だったのですが――」


 そこから続く内容は、この世界における女神の役割、そして最終的な目的についてだった。


・この世界に住まう人(日本人含む)の信仰により、現世に降臨した時点で『現神』という存在になった。生死の概念はなく、人間でもない。日本で言う現人神あらひとがみとは少しニュアンスが違うらしい。超常現象を起こしたり、絶大な力を保有しているわけでもない。


 女神の恩恵やら次元門やら、じゅうぶんトンデモ現象だと思うが……ひとまずそれは置いておこう。


・この世界における女神の役割は、世界の維持と種の存続。ただし、直接的な干渉は許されていない。

 これについては既に知っていたこと。アレコレやらかして、思念体となった2柱神のことも記憶に新しい。


・現神になると2つの制限が解除される。ひとつは信仰対象への直接的な干渉。もうひとつは地球への移動、今回のケースだと日本へ行くこと。そしてこれが女神の目的に関係することになる。


・女神の最終目標は、地球上で神として認識されること。向こうで認知され、信仰を集めることで達成できるらしい。そうなることで、さらに上位の存在へと昇華するみたいだ。

 他にもあまたある異世界の半神は、すべてそれを到達点としている。

 

・異世界で神を降臨させ、みごと地球への帰還を果たした者は、手に入れた異能を駆使して……やがて英雄となる。天下の統一、個の武力、世を変貌させるほどの発明。内容は様々だが、その裏には現神の存在があるのだと言っていた――。


「女神さま。帰還した地球人が有名になったところで、神への信仰には関係ないんじゃ? 歴史上、神の加護によりウンタラって話もたしかにありますけど……そうじゃない英雄もたくさんいますよね?」


 たしかに、守護する神がでてくる英雄譚もあるが、正直そんなに多くは知らない。その程度の知名度でも昇華できるのだろうか。


「そうですね。上手く言語化できませんが……直接的に神の名が知れ渡らなくても構わないんです」

「それってアレですか、使徒の業績も加点対象になる的な?」

「加点対象ですか……その表現は近いですね。使徒に限らず、信仰するもの全ての成果が反映されます」


(組織ぐるみで結果を出せばいいってことか。まあ、会社名は知ってるけど代表の名前は知らないとか、普通によくあるしな)


 そんな私の言葉を皮切りに、ほかの面子も次々と質問を始める。やれ信長はどうだったとか、かの有名な発明家もそうなのか、とか――。もちろん全然関係ないのもあったが、異世界経験者だったケースも思いのほか多いことがわかった。



「あの、女神さま。先ほどから話を聞いていると、異世界への転移はみんな地球人みたいなんですが……それってなぜなんですか?」


 過去の偉人話で盛り上がってるところで、夏希がそんな質問を――。


 言われてみればたしかにそうだ。なんで地球からしか召喚されないんだろう。




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― 新着の感想 ―
[一言] もう一人の村長は地球にいるのかもしれないな。
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