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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
154/252

第154話:日本へ帰るのか?(1/2)


異世界生活372日目-43,000pt

 


 女神との対話からはや7日が過ぎ――以降も、村や開拓地の整備は順調に進んでいた。ちなみに、現在の人口なんかはこんな感じだ。


==================

1日の獲得pt(最大値):3048pt

村の人口:820人(うち日本人112人)

開拓地の人口:1,006人

警備隊:80名

ナナシ軍:70名

==================



 樹里のおかげで道路や居住区の計画は見直され、建設効率もアップしている。それもこれも、「完成時の全体像をみんなで共有している」ってのが大きい。


 普通なら、口頭で説明されたり図面を見せられても、よくわからないしイメージも沸きづらい。だが樹里の場合は違う。『模型』のスキルを使うことで、村や開拓地のジオラマを作れてしまうからだ。

 

 樹里が精密な模型を作り、染色工場の面子が着色していく。あれよあれよという間に出来上がったのは――村と開拓地の未来を一望できる、大型の立体模型だった。



「しっかし、何度見ても飽きないよなぁ。しかもこんなばかデカいの……樹里はほんとに天才だわ」

「あー、やっと樹里って呼んでくれましたね。わたし、ずっと気にしてたんですよ! ジュリアとか先生とか、もう恥ずかしくて恥ずかしくて」

「先生はアレかもだけど……ジュリアは別にいいだろ?」

「向こうでは顔出ししてなかったもん。実際、顔を見られながら言われると……ね?」

「まあそうなのかもな、知らんけど」


 今は樹里とふたりで、ジオラマ展示のために作った専用の建物にいる。天井とそれを支える柱はあるけど、床は土のまま。周囲は吹き抜けで目隠し板もない。例えていうなら、屋外でやってる相撲会場みたいな感じか? これで伝わるかはわからんけど……。


「呼び方はさておいて――もっと大きなのだって作れますよ? いまのところ、わたしの身長までのサイズならいけます!」

「いや、さすがにそんなスケールで作られても置き場所がな……。これでも十分すぎるよ」

「えー、村の模型はこれでもいいけど、せめて街のヤツは作り直したいなぁ。領主館が完成したら、ど真ん中にドドンっと置かせてほしいなぁ」


 そんなことを言いながら、上目遣いでチラチラとこちらを見てくる。

 あざといのは百も承知。それでもホイホイつられちゃうのが……おっさんという悲しき生き物なんだ。わかってくれる同志もさぞ多いことだろう。



 だが、樹里の企みは失敗したようだ。私が「いいねそれ、飾っちゃうか!」なんてはしゃいだところで、背後から無慈悲な声がかかる。


「啓介さん、そんな大きいものは却下です。樹里さんもですよ。当初の計画通りにお願いしますね」


「「あ、はい……」」


 椿の一喝により、我々の計画は一瞬で水の泡と化した。


「まぁ……もう少し小さめのでしたら大丈夫でしょうけど。領主館が完成してから、改めて決めましょう。それより啓介さん、そろそろ出発の時間ですよ?」

「あ、もうそんな時間か。ほかのみんなは現地へ行ってるの?」

「はい、あとは私と啓介さんだけですよ。待たせては悪いですし、早く行きましょう」


 どうやら、私を呼びに来てくれたらしい。


(それにしては、あまりにも良いタイミングだったが……。いや、まあそういうことなんだろうな)




◇◇◇


 樹里と別れを告げ、椿と一緒に転移陣を使って遺跡ダンジョンへと移動する。すぐに視界が晴れると、目の前には馴染の面子が勢ぞろいしていた。


「おっ、やっと主役のご登場かよ」

「遅刻だよ村長ー、どうせまたアレを見てたんでしょ」

「すまんすまん。待たせて悪かったよ」


 ついて早々、冬也と夏希から突っ込みが入る。ここにいるのはふたりのほかに、桜と椿、春香と秋穂、そして杏子と勇人。全員が忠誠99の、名実ともに信用のおける日本人メンバーたちだ。


「主役は遅れて登場するといいますしね。啓介さん、僕はそれほど待ってませんよ。いま来たところです」

「勇人……あなた一番に来てたでしょ」

「そういうセリフをサラッと言えちゃうところも、勇者たる資質ってヤツかもねー」

「杏子さんも春香さんも……なかなか手厳しいね。まあ男同士なんだし、いいじゃないですか。って、そんなことより啓介さん、今日の話ってのを教えて下さいよ」

「ああ、じゃあさっそく本題にはいろうか。今日みんなに集まってもらったのはな、日本への帰還が確定した件についてだ」



 ここ1週間、みんなにどう説明するかずっと考えていた。もちろん、驚かせてやろうって気持ちもあったが……全員の都合が合わず、今日まで間延びしてたってのが一番の理由である。

 ちなみにこの場所を選んだのは、ほかの村人に聞かせないため。とくに兎人は聴力強化もあるし、そのつもりはなくても、聞こえてしまうこともあるだろうしね。


 立花や葉月、それに他の日本人メンバーも呼んでない。最後の最後まで迷ったが、事がことだけにやめておいた。その結果、信頼が落ちても仕方がないと割り切ることにしたよ。


「女神さまとの話は以前にしたと思うが……ここから言うことは秘密にしてくれ。勇人には悪いけど、立花と葉月にも内緒だ。忠誠が99になったら話すと伝えてほしい」

「はい、大丈夫です。ある程度は察してると思うし、時が来れば解決しますから」

「そうか、じゃあまずは――」


 それからは淡々と、次元門(冷蔵庫)のことや地球への往復ができること、帰還の条件についてを詳しく説明していく。

 約束通り、女神の目的については一切話してない。話せてしまえるのかを試すこともやめておいた。



「――私から話せることは以上だ。なにか質問とか要望があれば何でも言ってみてくれ。まあ、答えられるかはわからんけど、次に会ったときの参考にもしたいから遠慮なく頼むよ」



 私がそう言うと、真っ先に手を上げたのは冬也だった。


「まずは村長の意思を先に聞きたい。女神を降臨させることは決定事項なのか? それと……日本へ帰るつもりでいるのか?」

「ああ、女神さまについては確定事項だ。降臨すると、色々制限が解除されるからな。話せることも増えると言っていた」

「なるほど……じゃあ万が一だけど、女神がラスボス、なんて可能性はないのか? あ、別に疑ってるわけじゃないぞ。あくまで可能性の話な」


 冬也の意見はよくわかる。善人ぶってた女神が実は……みたいなことは、もちろん私も考えた。結局、確実に安全だと思える根拠はなかったが……対処は一応考えてある。


「可能性はゼロじゃないよな。だからもしそうなったら、信仰度を集めないようにするつもりだ。所持してるptは全て特典に交換、教会へも行かないし、しばらく魔物狩りもしない」

「あー、顕現を維持するのに1日1,000pt消費するからか。んで、いったん神界へ戻しちゃうわけだな」

「そうだ。まあでも、顕現した時点で手遅れになるんだったらお手上げだけどな」

「それはどうしようもないよな。――んじゃ、日本への帰還は?」 


 こっちの問題は結構悩みどころだ。女神の目的にも関連してくるし……さて、どう説明したらいいだろう。



「実は、俺にしか知りえない情報もあってな。話すことは禁じられてるから言えないが……いずれは戻るつもりでいる。ただ、向こうに永住というわけじゃない。日本と異世界を行ったり来たりしようと思ってる」


 これでうまく伝わったかは不明だが、いかんせん、こう表現するしかない。


「おっ、ついに主人公感でてきたじゃん。世界の命運は俺が握ってる的なヤツ? やっぱ村長に拾ってもらって良かったわ、これ割とマジで」

「んー、どうだろうな。否定はしないが……まあ俺はそんな感じだ。あくまで今のところは、だけどな」


 冬也とのやりとりが途切れたところで、ふと周りを見てみると――


 桜と夏希は、かなりのしたり顔でうんうんと頷いている。なにやら良からぬ妄想を膨らませているようだ。

 ほとんどのヤツは真剣な顔つきで聞いているが、日本に帰れるのが確定したからか、内心ほっとしているようにも感じていた。



「じゃあ次は私からもいいですか?」


 私の意思を伝えたところで、今度は桜が手を上げる。


(彼女は俺なんかよりずっと聡いからな。今後の展開も含めていい案をだしてくれそうだ)





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