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異世界村長【書籍発売中】  作者: 七城
第1部 『異世界村長編』
123/252

第123話:大規模開拓作戦、始動!

異世界生活292日目-信仰度:2622pt



 先日の全体集会から4日、いよいよ新規開拓の着手となった。


 この3日間は、開拓予定地に『転移の魔法陣』を設置するため、東の森ダンジョンでポイント稼ぎをおこなっていた。


 これから毎日、村と開拓地を往復することになる。移動の手間や時間のロスを考えれば、最優先でやるべき案件だったからだ。


 一方私もその間、森の端まで行って結界を張りめぐらせていた。


 これでもう村へ来るには、両サイドを結界に挟まれた交易路を通ってくるしかない状態だ。大軍がいつ攻めてこようとも、何も恐れる必要はない。と、言うのは少々言い過ぎかもだが……。


 東西30km、南北20kmの広大な大山脈跡地を全て占領した。


「国はいらん。村でいいのだ」なんて言ってたくせに、気分はとても高揚していた。


 

◇◇◇


 新規開拓の第一弾は、仮拠点を作ることから始動する。


 転移の魔法陣と万能貯蔵庫が置けるスペース。それと、伐採した木材を堆積しておく場所の確保だ。


「ではでは一気にやっちゃいますよ! みんな絶対に動かないでね。フリじゃないですから! 本当に死にますからねっ!」


 桜はそう宣言すると――


 轟音とともに、水魔法のウォータージェットをブチかます。


 超高圧で放たれた水のレーザーは、いとも簡単に周囲の木々を貫いていく。この世界にきてすぐの頃に比べると、まったく別次元の威力だ。数瞬遅れて、「ズンッ」とか「ドンッ」と鈍い音がして地面が揺れる。


「よしオッケーです。村長お願いします」


 桜の指示に合わせ、結界を拡げて固定する。そしてすぐさま解除をすると――周囲には、見渡す限りの切り株畑が広がっていた。


「たったの一撃でこれかよ……もう桜からは逃げきれんな。全員、輪切りにされそうで怖いわ」

「一回戦で30m四方って感じですかね。実際には扇状ですけど」

「輪切りについては否定しないんだな」

「まあ、出来ちゃうでしょうね。もっと高威力にもできますし」

「ラドもすまんな。元とはいえ集落を潰してしまって」


 ここには当然、ラドたちが住んでいた集落もある。今の一撃で粉々に吹き飛んでいたが……。


「何を今さら――我らはナナシ村の住人だ。もうなんの未練もない」

「そっか、そうだな。よし、この調子でどんどん広げていくぞ!」


 今日ここにいるのは、私と桜、ロアと杏子を主軸に、ダンジョン班の面々だ。例外として、勇人たち三人だけは、レベル上げを優先させてる。



 そのあとも作業を続けていったが、すこぶる順調だった。桜と私で木を除去していき、あとを追うようにラドたちが切り株を取り除いていく。


 もう切り株周りの土を掘ったり、土魔法で柔らかくする必要はない。圧倒的な腕力で強引に引き抜くだけだ。今も「ブチブチッ」「メリメリッ」と豪快な音が鳴り響いている。切り株を取り除いたあとは、ロアと杏子の土魔法で整地をしていった。


 結局、夕方にせまる頃には、300m四方の広大な更地が出来上がっていた。たった一日足らずで、ナナシ村とほぼ同じ面積を開拓したことになる。転移初期の頃では、とても考えられない成果だった。 



「おいみんなー。そろそろ日も暮れるし、今日はこれで引き上げるぞ」

「おつかれさまー、結構はかどったねっ」

「春香もすごかったぞ。やっぱ身体強化があると違う?」

「もう全っ然ちがうよ、習得能力様さまだよー!」

「そかそか。念願以上の能力が生えて良かったよな」

「うん、めっちゃうれしい!」


 最近春香が覚えた『習得』という能力。上級鑑定がレベル4になって覚えたやつだ。


『鑑定したスキルの一部を自身が習得する』ってもので、鑑定対象さえ目視できれば、いつでも入替え可能だ。しかも、習得したスキルのレベルは自力で上げられるという優れモノ。私の『模倣』能力といい勝負かもしれない。


 唯一の難点といえば、ユニークスキルを習得できないことか。まあこれが出来ちゃったら反則だろう。



 開拓地の中心部に結界を張って、『転移の魔法陣』と『万能貯蔵庫』を設置する。さらに、物資転送の設定をすれば今日の作業は完遂だ。


 今回、森の端に張った結界や、交易路の両端に張った結界で、結構な面積の敷地拡張をした。それでもまだ、600m四方の拡張分を残している。これだけあれば、当面の心配はしなくていいはず。信仰ポイントを他に回せるのもありがたい。



◇◇◇


異世界生活293日目-信仰度:333pt


 開拓2日目の今日は、昨日のメンバーに加えて、ルドルグたち建築班も参加している。建築士5名を含む7人の職人たちだ。


 一方村では、夏希や細工師の女性たちにより、建材の加工が進められている。いまも続々と資材が送られているところだった。



「なあ長、本当にいいのか? こんなど真ん中に建てちまって。ここが街の中心になるんだろ?」

「ああ、問題ない。ここが発展してきたら、長屋を壊して街の主要施設を建設する予定だ。まあ、だいぶ先の話だけどな」

「なるほどなぁ。んじゃ、街の区画と道路だけはしっかり指示してくれ。資材の運搬もある、動線は確保せんといかん」

「わかった。ひとまず、好きなようにどんどんやってくれ。出来るだけ多くの人が寝泊まりできる構造で頼むよ」

「うむ。そこは儂らに任せとけっ、よぉしおめぇら、気合いれろよっ!」


「「「おうっ!」」」


 

 やる気満々のルドルグには、長屋をメインとして、屋根付きの食堂とトイレの建築をお願いする。あとは彼らにお任せだ。あくまで、難民が自立するまでの仮住まいだし、最悪、倒壊しなければいいのだ。


(これで難民がでなかったら……いやダメだ、考えるな。今はひたすら突き進もう)


 帝国と獣人国の騒動を聞いてから20日ほど経つ。が、いまだに何の追加情報もなかった。ちょっと先走りすぎたかもと不安になる。


(まあ、なるようになるだろう)


 気を取り直し、今日も開拓に精を出していった。




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