第10話:どこでするかが問題だ
庭に出て二人に話しかける。
「とりあえず、家を中心に広げるイメージでやってみるよ」
広さが分かりやすいように、正方形をイメージをする。すると、グググッという感じで、結界が点滅しながら拡がっていった。
「おおお」
「わぁ、これは!」
「森の木が……消えた?」
一気に拡がった土地と共に、その範囲にある木々が全て消失していた。
「悪いけど歩測してみてくれないかな、一応周囲には気を付けてね」
二人にお願いして測ってもらったら、概ね40m×40mの正方形だとわかった。高さは以前と同じ10mのままだ。
ちなみに、元に戻すようなイメージをすることで結界が元に戻り、消えていた木も元どおりになっていた。
「これはまさにファンタジーだな」
「いきなりゲーム感が出てきましたね」
「こんなことが現実に起こるんですね」
しばらく三人で驚いていたが、なんとか思考を戻す。
「元の敷地が半径10mの円だから――面積は314m2か、それを拡大すると1600m2になるのか」
「歩測とはいえ、随分と中途半端ですね」
「だいたい5倍ちょっとか、いまいち基準がわからん」
ああだこうだと考えていると、佐々宮さんが何か思いついたようだ。
「多分ですけど、単純に20mだった距離が倍の40mになったんじゃないでしょうか」
(ふむふむ……全然わからん)
「前の敷地を20mの正方形と仮定すると、今回は倍の40mの正方形になった。と言うことじゃないかと」
「なるほど、ちょっと円形でも試して見るか」
今度は円をイメージして拡張してみたが、直径は正方形と同じ40mだった。
「単純に縦横の長さが基準みたいだ」
「佐々宮さんグッジョブです!」
そう言われて、佐々宮さんは少し照れていた。
「じゃあ、断然四角のがお得だな」
1辺の長さが基準になるなら、少しでも敷地が広い方がいいだろう。
「そうですね。敷地も有効に使えそうです」
そのほかにも、いろいろと試して判明したことがあった。
・拡げる敷地の最小幅は10mで、これより狭くすることはできない。
・敷地を途中で、直角方向に曲げることは可能だが、ぐねぐねと曲げたり、あまり複雑な形状にはできない。
・敷地の幅や形状に関係なく、結界の高さは10mで固定されている。
「正方形で決まりですか?」
と、ひとしきり検証を終えたところで、二人がどうするのかを聞いてきた。最初は同じことを思ったんだが、そのまえに試してみたいことが1つある。
「いや、結界の幅をなるべく狭くしてさ。近くの川まで繋げられないか試してみるよ」
「水源確保ですか? 私の魔法でも対応できそうですけどね」
「もちろん、飲み水は魔法を頼りたいんだけどさ。川の近くに敷地を拡げたほうが、将来的な農業とかに便利かなって」
「まあ、確かに」「そうですね」
敷地が川まで届けばの前提ではあるが、将来を見越すとその方がいい気がする。活動範囲も少し広がるし、それよりなにより――
「それとは別に、最も重要な理由もある」
「「なんですか?」」
「トイレどこでするの問題」
「「ああぁ……」」
昨日や今日の朝、家のトイレは流れないので、仕方なく庭の物置裏で隠れて致していた。
穴を掘って埋めてはいたが、衛生面もあるし人の目もある。なんとか川に繋げて、少しでも綺麗に、気兼ねなくしたいものだ。




